2022年6月2日木曜日

北電 泊原発運転差し止め命令(植草一秀氏)/「先延ばし」に厳しい姿勢(産経新聞)

 植草一秀氏が、札幌地裁が「津波に対する安全性の基準を満たしていない」として、北電・泊原発1~3基を運転しないよう命じる判決を言い渡しことについて考察する記事を出しました。

 植草氏は、原発が重大事故を起こした場合の損失は無限大に拡大する可能性があるので、中途半端な対応は許されず、何よりも地震対策、津波対策が万全に実施されていることが最低限の条件になっているのに対して、政府と電力会社は再稼働の最低限の条件も備えず、無限大のリスクを放置したまま原発の再稼働に突き進んでいると述べました。
 そしてそれを助長しているのが、政府の意向を忖度し原発の耐震性は「高度の専門技術」分野であるからとして判断を行わずに、国や電力会社側の主張を丸呑みしてきた裁判官たちであるとしました。
 裁判官をその方向に仕向けているのは、裁判官の人事権を握っている最高裁事務総局と言われています。

 また産経新聞は、札幌地裁が活断層の有無など複数の争点で北電の最終的な主張を待つことなく1月の時点で審理を打ち切って、「津波対策の不備」という一点をもって運転差し止めを命じたのには、煮え切らない対応で主張を「先延ばし」にしてきた北電への批判が込められているとの趣旨の記事を出しました。
 札幌地裁は、北電が事実上審理を長引かせることについて、「審理の継続は、原告らに被告の主張立証に延々と対応することを余儀なくするもので正当化は難しい」と批判しました。
 そして同地裁は今回、科学的知見や資料を持つ電力会社側が立証責任を尽くさない場合「安全性を欠く」とする過去の原発関連訴訟で示された判断枠組みを適用したと指摘しました。
 いずれにしても、津波によって原発への浸水が起きれば巨大な被害が生じることは福島原発事故で証明されたことなので、不十分な津波対策のみで「安全性に問題がある」とした判断は極めて正当です。
 2つの記事を紹介します。
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北海道電力泊原発運転差し止め命令
                植草一秀の「知られざる真実」 2022年6月 1日
北海道泊村にある北海道電力・泊原子力発電所の安全性が争われた裁判で5月31日、札幌地方裁判所は「津波に対する安全性の基準を満たしていない」として、北海道電力に3基ある原発すべてを運転しないよう命じる判決を言い渡した。
津波対策が不十分だとして原発の運転を認めない司法判断は初めて。
北海道電力・泊原発の1~3号機について、周辺住民など1200人余りが、「津波や地震への安全性が不十分だ」と主張して運転の禁止や、使用済み核燃料の撤去、それに原発の廃炉を求める訴えを起こしていた。裁判の審理には10年余の時間を要した。
そのなかで、津波対策が十分に取られているかどうかが争点になった。
原告は「福島第一原発の事故のあと新設された防潮堤は地震による液状化で支持地盤が沈む可能性があり津波を防げない」などと主張した。

5月31日の判決で札幌地方裁判所の谷口哲也裁判長は
「泊原発では大地震が起きた際に、少なくとも12メートルから13メートル余りの津波が想定される。それなのに北海道電力は防潮堤の地盤の液状化や、沈下が生じる可能性がないことを裏付ける説明をしていない。また今後、建設するとしている新たな防潮堤についても、高さ以外には構造などが決まっていない」と指摘。
そのうえで「泊原発には津波防護施設が存在せず、津波に対する安全性の基準を満たしていない」と結論づけ、北海道電力に対し泊原発の1~3号機すべてを運転しないよう命じた。

この判決について日本共産党の小池晃書記局長は、31日に国会内で記者会見し、判決が生命や健康が脅かされるのは人格権の侵害だとする原告の住民らの訴えを認めたものだとして、
「これは泊原発以外のすべてのあらゆる原発に当てはまる論点であり、非常に重要な判決だ」と指摘した。

