福島原発事故の被災者が国と東電に慰謝料や居住地の放射線量低減を求めた生業(なりわい)訴訟の控訴審判決は30日、仙台高裁で言い渡されます。全国で約三十ある同種訴訟のうち、国の責任を高裁が判断するのは初めてで、原告団約3830人は同種訴訟で最大です。
控訴審の主な争点は(1)国と東電は第一原発に襲来する大津波を予見できたか (2)建屋の水密化などで事故を防げたか (3)国の中間指針に基づく賠償が妥当か-などです。
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生業訴訟、津波予見など争点 30日、初の高裁判決
福島民報 2020/09/29
東京電力福島第一原発事故の被災者約三千八百三十人が国と東電に慰謝料や居住地の放射線量低減を求めた生業(なりわい)訴訟の控訴審判決は三十日、仙台高裁で言い渡される。全国で約三十ある同種訴訟のうち、国の責任を高裁が判断するのは初めて。国の責任を巡る各地裁の判決が分かれる中、高裁の示す結論に注目が集まる。
控訴審の主な争点は【表】の通り。(1)国と東電は第一原発に襲来する大津波を予見できたか (2)建屋の水密化などで事故を防げたか (3)国の中間指針に基づく賠償が妥当か-などが争われている。原告は一人当たり月額五万円の慰謝料を求めており、事故が起きた二〇一一(平成二十三)年三月から控訴審が結審した今年二月までの総額は約二百十五億円に上る。原告団約三千八百三十人は同種訴訟で最も多い。
同種訴訟のうち、国を被告に含めた十三件で地裁判決が出ており、国に賠償を命じたのは七件と判断が分かれた。残りの六件は大津波は予見できたとしつつ、対策工事をしても事故は防げなかったなどとして国の責任を認めていない。
二〇一七年十月の一審福島地裁判決は、二〇〇二年七月に公表された政府の地震予測「長期評価」に基づけば、国と東電は大津波を予見できたと判断。対策工事で事故は防げたとし、原告約二千九百人に対して総額約五億円を支払うよう両者に命じた。ふるさと喪失慰謝料や原状回復は認めなかった。
控訴審で住民側は賠償の増額や原状回復を改めて請求。国は「地震は予見できず、事故も防げなかった」、東電は「国の指針に従い十分に賠償した」と反論した。
■被害実情しっかり見て 原告団長 中島孝さん(相馬)
原告団長の中島孝さん(64)=相馬市=は三十日に迫った控訴審判決を前に、「被害の実情をしっかりと見てほしい」と訴えた。
一審も含めるとこれまで四度、意見陳述で法廷に立った。今年二月に仙台高裁で迎えた最終意見陳述で裁判官に問い掛けた。「明るい見通しを持って生活を営むことは私たちの喜びです。原発事故でそれが長期にわたり断ち切られた時、人はどう生きることができるでしょうか」
相馬市でスーパーを営み、地場の魚介や野菜を扱っているが「震災前ほどの活気はないね」とうなだれる。避難の有無にかかわらず、多くの人が被害を受けたと思っている。国が過失を認めず、東電も中間指針に沿った定型的な賠償に終始していることに憤りを感じる。
原発事故から十年目に出される判決。「この判決が原発政策と中間指針を問い直す一つのステップになるはず」。そう信じて判決を待つ。
生業訴訟...二審も責任認定なるか 30日・仙台高裁で注目の判決
福島民友 2020年09月29日
東京電力福島第1原発事故当時、県内や近隣県に住んでいた約3650人が国と東電に計約210億円の損害賠償などを求めた集団訴訟(生業(なりわい)訴訟)の控訴審判決は30日午後2時から、仙台高裁で言い渡される。一審福島地裁で認められた国と東電の責任や国の賠償基準の中間指針を超えた慰謝料は、再び認められるのか。全国で約30ある同様の訴訟で、国と東電を被告とした1例目の高裁判断に注目が集まる。同様の集団訴訟で原告数は最大規模。
最大の争点は、国と東電が第1原発の敷地高を超す津波を予測し、対策を取れたかどうか。
国の責任を巡っては、地裁での判断は分かれている。国の責任を問うた訴訟の13件中、国の責任を認めたのは7件、認めなかったのは6件。東電のみを被告とした高裁判決では、仙台と東京の2高裁で判決が出ており、いずれも東電に賠償の上積みを認めた。
2017(平成29)年10月の一審福島地裁判決は、「国は02年の政府見解を基に大津波を予測でき、東電に津波対策を取らせる規制権限を行使すべきだった。東電も対策を怠った過失がある」と判断した。
賠償については、当時の居住地の放射線量に応じて原告のうち約2900人に1万~20万円の計5億円を支払うよう、国と東電に命じた。事故当時の居住地の放射線量を判断の根拠としたため、避難の有無や第1原発からの距離に関係なく賠償を認定した。
一方、会津地方は事故後も線量が低かったとして対象から除外した。避難区域の原告40人が求めた1人当たり2千万円の「ふるさと喪失」慰謝料は棄却、放射線量を事故前の水準に戻す原状回復の訴えは却下した。
一審判決を受けて、原告側と国、東電側の双方が控訴した。控訴審では、原告は賠償の増額や原状回復を改めて求めた。国は規制権限不行使の違法性を否定。東電は国の指針に従い十分に賠償したと反論している。