原発の再稼働などに必要な事前同意の対象自治体は立地自治体と県に限定されています。 九州電力玄海原発を巡り、事前同意の対象自治体を事実上拡大させることを視野に、唐津市議会は18年8月に玄海町と原子力行政について話し合う協議会の設置を市に要請しました。しかし玄海町は他の自治体が加わることに賛成ではないようで、2年が経過しても目立った進展は見られません。
原発事故の被害が立地自治体には留まらないことは明白なので、同意を要する自治体を立地自治体に限定することには何の意味もありません。残念なことです。
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原発協議会の設置、進展なし 要請から2年、佐賀・唐津市と玄海町
西日本新聞 2020/9/19
5キロ圏市民「もっと議論を」
九州電力玄海原発(佐賀県玄海町)を巡り、再稼働などに必要な事前同意の対象自治体を事実上拡大させることを視野に、唐津市議会が玄海町と原子力行政について話し合う協議会の設置を市に要請して2年が経過した。峰達郎市長は同町の脇山伸太郎町長と会談を続けているが、目立った進展は見られない。足踏みが続く現状に市議などからは市長の政治手腕を問う声も上がる。
「協議会設置については町に理解を得られていないが、原発課題に対して意見交換できる環境はつくれている。より一体感の醸成を図りたい」。8月の市議会玄海原発対策特別委員会で、進捗(しんちょく)状況を問われた峰市長はこう答弁した。市議会は2018年8月、協議会設置に向けた両市町長の意見交換を要請。市によると町との協議はこれまでに事務レベルも含めて11回行ったが、トップ同士が直接会ったのは4回。今年8月20日の4回目は、前回から約1年半が経過していた。
特別委終了後、ある市議は「首長同士が膝をつき合わせてなんぼなのに、本気度を感じない」と市長を批判。別の市議も「無理なら違う方向にかじを切るなど政治手腕を見せるべきだ。いつまで曖昧な答弁でごまかすのか」と指摘した。
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重大事故時に即時避難が必要な原発5キロ圏内に暮らす唐津市民は9月1日時点で約4100人。立地自治体の玄海町より約760人多い。しかし、再稼働や施設建設などに事前同意する権限は県と町に限られている。関係者によると、市は過去に九電に対して同意権を求める動きを見せたが、実現には至らなかった。市幹部は「同意権は既得権益で対象拡大が難しいのは事実だ。九電も嫌がるだろう」とこぼす。事前同意の対象を拡大した事例はある。日本原子力発電東海第2原発(茨城県東海村)では18年3月、事前同意の対象を立地自治体だけでなく半径30キロ圏内の5市にも広げる安全協定を締結した。しかし玄海原発では30キロ圏内の自治体の足並みがそろっていない。
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市議会は何らかの形で市民の意見を原子力政策に反映させようと、方法を模索。町が九電から事前同意を求められた場合、市と合意の上で判断してもらう仕組みづくりにたどり着き、玄海町長が脇山氏に替わるタイミングで峰市長に働き掛けを求めた。当初、峰市長は「協議会設置を最終目標として頑張りたい」と意欲を示したが、権限の範囲拡大による原子力行政への影響を懸念する町側が一貫して否定的な立場を取っていることもあり、次第に慎重な姿勢に転じた。峰市長は西日本新聞の取材に「議会が求める協議会という形は不可能だと思う」と述べた。
原発から約5キロに暮らす同市呼子町の男性(80)は9年前の東京電力福島第1原発事故を踏まえ、市にこう訴える。「あんな事故があればここも人が住めんようになる。リスクを背負って生活する市民の思いを軽視せず、議会でもっと活発に議論して方向性を示してほしい」(津留恒星)