2011年3月11日に発生した東京電力福島第一発電所の重大事故が明らかにしたように、原発は私たちのいのちと暮らしを根底から破壊するリスクを内包している。重大事故が発生した場合の損失は無限大に拡大する可能性があり、中途半端な対応は許されない。
福島原発事故で東日本全体が消滅する事態は回避されたが、最悪の事態が回避されたのは、多くの偶然が重なったためである。
奇跡的にカタストロフィー(⇒壊滅・破局)が回避されただけであって、この奇跡的な偶然がなければ、東日本全体が消滅していた可能性が高い。

悪夢が発生した原因は地震と津波に対する備えが不十分であったこと。
したがって、原発を稼働させるための最低限の条件は地震対策、津波対策が万全に実施されていることということになる。
ところが、現実には地震対策も津波対策も依然として不十分だ。
原発稼働は許されないが、政府と電力会社は再稼働の最低限の条件も備えずに原発稼働に突き進んでいる。無限大のリスクは完全に放置されている。

今回の判決は津波対策の不備を指摘したものだが、津波対策だけでなく地震対策の不備も鮮明だ。無限大リスクを放置したまま原発稼働を推進する政府の対応は狂気の沙汰である。
福島の教訓がありながら、その教訓から何も学ばぬ姿勢は万死に値する。
日本の原発の耐震性能は極めて低い。
福島事故以前、日本の原発の耐震設計基準はほとんどが400ガル程度に定められていた。
福島事故を受けて基準が引き上げられたが、それでも耐震設計基準は450ガルから800ガルの水準までしか引き上げられていない。
しかし、日本では1500ガルを超える地震の揺れが頻繁に確認されている。
そして、その1500ガルを超える揺れは日本列島のすべての場所で発生する可能性がある。

大飯原発等の運転差止命令を発した福井地方裁判所元裁判長の樋口英明氏は原発の耐震設計基準が不十分であることから運転差止命令を発した。当然の合理的な司法判断だ。
しかし、このような適正な判断を示す裁判官は決して多くない。
多くの裁判官が政府の意向を忖度して原発稼働を容認する司法判断を示す。
その根拠とされている考え方が「原発訴訟は高度の専門技術訴訟である」というもの。
原発の耐震設計基準が十分であるか否かは「高度の専門技術」によって判断されねばならず、政府の専門家委員会が審査して合格させたのであるから、その判断が尊重されるべきだとする。
しかし、1500ガルを超える地震が頻発するなかで原発の耐震設計基準が800ガルまでしかないということは「高度の専門技術」がなくても誰でもが不十分であると判断できる。
このような理性と常識による判断を排除して、行政府の意向を忖度する司法は、司法の独立性自体を自己否定するものでしかない。
裁判所の堕落が私たちのいのちと暮らしを危機に追い込んでいる。

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「先延ばし」の北海道電に厳しい姿勢 泊原発訴訟
                            産経新聞 2022/5/31
再稼働に向けた原子力規制委員会の審査が今も続く中、札幌地裁は31日、活断層の有無など複数の争点で北海道電力の最終的な主張を待つことなく、「津波対策の不備」という一点をもって運転差し止めを命じた。煮え切らない対応で主張を「先延ばし」にしてきた北海道電に、厳しい姿勢を示した形だ。
今回の訴訟で北海道電は、規制委による審査の推移を見ながら主張立証する姿勢を貫いたが、結果として住民側の提訴から10年が経過しても審査は終わらず、訴訟は長期化した。
「審理の継続は、原告らに被告の主張立証に延々と対応することを余儀なくするもの。正当化は難しい」。谷口哲也裁判長は判決の中で、北海道電が敷地内断層に関する主張を書面で提出する意向を示していたにもかかわらず、今年1月に審理を打ち切り判決を出した理由をこう説明した。
地裁は今回、科学的知見や資料を持つ電力会社側が立証責任を尽くさない場合「安全性を欠く」とする過去の原発関連訴訟で示された判断枠組みを適用した。
泊原発の既存の防潮堤がある地盤で液状化が起きる可能性は低いとする北海道電の主張には「資料による裏付けをしていない」とし、建設予定の新しい防潮堤も「高さ以外の構造が決まっていない」と指摘。規制委の設置許可基準を満たしていないと結論づけた。
その上で、ほかに争点となっていた海底活断層や敷地内の活断層の有無については判断することなく、不十分な津波対策のみで安全性に問題があるとした。
保管中の使用済み核燃料の安全性に関しても、「北海道電は具体的な検討に基づいた根拠を何ら示していない」と厳しく指弾。一方で、適切な撤去場所を特定していないことなどを理由に、原告側の撤去請求自体は退けた。
北海道電は判決後、「最新の知見を踏まえながら、科学的・技術的観点から説明を重ねてきた。当社の主張を理解してもらえず誠に遺憾であり、到底承服できない」とするコメントを出し、速やかに控訴する方針を示した。

