2020年9月19日土曜日

19- 伊方原発 乾式貯蔵施設 永久保管の恐れ

  各原発では使用済み核燃料プールが満杯に近づいているため、プール内により密集して浸漬(リラッキンブ)するか、核燃料を放射線を遮る金属容器「キャスク」に入れ空気の循環で冷やす乾式貯蔵施設を新設して、急場をしのごうとしています。しかしどちらも仮置きの処置であって、いずれ他のしかるべき場所に貯蔵する必要があるのですがどこになるのか見通しは何もありません。

 そもそも先行きの検討をしないまま原発を始めたのですから、そのツケはいつまでも残るわけで、核燃料の最終処分はいつまでたっても解決しません。

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社説 伊方乾式貯蔵施設 永久保管の恐れ県と町は熟議を

愛媛新聞 2020年9月18日

 四国電力伊方原発の使用済み核燃料を保管するための乾式貯蔵施設について、国の原子力規制委員会は、新設計画を正式に認めた。四電は2024年度の運用開始を目指している。 従来保管していたプールが満杯に近づいているため、新たな施設の必要に迫られた。国や四電は、保管を「一時的」とするが、国の核燃料サイクル政策の行き詰まりで搬出のめどは立っていない。資源だったはずの使用済み核燃料が「核のごみ」となり、伊方に永久に留め置かれないか、強い危惧を覚える。

 乾式貯蔵施設は、使用済み核燃料を、放射線を遮る金属容器「キャスク」に入れ、空気の循環で冷やす仕組み。計画では、最大45基のキャスクに燃料約1200体を保管できる。 電気で水を循環させるプールと比べ、電源を失っても冷却を続けられるため、安全性が高いとされる。ただ、規制委が6月に示した審査書案に対する意見公募では、施設の耐震性をはじめ、四電の安全管理体制への不安や疑問の意見が多く挙がっていた。四電は、安全性を不断に追求し、説明を尽くす責任を自覚しておく必要がある。

 キャスクの設計貯蔵期間は60年となっている。この期間内に搬出できるかどうかが最大の懸案だが、規制委の審査では対象外のため、納得のいく答えは得られていない。青森県にある日本原燃の使用済み核燃料再処理工場は、規制委の審査に「合格」し、21年度上半期の完成を目指している。しかし、稼働したとしても、取り出したプルトニウムとウランの混合酸化物(MOX)燃料を使う先は限られている。

 活用の主力とされた福井県の高速増殖炉原型炉「もんじゅ」は廃炉となり、燃料の一部でMOX燃料を使うプルサーマル発電を実施する原発も、伊方原発など数基にとどまる。利用の見込みがないのに再処理を続けてプルトニウムを増やせば、核不拡散の観点で、国際社会から疑いの目を向けられる。「核のごみ」の最終処分場に関しても、現状では再処理の過程で出た廃液などを固めた高レベル放射性廃棄物を対象としているが、必要以上に再処理ができないことで、使用済み核燃料自体が「核のごみ」となる可能性も高い。そうなれば、処分場の規模などを変更する必要が生まれ、建設地の選定はますます遅れよう。

 東京電力福島第1原発事故の前から「その場しのぎ」を繰り返してきた政策のツケは限界に達している。国は、核燃料サイクルを含めたエネルギー政策の抜本的な見直しに、早急にかじを切るべきだ。今後、乾式貯蔵施設の運用の可否を判断する県と伊方町は、施設の安全性にとどまらず、こうした国策が抱える問題にも踏み込んでもらいたい。長期的な展望に立って議論を深め、将来世代への責任を果たさなければならない。