北海道寿都町と神恵内村で相次ぎ浮上した核のごみの最終処分場選定の文献調査応募への動きを巡り、2007年に高知県東洋町が応募した際の元高知県知事、橋本大二郎氏が27日までに取材に応じ「国は餌だけ垂らして何もせず、手を挙げた首長にすったもんだを任せている」と批判しました。
高知新聞の記事「【核のごみ処分】東洋町の教訓生かされず」を併せて紹介します。
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核ごみ応募巡り「国は餌だけ」 元高知知事の橋本大二郎氏が批判
東京新聞 2020年9月27日
北海道寿都町と神恵内村で相次ぎ浮上した高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分場選定の文献調査応募への動きを巡り、2007年に高知県東洋町が応募した際の元高知県知事、橋本大二郎氏(73)が27日までに取材に応じ「国は餌だけ垂らして何もせず、手を挙げた首長にすったもんだを任せている」と批判した。
処分場選定の文献調査を受け入れた自治体には国から2年間で最大20億円の交付金が支給される。調査入りには自治体の応募のほか、国から申し入れるケースもあるが、事前の自治体による住民の合意形成が前提だ。橋本氏は「(住民間で)落ち着いた議論は難しい」と指摘する。
【核のごみ処分】東洋町の教訓生かされず
高知新聞 2020.09.12
原発から出る高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分場。その候補地選定に向けた文献調査に、北海道寿都(すっつ)町が応募を検討していることが波紋を広げている。
町内外で反対が続出している状況は、2007年に全国で初めて応募した高知県の東洋町のケースと同じだ。国が交付金を示して、自治体が手を挙げるのを待つ姿勢も変わっていない。核のごみ処理への国の関与のあり方が改めて問われている。
処分場は文献(約2年)、概要(約4年)、精密(約14年)の各調査を経て決定する。文献調査で最大20億円、概要調査で同70億円の交付金が支払われる。
寿都町長は町民の同意を前提に、精密調査にも意欲を示している。現在は住民説明会を開催中で、10月以降に文献調査に応募するかどうか判断するという。
原発政策を巡っては高い透明性が求められる。にもかかわらず東洋町では、当時の町長による文献調査への応募が「秘密裏」に行われ、強い反発を招いた。
寿都町でも町民や議会の理解を得ないまま町長が突然、応募検討を表明した。町内で賛否が割れ、周辺自治体のほか北海道知事も反対するなど、地域の混乱が深まっている。東洋町の教訓が生かされているとは言いがたい。
財政難の自治体にとって、多額の交付金は魅力的に映る。そうした自治体の足元を見透かすように、札束を積んで誘致を促す手法への批判は根強い。
公募制度は一見、民主的な手続きに思える。しかし応募の権限を首長に与える一方で、議会や住民の意思をどう反映させるかは曖昧だ。東洋町で住民が分断される混乱が生じた際も、国が主体的に関わる姿勢が見えなかったことも不信感を高めた。
その反省も踏まえて国は2017年、候補地となる可能性のある地域を日本地図上に示した「科学的特性マップ」を公表した。火山や活断層が周囲になく、地層や地質が安定した地域を適地に分類。このうち、核のごみを搬入しやすい海岸近くを最有力候補地としている。
国が前面に立って選定を進めるという触れ込みだったが、適地は全都道府県に存在し国土の7割弱が該当する。最有力候補地のある自治体も、全市区町村の過半数の約900に上る。まだまだ国がイニシアチブを取っているとは言えまい。
原発が稼働を続ける以上、核のごみは発生し最終処分場は不可欠だ。将来世代への先送りも許されない。国は公募を待つだけでなく、より踏み込んだ対応を検討する時ではないか。科学的知見に基づいて、複数地域への検討申し入れを国の責任で行うのもその一つだろう。
核のごみをこれ以上増やさないよう、脱原発への道筋を国がはっきり示すことも必要だ。応募検討に向けた動きは寿都町以外にも見られる。国民的な関心を高めるために、国がやらなければならないことは多い。