泊原発 規制委審査9年 いまだに先行きが見えず/規制委 判決には左右されないと

 泊原発の運転差し止め訴訟では、科学的知見や資料を持っている筈の北電の立証乃至回答がはかばかしくなく、審理が大幅に遅れました。
 規制委の再稼働審査でも同じようなことが起きていて、関西、四国、九州の電力3社と共に審査に入ってから9年になりますが、この間他社は全て審査を終了しているのに、北電の泊原発だけはいまだ先行きが見通せず、規制委側が論点を整理して提示する「手取り足取りの対応」(規制委の更田豊志委員長)をせざるを得ない異例の事態となっています。
 時事通信が報じました。

 札幌地裁が31日に泊原発の運転差し止めの判決を出したことに対して、原子力規制委の 更田委員長は、「審査に対する影響ですけども、審査は審査で私達の責任をしっかりと果たすべく進められるものであって、今回の訴訟、並びに判決の影響を受けるものではありません」と述べました。TBSが報じました。
 2つの記事を紹介します。
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審査9年、先行き見えず 新規制「初日申請組」で唯一 地震想定など対応不手際・泊原発
                                                            時事通信 2022/6/1
 北海道電力は2013年7月、東京電力福島第1原発事故を受けて策定された新規制基準施行初日に関西、四国、九州の電力3社と共に泊原発1~3号機の審査を原子力規制委員会に申請。
 「初日申請組」の5原発10基のうち、審査が終わらず、再稼働にも至っていないのは泊原発だけだ。
 北海道電は3号機の審査対応を優先させているが、地震や津波、火山噴火対策などの論点で同社の対応の不手際が露呈。あまりの長期化に、今年3月、規制委側が論点を整理して提示する「手取り足取りの対応」(規制委の更田豊志委員長)をせざるを得ない異例の事態となっている。
 審査は最初からつまずいた。規制委は13年7月、北海道電が3号機の解析結果を、原子炉の構造が異なる1、2号機にも流用していたと指摘。津波を引き起こす海底活断層の想定も「仮説に基づいており、十分な説明がない」と苦言を呈した。
 17年11月には、これまで敷地内に活断層がないことの根拠としてきた火山灰層が、建屋建設時などに失われていたことが判明。議論は振り出しに戻り、昨年7月、別の証拠でようやく「活断層ではない」と認められた。
 背景には、同社の人材不足がある。更田委員長は「(関西電や九州電のように)複数の原発を抱えている電力会社に比べ、北海道電はどうしても地震や断層、火山の専門家を抱えるのは難しい」と指摘。今年4月、経営陣らに対し人材確保を改めて促した。


泊原発の運転差し止め判決に原子力規制委員長「審査は影響受けない」
                       TBS NEWS(JNN) 2022/6/1
札幌地裁が北海道電力・泊原発の運転差し止めを命じたことについて、原子力規制委員会は「審査は影響を受けない」との認識を示しました。
周辺住民らが、北海道電力・泊原発の廃炉や運転差し止めを求めた住民訴訟の判決で、札幌地裁はきのう、津波への安全対策の不十分さを理由に初めて1、2、3号機の運転差し止めを命じました。
原子力規制委員会 更田豊志委員長:「審査に対する影響ですけども、審査は審査で私達の責任をしっかりと果たすべく進められるものであって、今回の訴訟、並びに判決の影響を受けるものではありません」
原子力規制委員会の更田委員長は、きょうの会見で判決についてこのように述べ、「審査に影響はない」との認識を改めて示しました。泊原発の再稼働に必要な規制委員会による審査は長期化していて、申請からすでにおよそ9年が経過しています。

