(この記事はブログ「湯沢平和の輪」の記事ですが、原発がテーマなので転載します)
第2次安倍政権発足後、5原発・9基が再稼働しました。安倍政権は15年、日本の望ましい電源構成として、30年時点での原発の総発電量に占める比率を20~22%に高めることを平然と盛り込みました。しかしそれはその時点で実に30基程度を動かさないと実現しないものなのです。日本で再生エネ発電の発展が抑え込まれているのはその電源構成を実現するためで、それでは発電単価の低減など実現しようがありません。
ドイツは福島原発の事故を機に、22年末までに全原発の停止をめざしているというのに、大元である日本はひたすら逆コースを進んでいるのです。
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<安倍政権 緊急検証連載><一強の果てに 安倍政権の7年8カ月(6)>
原発寿命延長が前提 再生エネには後ろ向き
東京新聞 2020年9月6日
「東日本大震災を経験し変わるかと期待したが、政府はいまだに原発を生き延びさせようとしている」
茨城県東海村にある日本原子力発電(原電)東海第二原発。その運転差し止め訴訟で原告団共同代表を務める大石光伸さんが、悔しそうに話す。
◆「20~22%」を原発で
国内33基の商業用原発のうち、第2次安倍政権発足後に5原発・9基が再稼働した。原電も「原則40年」の運転期間を超え、稼働から42年目に入った東海第二原発の事故対策工事を2022年12月までに終え、地元の同意後に再稼働させる考えだ。
この動きを支えたのが、安倍政権が15年に定めた将来の電源構成の目標だ。原発については、30年度時点の総発電量に占める比率を20~22%に高める方針を盛り込んだ。
「20~22%」の達成は原則40年の運転期間を延長しながら、30基程度を動かすことが前提。東京電力福島第一原発事故を境にドイツが再生可能エネルギーの導入を加速させ、22年末までの国内全原発の停止を打ち出したのとは対照的な姿勢だった。
◆再生エネ比率は引き上げず
原発再稼働の一方で、日本の再生エネ比率は18年時点で約17%どまり。「30年度に22~24%」とした目標は現在の欧州の水準すら下回る。それでも政府が目標を引き上げないのはなぜか。エネルギー政策に詳しい龍谷大の大島堅一教授は「再生エネ比率を見直すと原発比率を下げざるを得ないため、政府は見て見ぬふりをしている」と指摘する。
◆背後に大手電力
安倍政権は、原発を再稼働させたい大手電力の後ろ盾となり、再生エネの普及を目指す新規参入者には不満が募る。
福島県飯舘村で再生エネ発電を手掛ける村民出資会社「飯舘電力」には出力50キロワット未満の太陽光発電所が47基あるが、14年の設立当初は採算性が高い1500キロワットの大規模発電所の建設を計画していた。小規模発電所への変更を余儀なくされたのは、高電圧の送電網につなぐ条件として、東北電力から数億円の工事費負担などを求められたためだ。
飯舘電力副社長の千葉訓道さんは「安倍政権が再生エネを後押ししてくれたことはなかった」と振り返る。
◆脱炭素は先送り
だが、再生エネを抑制してまで固執した原発の「再興」は国民の支持が得られず、政府の期待通りには進まなかった。電力の大部分を火力発電に依存する構造は変わらないまま。安倍政権は世界的な脱炭素化の潮流に乗り遅れ、二酸化炭素(CO2)削減の課題解決を先送りした。(妹尾聡太)