2025年8月28日木曜日

福島県民 実効性に疑問 除染土最終処分候補地決定2035年めど

 政府が福島第1原発事故に伴う除染土壌の福島県外最終処分の新たな工程表を作成(26日)したことについて、県民から2035年ごろをめどとしたことに 残された時間は限られ、間に合うのかとの声が上がりました。中間貯蔵施設への除染土壌の搬入が始まってからの10年間、県外の候補地選定は遅々として進まず、政府の姿勢に不信感を募らせてきたため、実現するための方策の具体化や計画の着実な実施など、責任ある姿勢が政府に求められました。

 また交付金制度を設け搬出先が受ける利点を提示するなど、国が本気度を示す必要性にも言及されました。
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福島県民 実効性に疑問 除染土最終処分候補地決定2035年めど 「スケジュールありき」 政府に具体化求める
                           福島民報 2025/08/27
 政府が26日公表した東京電力福島第1原発事故に伴う除染土壌の福島県外最終処分の新たな工程表について、候補地決定の目標時期が示されたことに、県民は一定の評価をしつつも、「本当に実現できるのか」と実効性に疑問を呈した。2035(令和17)年ごろをめどとしたが、残された時間は限られ、「スケジュールありきではないか」との声も上がる。法律で定められた中間貯蔵施設から県外への除染土壌搬出に向け、実現するための方策の具体化や計画の着実な実施など責任ある姿勢を政府に求めた。
「(法律で定めた)2045年の期限まで本当に搬出できるのか」。大熊、双葉両町の地権者有志でつくる「30年中間貯蔵施設地権者会」会長の門馬好春さん(68)=東京都=は新たな工程表に疑問を投げかける。
 中間貯蔵施設への除染土壌の搬入が始まってからの10年間、県外の候補地選定は遅々として進まず、政府の姿勢に不信感を募らせてきた。除染土壌の搬出先決定までさらに10年をかける方針について、「最初に着手し、解決すべき課題なのに具体性がない」と憤り、早期着手を求める。交付金制度を設けるなど搬出先が受ける利点の提示がないなど国の「本気度」も不十分に映る。
 双葉町で暮らす無職国分信一さん(75)は「復興や最終処分の道筋が見えてきたのは一歩だろう」との見方を示す。一方、理解醸成策は最終処分だけでなく、再生利用の推進にも重要となるが、新味のない施策に物足りなさを感じる
 被災地からは中間貯蔵施設の土地の返還や活用など県外最終処分後の復興を描くため、着実な取り組みを求める声が上がる。大熊町に暮らす無職伏見明義さん(74)は「復興を遅らせないためにも計画をしっかりと実行してほしい」と工程表の順守を国に強く訴えた

■官民再利用で課題山積
 県外最終処分の実現性を高める再生利用について、政府は東京都霞が関の中央省庁の花壇などでも進め、国民に安全性を周知していく。ただ、住民の生活圏でない場所での利用でどれだけ理解が広まるかは不透明だ。
 工程表では、民間企業の土地造成や埋め立てなどで除染土壌活用の先行例を創出する方針も示された。ただ、建設業界からは慎重な声も。白河市の鈴木建設取締役営業部長の鈴木信也さん(37)は「土壌の安全性への理解が浸透していなければ、率先して手は挙げられないだろう」と語る。再生利用だけでなく、作業や工事後の安全確保など知見がない中、「何らかの形で実証を積み上げてもらわないと厳しい」と話した。
 飯舘村で花苗を生産・販売しながら再生利用事業の案内や広報も担う菅野みゆきさん(50)は「安全性に関する情報発信が不足していると感じる。少しずつでも着実に理解醸成につながる取り組みを進めてほしい」と国に注文した。