02- 志賀原発に活断層問題 新たな調査法で進展するか

 志賀原発の敷地内には1号機の真下を通るS1断層など10本の断層があり、1本でも活断層と評価されれば廃炉を余儀なくされます。

 16年4月、国の有識者会合は「活断層と解釈するのが合理的だ」との判断を下しました。それに対して北陸電力は約100億円の費用をかけて様々な調査を実施し、新たな調査方法「鉱物脈法」を取り入れ、10本あるすべての断層で少なくとも1つは鉱物が割れていないことを提示しました。
 22年5月の審査会で原子力規制委は、「活断層を疑うような点はみられない」との評価に変わりましたが、「写真だけではあいまいな部分もある。現地調査でしっかりと確かめたい」とされました。
 現地調査は、年内の雪が降る前に実施される予定です。石川テレビが報じました。
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新たな調査法で進展 志賀原発に活断層はあるのか? 年内にも現地調査へ…再稼働へ前進か?
                                FNNプライムオンライン(石川テレビ) 2022/6/1
志賀原発1号機の真下を通るS1断層。2016年には国の有識者会合で「活断層と解釈するのが合理的」と評価されている。しかし北陸電力は新たな調査方法で「活断層ではない」と主張している。
志賀原発が停止して11年。原子力規制委員会が出した結論とは…。
   【画像】北陸電力の志賀原発

福島第一原発事故後の新基準で…活断層となれば廃炉の危機
新潟県佐渡市とともに「能登の里山里海」として、日本で初めて世界農業遺産に認定された石川県能登地区。そのちょうど真ん中にある石川県志賀町には2つの原発がある。それが志賀原発だ。
そんな志賀原発を抱える北陸電力に、2012年、激震が走った。
2011年の福島第一原発事故を受けて、国は原発再稼働について新たな規制基準を設けたが、この中に、「12万年~13万年前以降に活動した活断層の上に原発の重要な施設は建てられない」というものがあったのだ。仮に原発がすでに建っていても、活断層と分かれば廃炉を余儀なくされる。

有識者会合の委員:明らかに活断層だ
志賀原発 1号機の真下を通るS1断層。建設当時のスケッチを見た委員の一人がこのように発言した。
しかし、志賀原発1号機の建設工事が始まったのは1988年で、1993年には営業運転を開始している。この時、国と専門家は同様のスケッチを見ているが「波による浸食」という北陸電力の主張を認め、建設を許可している。そして、スケッチで描かれた地層は建設工事によって削り取られているのだ。
このままでは廃炉を余儀なくされてしまう…、そう考えた北陸電力は、原子炉のそばにトンネルを掘るなどして、S1断層の活動性がないことを訴えてきた。

「活断層と解釈するのが合理的」2016年 有識者が指摘
しかし2016年4月、国の有識者会合はこう結論付けた。
有識者会合:活断層と解釈するのが合理的だ
実はこの結論が出る2年前、北陸電力は、電気出力は1号機の倍以上となる志賀原発2号機(2006年に営業運転開始)の審査を申し入れている。志賀原発を重要な電源の一つとみなしている北陸電力にとって、審査を先行させることで再稼働に道筋をつけるためだった。
この2号機の審査会合が、S1が活断層と指摘されてから2ヶ月後の2016年6月に始まった。そこで問題となったのが、志賀原発の敷地内にある10本の断層だ。この中には、S1も含まれる。

