2023年6月24日土曜日

東電の原発運転適格性を再確認へ 原子力規制委が異例の再検討

 別掲の記事の通り、原子力規制委は東京電力の“適格性”について2017年12月の段階で「運転を的確に遂行するに足りる技術的能力がないとする理由はない」と判断しました。

 山中規制委員長は22日、「当時の判断が維持できるかどうか、再確認する必要があると考えている」と述べ、他の委員も否定しませんでした。
 山中委員長は、適格性を判断するその具体的な方法を検討するよう事務方に指示しました。
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東電の原発運転適格性を再確認へ 原子力規制委が異例の再検討
                            毎日新聞 2023/6/22
 相次ぐテロ対策の不備で是正措置命令が出ている東京電力柏崎刈羽原発(新潟県)について、原子力規制委員会は22日、東電に原発を運転する適格性があるか、再確認することを決めた。規制委は同原発6、7号機について、東電に適格性があると認めた上で審査を通過させており、自らの判断を再検討するのは異例だ。
 同原発はテロ対策の改善に向けた規制委の検査が続き、情報共有の不十分さなど4項目の課題が残っている。改善の完了に加え、適格性の確認も終えなければ命令は解除されず、再稼働できない見込み。政府が夏以降としている6、7号機の再稼働はさらに見通せなくなった。
 規制委はこの日、東電の小早川智明社長を呼んで改善状況を聞き取った。小早川氏は、7月中に残る課題を改善する仕組みを整える方針を示した。

 規制委はその後、委員5人全員で対応を協議。山中伸介委員長は、命令解除の判断をする段階で「(東電に適格性があるとした)当時の判断が維持できるかどうか、再確認する必要があると考えている」と言及した。他の委員も否定せず、適格性を再確認することを正式に決定。その具体的な方法を検討するよう、山中委員長が事務方に指示した。
 方法について、山中委員長は21日の記者会見で、テロ対策の検査とは別の検査をすることを示唆。二つの検査をクリアしない限り、命令を解除しない意向を示していた。
 東電は7号機が10月に再稼働することを見込んで電気料金を値上げしたが、小早川氏は報道各社の取材に「再稼働の時期の見通しは立っていない」と認めた。
 6、7号機は2017年に規制委の審査を通過した。規制委は、東電が福島第1原発事故を起こした当事者であることを踏まえ、再び原発を運転する適格性があるかを審査で確認する「東電スペシャル」と呼ばれる異例の対応をとった。東電は、適格性を具体的に示すための7項目を再稼働に必要な保安規定に盛り込み、規制委は20年に保安規定も認可。手続きが先行した7号機はすべての審査が終了した。
 しかし20年以降、複数の監視設備の故障を放置したり、発電所員が中央制御室に不正侵入したりするなど、テロ対策の不備が相次いで発覚した。規制委はテロ対策のレベルを4段階で最悪の「赤」と認定。東電に是正措置命令を出して6、7号機の再稼働を事実上禁じ、検査を始めて27項目の改善を求めていた。【高橋由衣】


運転禁止の柏崎刈羽原発、東電が7月中に改善措置構築へ
                            産経新聞 2023/6/22
テロ対策の不備で事実上の運転禁止命令が継続となった東京電力柏崎刈羽原発(新潟県)について、原子力規制委員会は22日、東電の小早川智明社長と同原発の稲垣武之所長から意見聴取した。命令解除には「自律的な改善」が求められているが、東電は7月中に改善措置の仕組みを整える意向を示した。
一方、規制委は命令解除の是非を再判断する際には、東電が原発を運転する「適格性」についても、改めて確認することを決めた
22日の臨時会合で、小早川社長は「組織が大きく、縦割りになり、現場とのコミュニケーションが不足していた部分はある」と非を認めた上で、社内外の監視・評価体制を強化し、改善措置を一過性にしない取り組みなど、今後の対応方針について説明した。
規制委は今年5月、追加検査で確認した27項目の改善方針のうち、侵入者を防ぐセキュリティー体制や核物質防護に対する社内意識など4項目について「不十分」と判断し、追加検査の継続を決めた。

東電は同原発6、7号機について早期の再稼働を目指しているが、検査の長期化で時期が見通せない状況が続いている。
柏崎刈羽原発では、令和3年に侵入検知器の故障やIDカードの不正使用などの問題が発覚。規制委は同年4月に運転禁止の行政処分を下し、再稼働の動きが止まった。
規制委は当初、検査にかかる期間として2千時間を目安にしていたが、これまでに3400時間を超えている。