女川原発2号機の再稼働を巡り、女川町議会は7日の9月定例会本会議で、早期再稼働を求める陳情を賛成多数で採択しました。女川原発の立地自治体や議会の手続きで正式に再稼働への「同意」を示したのは初めてで、須田善明町長をはじめ石巻市議会と亀山紘市長、県議会や最終的に可否を決める村井嘉浩知事の判断にも影響するとみられます。
賛成派議員は「温暖化対策で原発の再稼働が必要」と主張したということですが、原発は熱効率の関係で火力発電に比べて海水を1・5倍以上も暖めるものなので、納得できません。
町民の賛否こもごもの声を収録した記事を併せて紹介します。
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女川町議会、原発再稼働正式同意 立地議会で初
河北新報 2020年09月08日
東北電力女川原発2号機(宮城県女川町、石巻市)の再稼働を巡り、女川町議会は7日の9月定例会本会議で、早期再稼働を求める陳情を賛成多数で採択した。女川原発の立地自治体や議会の手続きで正式に再稼働への「同意」を示したのは初めて。
町議会の意思表明は須田善明町長をはじめ石巻市議会と亀山紘市長、県議会や最終的に可否を決める村井嘉浩知事の判断にも影響するとみられる。須田町長は取材に「(再稼働に関する)論点が網羅されたと感じた。討論で出た賛否双方の考え方も含めて結果として受け止める」と話した。
本会議では、再稼働に賛成の陳情4件と反対の請願2件を審議してきた原発対策特別委員会の宮元潔委員長が、8月19日に賛成の陳情を採択したことを報告。議長を除く全議員11人で起立採決し、賛成の陳情にはそれぞれ8人が賛成、3人が反対した。反対の請願は賛成3人、反対8人で不採択だった。
採決前の討論で、賛成派議員は「温暖化対策で日本の役割を果たすため、二酸化炭素を排出しない原発の再稼働が必要」と主張。反対派議員は「目先の利益にとらわれず、原発のない未来にかじを切るべきだ」と述べた。
石巻市議会は賛否双方の陳情と請願計2件を審議しており、開会中の9月定例会で賛成の陳情を採択する可能性が大きい。23日に開会する県議会でも再稼働の賛否が議論される見通し。
東北電は談話で「再稼働を求める地元の声をしっかりと受け止め、引き続き安全性向上に全力で取り組む」と改めて強調した。
2号機は2月、原子力規制委員会の審査に合格。東北電は安全対策工事が完了する2022年度以降の再稼働を目指している。
女川原発再稼働、町議会同意 「命に関わる」「不可欠」町民賛否の声交錯
河北新報 2020年09月08日
宮城県女川町議会が7日、東北電力女川原発2号機(女川町、石巻市)の再稼働に「同意」した。重大事故時の不安、冷え込む地域経済への期待。約半世紀にわたり国策に向き合ってきた町内では、再稼働への賛否の声が交錯する。東京電力福島第1原発事故を経た町議会の選択に、住民はさまざまな思いを抱く。
「危険な原発は要らない。命に関わる問題だ」
女川町のNPO法人理事長の松木卓さん(82)が語気を強める。町内2カ所に設けた太陽光発電所の売電収入を原資に奨学金を給付する活動に取り組む。2019年度は売電収入が400万円を超え、町出身学生15人に2万円ずつ贈った。
1964年、出身地の石巻市から町に移住し、薬局を開いた。町議会が原発誘致計画を認めたのはその3年後の67年。以来、賛否に揺れ動く町民を見てきた。
脱原発を訴える松木さんは「将来世代のことも考えれば、目の前の利益に踊らされるべきではない」と町議会の判断を憂えた。
一方、基幹産業の水産業など約400の業者が加盟する女川町商工会の高橋正典会長(70)は「町の経済を考えれば原発は必要不可欠だ」と言う。
東日本大震災の津波で壊滅的被害を受けた町で、廃業や閉店を選ばざるを得ない事業者が相次いだ。約700あった業者は半減。町を潤した復興需要も細り、新型コロナウイルス禍が追い打ちを掛ける。
高橋会長は「議会の判断は運転開始の議論を大きく前進させた」と早期の再稼働に期待を寄せる。
県漁協女川町支所は再稼働を求める陳情を町議会に提出したが、複雑な立場の漁業者も。町内でホヤ養殖を営む男性(70)は「この先、原発で事故がないとは言い切れない」と話す。
福島の原発事故後、町の水産業は風評被害に遭った。国内生産量1位を誇ったホヤは一大消費地の韓国が事故を理由に禁輸措置を取り、大打撃を受けた。生産量は震災前の約1万トンから半減し、19年は初めて首位の座を北海道に渡した。
「震災の経験もあり、思いはさまざま。賛否ではくくれない」。男性は住民の揺れる気持ちを代弁した。