「活断層ではない」北陸電力が主張した新たな証拠
敷地内にある10本の断層のうち、1つでも活断層と評価されれば志賀原発は廃炉を余儀なくされる。北陸電力は約100億円の費用をかけて様々な調査を実施した。活断層と評価した有識者の評価をどのように覆すか。取り入れたのは新たな調査方法「鉱物脈法」だ。
これは600万年より前にできたと見られる鉱物を顕微鏡で調べ、断層と疑われるところで、その鉱物が割れていないことを証明するもの。600万年より前にできたとみられる鉱物が割れていなければ、その断層は12万年~13万年前以降に活動していない証拠となる。
北陸電力は10本あるすべての断層で、少なくとも1つは鉱物が割れていないことを提示し、「活断層ではない」と主張した。
そして迎えた、2022年5月の審査会合。原子力規制委員会の評価は…
原子力規制委員会のメンバー:活断層を疑うような点はみられない。おおむね評価する

年内に現地調査実施も再稼働への道のりは遠く…
新たな調査方法を提示し、北陸電力は2016年に示された有識者会合の判断を覆した。しかし原子力規制員会はこう付け加えた。
原子力規制委員会のメンバー:写真だけではあいまいな部分もある。現地調査でしっかりと確かめたい
慎重な判断を示した原子力規制委員会。北陸電力は「現地調査でしっかりとお見せする」と胸を張って答えた。
会合後、現地調査の意義を記者団に問われた原子力規制委員会は…
原子力規制委員会のメンバー:活断層の疑いがあるから現地調査に行くわけではない。北陸電力の主張は資料だけを見れば、矛盾することはない。ただし、評価対象の断層の中には、1つの鉱物の結果だけで「活断層ではない」としているものもある。私たちが現地で実物を見れば「活断層ではない」と、より自信をもって言い切れる。雪が降る前、年内には現地調査を実施したい

志賀原発の敷地内にある断層が「活断層ではない」と判断されれば、北陸電力は、再稼働に向けたスタートラインにようやく立つことができる。しかし、現地調査が年内に実施されても、その後に、現地調査を評価する審査会合が開かれることが決まっている。そしてさらにその後、地震や津波などの想定が正しいかや、それに対する安全性に問題がないかなどが厳しくチェックされる。
さらに再稼働のいちばんのハードルは、住民の理解だ。北陸電力は1999年、志賀原発1号機で国内初の臨界事故を起こしながら隠ぺいしていた過去がある。

ロシアのウクライナ侵攻や円安による物価高、さらにはカーボンニュートラル(温室効果ガスの排出を、全体としてゼロにすること)を掲げる日本にとって、原発は重要なエネルギーと位置付けられている。北陸電力も志賀原発の再稼働を目指していて、国も事業者もその思惑は一致している。
しかし、福島第一原発事故を経験した私たちにとって、志賀原発の再稼働は必要なのかどうなのか。現実的に再稼働まで時間がかかる今だからこそ、私たちは今後のエネルギー政策をどうするか議論する必要がありそうだ。 (石川テレビ)

2022年6月1日水曜日

北海道電力 泊原発の運転認めない判決 札幌地裁

 北海道電力・泊原発の安全性が争われた裁判で、札幌地裁は31日、「津波に対する安全性の基準を満たしていない」として、1~3基すべてを運転しないよう命じる判決を言い渡しました。廃炉については住民側の請求を退けました。

 判決で、泊原発では大地震が起きた際に、少なくとも12~13m余りの津波が想定されるものの、北海道電力は防潮堤の地盤の液状化や、沈下が生じる可能性がないことを裏付ける説明をしておらず、今後建設するとしている新たな防潮堤についても、高さ以外には構造などが決まっていない」と指摘し、「泊原発には津波防護施設が存在せず、津波に対する安全性の基準を満たしていない」と結論づけました。
 津波対策が不十分だとして原発の運転を認めない司法判断は初めてです。
 NHKと産経新聞の記事を紹介します。
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北海道電力 泊原発の運転認めない判決 廃炉は命じず 札幌地裁
                     NHK NEWS WEB 2022年5月31日
北海道泊村にある北海道電力・泊原子力発電所の安全性が争われた裁判で、札幌地方裁判所は「津波に対する安全性の基準を満たしていない」として、北海道電力に3基ある原発すべてを運転しないよう命じる判決を言い渡しました。津波対策が不十分だとして原発の運転を認めない司法判断は初めてです。

