九州電力が玄海原発3号機で計画している使用済み核燃料の貯蔵容量を増やす「リラッキング」方式を、佐賀県と玄海町は1日、事前了解しました。
リラッキングは貯蔵プール内の使用済み核燃料の間隔を詰めて容量を増やす工事で、完了すれば現状の1050体から1672体になり、この処置だけで今後10年程度は運転が可能になるということです。
九電は12月から現地工事を予定し、2024年度の完了を目指します。
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<玄海原発>「リラッキング」、佐賀県と玄海町が了解
佐賀新聞 2020年9月2日
九州電力が玄海原発3号機(東松浦郡玄海町)で計画している使用済み核燃料の貯蔵容量を増やす「リラッキング」に関し、佐賀県と玄海町は1日、事前了解した。九電は12月から現地工事を予定し、2024年度の完了を目指す。
リラッキングは貯蔵プール内の使用済み核燃料の間隔を詰めて、容量を増やす工事。完了すれば、現状の1050体から1672体になる。
県庁では、小林万里子副知事が九電の豊嶋直幸取締役常務執行役員に回答書を手渡した。小林副知事は、専門家でつくる県の専門部会の意見も踏まえて、国の審査結果に技術的な問題がないことなどを事前了解の理由に挙げた。その上で「使用済み核燃料が玄海原発に永久に保管されるのではないかという不安の声もあるので、積極的な情報公開と分かりやすい県民への説明をしてほしい」と要請した。
貯蔵量の増加によりプールの水温が上昇して建屋内の作業環境に影響を及ぼす可能性も指摘し、環境変化の詳細な評価や改善策の検討を求めた。豊嶋氏は「(使用済み核燃料は)基本方針に沿って、できるだけ早く搬出したいと考えている」と述べた。
玄海町の脇山伸太郎町長は「放射線の監視と管理の徹底や使用済み核燃料の対策を計画的に実行し、住民の安心安全を最優先に取り組んでほしい」と要望した。隣接する唐津市は「使用済み核燃料の問題は市民も注視している。慎重に扱ってほしい」と求めた。
昨年、リラッキングに反対する要望書を唐津市に提出した玄海原発対策住民会議の成冨忠良会長(78)は「使用済み核燃料から出る『核のごみ』の最終処分場は、まだ場所も決まっていない。容量を増やすのはおかしい」と批判した。
九電は19年1月、安全協定に基づいて県と玄海町に事前了解願を提出していた。原子力規制委員会は昨年11月に原子炉設置変更を許可し、今年3月には工事計画を認可した。一方、使用済み核燃料対策でリラッキングと併用する乾式貯蔵施設は、審査が続いている。(山本礼史、中村健人)
<玄海原発>今後10年の運転可能に リラッキングで
佐賀新聞 2020年9月2日
九州電力が2024年までに工事完了を予定している玄海原発3号機の使用済み核燃料プールの間隔を詰めて容量を増やす「リラッキング」。東京電力福島第1原発事故があり、国への申請から約10年半が経過した。使用済み核燃料が搬出できず、九電は乾式貯蔵施設と併用する対策を進めているが、リラッキングだけでも今後10年程度は運転が可能になる。
九電が3号機のリラッキングを国に申請したのは2010年2月。許可の直前だったとされる11年3月、福島第1原発事故が発生し、審査が止まった経緯がある。19年1月に容量を変更する補正書を原子力規制委員会に提出していた。
3号機のリラッキングでは、使用済み核燃料を収納する容器(ラックセル)の中心の間隔を36センチから28センチに詰める。素材も中性子を吸収するホウ素を添加したステンレス鋼に変更する。
4号機は建設当初から間隔を詰めている。東北電力女川原発2、3号機(宮城県)や関西電力大飯原発3、4号機(福井県)など、全国の多くの原発が同じような措置を取っている。
リラッキングで、3号機の貯蔵プールは核燃料の貯蔵容量が約1・6倍に増える。九電によると、工事をせず稼働を続けた場合、4~5年で満杯になる計算だったが、計画通りに容量を増やした場合は、さらに5~6年延びるとしている。(中村健人、山本礼史)