2020年9月30日水曜日

福島沖の本格操業 来年4月再開を目指す

 福島沖の本格操業は来年4月 県漁連、地域や漁業種検討へ

                     河北新報 2020年09月30日
 福島県漁連は29日、いわき市で組合長会議を開き、東京電力福島第1原発事故で自粛を余儀なくされている沿岸漁業の本格操業について、2021年4月の再開を目指すことを決めた。制約の多い試験操業の開始から今月で8年3カ月。県の水産業は本格復興に向け大きな節目を迎える。
 組合長会議で県漁連の野崎哲会長は「本来の、自由だった操業体制に戻したい。これから7カ月間かけて議論を進める」と述べた。
 今後、地域や漁業種ごとに具体的な検討に入り、販路や検査体制といった課題の解消を図る。10月に開く県地域漁業復興協議会で関係機関や専門家らの意見を聴き、来年3月までに大枠を取りまとめる。
 野崎会長は取材に「消費者の理解を得られる態勢を構築したい」と説明。一律ではなく、漁業種ごとに本格操業への切り替えを図る考えも明らかにした。

 原発事故で県沿岸の漁業は全面的に自粛。操業日数や海域を限定して出荷先の評価を探る試験操業は12年6月、ミズダコなど3魚種で始まった。最大44魚種が対象となった出荷制限は20年2月、ようやく全て解除された。
 県水産海洋研究センターの調査では15年4月以降、放射性セシウム濃度が国の基準値(1キログラム当たり100ベクレル)を超えた検体は一つもない。
 試験操業を実施する相馬双葉、いわき市、小名浜機船底曳網(そこびきあみ)の3漁協の19年の水揚げ実績は3584トンと、原発事故前の約14%にとどまった。漁業者からは本格操業による漁獲量拡大を望む声が強まっている。
 一方、第1原発で増え続ける放射性物質トリチウムを含む処理水の取り扱いは政府の最終検討が進む。処分方法によっては風評被害が再燃しかねず、漁業者の懸念材料となっている。