北海道電力・泊原発の1号機から3号機について、周辺住民など1200人余りは「津波や地震への安全性が不十分だ」と主張して運転の禁止や、使用済み核燃料の撤去、それに原発の廃炉を求める訴えを起こしていました。
10年余りにわたる審理では、津波対策が十分にとられているかなどが争点となり、原告側は「福島第一原発の事故のあと新設された今の防潮堤は地震による液状化で支持地盤が沈む可能性があり津波を防げない」などと、主張しました。
31日の判決で、札幌地方裁判所の谷口哲也裁判長は「泊原発では大地震が起きた際に、少なくとも12メートルから13メートル余りの津波が想定される。それなのに北海道電力は防潮堤の地盤の液状化や、沈下が生じる可能性がないことを裏付ける説明をしていない。また今後、建設するとしている新たな防潮堤についても、高さ以外には構造などが決まっていない」と指摘しました。
そのうえで「泊原発には津波防護施設が存在せず、津波に対する安全性の基準を満たしていない」と結論づけて、北海道電力に対し泊原発の1号機から3号機すべてを運転しないよう命じました。
また、泊原発で保管している使用済み核燃料の撤去については、原告側が撤去先を示していないとして、訴え自体は退けましたが、北海道電力が「運転を停止してから長期間、冷却しているので危険性が低下している」と主張したことに対し「具体的な検討に基づいた安全性の根拠を何ら示していない」として危険性がないことの説明ができていないと批判しました。
一方、原発の廃炉についてはそこまで必要だとする具体的な事情は見いだし難いとして訴えを退けました。

泊原発は平成24(2012)年に、定期検査のため3号機が発電を止めて以降、10年にわたり3基すべてで運転を停止した状態が続いています。

福島第一原発事故から11年がたつ中、その原因となった津波への対策が不十分だという理由で、原発の運転を認めない司法判断が示されたのは初めてで、判決は原発の安全に対する説明責任を電力会社に厳しく問うものとなりました。

原告団からは喜びの声が
法廷では裁判長が原発を運転してはならないという判決の主文を読み上げると、傍聴席から「やったー」という声が上がっていました。
また、判決言い渡しの後、原告団は裁判所の前で「差し止め認める」などと書かれた紙を掲げて喜びを表し集まった人からは拍手や歓声が上がっていました。原告の1人で札幌市に住む小林善樹さんは、「我々の主張が認められて、本当にうれしいです」と話していました。

原告団長「判決を素直に喜びたい」
判決のあとに開かれた記者会見で、原告団長を務める斉藤武一さんは「これで原発のない北海道を目指す第一歩を踏み出せる。原告の1人として、また地元の人間の1人として今回の判決を素直に喜びたい」と話していました。
代理人を務めた市川守弘弁護士は「極めて妥当な判決であり、原発に危険を覚えてきた住民らの意をくんだ素直な判決だった」と述べました。
そのうえで「行政の判断を待たずに判決に踏み切った今回の裁判は審査を待つ全国の原発訴訟に少なからず影響を与えるだろう。泊原発のような国の審査基準をクリアできていない原発については、稼働をやめるべきだとした裁判所の判断を評価する」と話しました。

北海道電力「速やかに控訴に係る手続き」 
判決を受けて北海道電力は「泊発電所の安全性などについて最新の知見を踏まえながら科学的・技術的観点から説明を重ねてまいりました。判決は、当社の主張をご理解いただけず誠に遺憾であり、到底承服できないことから、速やかに控訴に係る手続きを行います」というコメントを出しました。

北海道 鈴木知事「安全性の確保が大前提」
北海道の鈴木知事は個別の司法判断についてコメントは控えるとしたうえで「原子力発電は安全性の確保が大前提で、再稼働については原子力規制委員会による厳正な審査・確認が大変重要だ」と述べました。

泊村 高橋村長「原子力規制委員会による審査を注視」
北海道電力・泊原子力発電所が立地する泊村の高橋鉄徳村長は、NHKの取材に対し「泊原子力発電所は再稼働についての原子力規制委員会による審査が継続中であり、引き続き状況を注視していく。北海道電力には審査に真摯(しんし)に対応するよう求めていきたい」と話していました。

