2020年9月20日日曜日

原発事故伝承館が開館 「失敗の発信」不足の指摘も

 福島県の「東日本大震災・原子力災害伝承館」が20日、双葉町にオープンします。県収集の関連資料約24万点のうち、約150展示されます。ただ展示内容は復興をアピールする色が強く、県は自分たちの責任を『自分ごと』として伝えていない。できなかったことや失敗を発信することこそが、教訓を伝えるということだ」との批判があります。

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震災・原発事故伝承館が20日開館 福島に記憶継承拠点 「失敗の発信」不足指摘も

毎日新聞 2020年9月19日

 東日本大震災と東京電力福島第1原発事故による被害や教訓を伝える福島県の「東日本大震災・原子力災害伝承館」が20日、第1原発が立地する双葉町にオープンする。県収集の関連資料約24万点のうち、約150点を展示。津波の脅威や事故直後の緊迫感をありありと伝えるが、専門家は施設の意義を評価する一方で「教訓を十分に伝えられる内容になっていない」と指摘している。

 同館は2019年、第1原発の北約3キロ、双葉町北部の沿岸部の津波被災地に着工。総事業費約53億円は国が全額負担する。3階建て延べ床面積約5300平方メートルで、運営主体は県の外郭団体。県レベルの東日本大震災伝承施設は、岩手県が昨年9月、陸前高田市に開館させている。

 屋上からは、除染廃棄物を保管する中間貯蔵施設や、津波被害の遺構として残る小学校などを見渡せる。周辺地域は今年3月、原発事故に伴う避難指示が解除され、国や県が復興祈念公園などを整備中だ。館内では、原発と共にあった事故前の住民の暮らしから、震災直後の混乱、避難長期化、復興の歩みなどを6ゾーンに分けて伝える。住民避難の経過が走り書きされた原子力災害対策センター(大熊町、既に解体)のホワイトボードや、第1原発が水素爆発したとの一報が入った際の東電社内のテレビ会議映像なども展示されている。また、避難を余儀なくされた住民ら語り部29人が日替わりで体験を伝える

 当時、放射性物質の拡散方向を予測した「緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム」(SPEEDI)に関するパネルも展示されている。県は国からシステムのデータを受け取りながら市町村に伝えず、住民を放射線量の高い方向に避難させてしまった自治体から批判を浴びた。しかし、パネルの説明文はその経緯には触れず「(SPEEDIの)取り扱いを明確に定めたものはなく、その結果を共有することができませんでした」との記述にとどめている。

 震災や原発事故の伝承施設について調査している福島大大学院の後藤忍准教授(環境計画)は「記憶継承のための拠点ができた意義は大きく、重要な資料も展示されている。ただ、展示内容は復興をアピールする色が強く、県は自分たちの責任を『自分ごと』として伝えられていない。できなかったことや失敗を発信することこそが、教訓を伝えるということだ」と話している。

 開館時間は午前9時〜午後5時。火曜休館(祝日の場合は開館)。大人600円、小中高生300円。最寄りのJR双葉駅から約2キロ。駅からシェアサイクルやカーシェアも利用できる。新型コロナウイルス感染防止のため館内ではマスクを着用し、体温測定で37・5度以上の場合は入館できない。問い合わせは同館(0240・23・4402)。【高橋隆輔】