2020年9月30日水曜日

30- <ふくしまの10年・イチエフあの時 事故発生当初編>(1~3)(東京新聞)

 東京新聞が、<ふくしまの10年・イチエフあの時 事故発生当初編>のシリーズを始めました。記述がどの範囲にわたるのか興味が持たれます。
 1回~3回分を紹介します。
           ~~~~~~~~~~~~~~~~~~
<ふくしまの10年・イチエフあの時 事故発生当初編>(1)
 巨大津波襲来
                      東京新聞 2020年9月22日
 二〇一一年三月十一日、東日本大震災の巨大な揺れで、運転中だった東京電力福島第一原発1〜3号機は自動的に緊急停止した。だが、約四十分後の午後三時二十七分ごろから数度の津波に襲われた。
 むき出しの海水ポンプは破壊。崖を崩した海抜十メートルの敷地にある1〜4号機の建屋は最大五・五メートルまで浸水し、地下の電源盤や非常用発電機は水没して壊滅。最悪レベルの原発事故につながった。
 写真は5号機近くの高台からの撮影。津波は、「八」の字に延びた防潮堤を破壊しながら乗り越え、護岸近くの重油タンクや5、6号機用の貯水タンクをのみ込んだ。
 地震発生時、港湾内ではタンカーから重油タンクへの給油中。タンカーは沖合へ避難し難を逃れたが、タンクは引き波でさらわれた

 当初からツイッターで原発の様子を発信してきたベテラン作業員のハッピーさんは、地震発生時は原子炉建屋にいた。ゴゴーっという地響きがして大きな揺れが来た。「建屋内に五十人以上がいた。もし大津波が近づいていると伝えられていたら、冷静に避難できただろうかと今は思う」
 事務所で点呼中に突然、西から突風が吹き、空から雪が降ってきた。「津波風だ!と誰かが叫んだ。この時、津波がイチエフを襲ったのかもしれない」 (片山夏子、山川剛史が担当します) 
 ◇ご意見はfukushima10@tokyo-np.co.jpへ


<ふくしまの10年・イチエフあの時 事故発生当初編>(2)
 道ふさぐ巨大重油タンク
                          東京新聞 2020年9月23日
 東京電力福島第一原発を襲った津波は、護岸近くに置かれた重油タンクも襲った。約二百メートル山側の1号機原子炉建屋脇まで押し流した。直径約十二メートル、高さ九メートルもある大きなタンクで、高台から海側敷地に抜ける道を完全にふさいでしまった。
 「こんな大きなタンクが津波に流されるなんて…」。大震災当夜、仲間と車で敷地内を回ったベテラン作業員のハッピーさんは、その光景をにわかに信じられなかった。
 回り道をして5、6号機の方に向かうと、今度は倒れた送電線の鉄塔が道路をふさいでいた。別の道路では津波で押しつぶされた何台もの車が行く手を阻んでいた。衝撃の連続だった。
 流された重油タンクがふさいだ道は、1〜4号機の海側敷地に出る主要ルート。タンクを撤去しようにも大きなクレーンが必須で、原子炉冷却など緊急対応すべき難問は山積していた。撤去は、現場の状況がある程度落ち着いた六月末になってからだった。

 重油タンクや車両、がれきがあちこちで道をふさいでいる。工具や資材を運ぶにも車での移動は難しく、人力での作業が続いた。
 建屋内への出入りも困難を伴った。タービン建屋がある海側からはがれきが邪魔で入るのが難しく、やむを得ず高線量の山側から入っての作業が続いた。


<ふくしまの10年・イチエフあの時 事故発生当初編>(3)
 あちこちで地割れ、崩落 
                         東京新聞 2020年09月24日
 東京電力福島第一原発(イチエフ)事故の原因は、「想定外」の大津波によるもので、地震によるものではなかったとされる。しかし、決して地震の被害は小さくなかった
 写真の地割れや崩落は、敷地の真ん中辺りの谷の周辺。海側道路では地割れや段差が発生し、斜面が崩落して道がふさがれた地点もあった。
 余震が続く中、作業員は免震重要棟を拠点に復旧工事に出掛けた。「24時間、指示があれば現場に行き、常に緊張状態だった。敷地内の至る所に地震や津波の影響が見られ、資機材運ぶ際にも、まずは障害物を撤去するなどし、現場までの道を確保しなくてはならなかった」とベテラン作業員のハッピーさん(通称)は言う。
 5、6号機では、地滑りで送電線の鉄塔が倒壊し、外部電源が断たれた。倒壊した鉄塔は、崖を崩して各号機の敷地を造成した際の残土を沢に捨てた通称「土捨て場」近くにあった。1、2号機につながる受電施設も損傷し、早期の外部電源復旧は難しくさせた。このほか原発で使う純水を貯蔵するタンクなどが強い揺れでゆがみ、配管から漏水するなどの被害が出た。
 「建屋内の被害も甚大だったが、それが地震や津波のせいか、爆発のせいか分からなかった10年たとうとしている今も、現場検証が進んでいないのには怒りを覚える」