岸田首相「再稼働は地元理解得ながら 従来と変わらず」
岸田総理大臣は31日夜、総理大臣官邸で記者団に対し「民事訴訟の判決に政府の立場からコメントすることは控えなければならない」と述べました。そうえで「原子力発電所の再稼働は、安全第一で、原子力規制委員会の新規制基準に基づいて安全が確認されたものを地元の理解を得ながら進めていく。これは従来と変わっていない」と述べました。

木原官房副長官「再稼働進める政府方針に変わりなし」
木原官房副長官は記者会見で「判決は承知しているが、本件は民事訴訟だ。国が訴訟の当事者ではないので、コメントは差し控えたい」と述べました。そのうえで「原子力規制委員会が新規制基準に適合すると認めた原子力発電所は、その判断を尊重し、地元の理解も得ながら再稼働を進めるという政府の方針に変わりはない」と述べました。

立民 泉代表「原発に依存しない取り組みを」
立憲民主党の泉代表は記者団に対し「判決は非常に重たいものだ。北海道民の電力の安定供給という意味では、さらなる再生可能エネルギーの開発や、省エネの取り組みの推進など、原子力発電に依存しない取り組みを進めていかなければいけない」と述べました。

共産党 小池書記局長「原発ゼロを後押しする重要な司法判断」
共産党の小池書記局長は記者会見で「非常に重要な判決だ。泊原発は、10年にわたり、3基すべてで運転を停止しており、北海道電力は直ちに廃炉の作業に入るべきだ。安定的なエネルギーの自給に向け、再生可能エネルギーや省エネルギーに本格的に踏み出すべきで、今回の判決は、原発ゼロの流れを後押しする重要な司法判断になる」と述べました。

専門家「審査に迅速に対応を」
北海道にある泊原子力発電所について、札幌地方裁判所が津波対策が不十分だとして、原発を運転しないよう命じる判決を言い渡したことについて、原発の耐震性に詳しい京都大学の釜江克宏特任教授は「福島第一原発事故を踏まえると、判決の理由が津波対策が不十分だからというのは理解できる。防潮堤は津波を防ぐ非常に重要な設備なので、当然、最新の知識や情報をもとに備えることが大事だ」と話していました。
そのうえで「北海道電力は今回の裁判で説明不足だった。今後は、原子力規制委員会の審査に迅速に対応し、より安心安全のための対策を講じるとともに、審査で決まったことなど裁判の場でも説明することが重要だ」と指摘していました。

原発訴訟 過去の司法判断
原子力発電所をめぐって裁判所が住民側の訴えを認めたケースはこれで11件となり、11年前の福島第一原発事故の後では9件目です。
原子力発電所の運転停止や設置許可の取り消しを求める訴えは、昭和40年代後半から各地の裁判所に起こされましたが、「具体的な危険があるとはいえない」などとして退けられてきました。
平成15年に福井県の高速増殖炉「もんじゅ」をめぐる裁判で、名古屋高裁金沢支部が国の設置許可を無効とする判決を言い渡し、これが住民側の訴えを認めた初めての判決でしたが、最高裁で取り消されました。
平成18年には、金沢地裁が石川県の志賀原発2号機の運転停止を命じる判決を言い渡しましたが、高裁で取り消されました。
一方、平成23年に福島第一原発の事故が起きたあとは住民側の訴えを認める司法判断が増えています。
平成26年には、福井地裁が福井県の大飯原発3号機と4号機の運転停止を命じる判決を言い渡しましたが、高裁で取り消されました。

また、運転停止を命じる仮処分の決定も相次ぎ、福井県の高浜原発3号機と4号機では平成27年に福井地裁、平成28年には大津地裁が2度にわたって運転停止を命じました。
関西電力は平成28年3月、大津地裁の1回目の決定が出た際に運転中だった3号機の原子炉を停止させ、司法の判断で運転中の原発が停止した初めてのケースとなりました。
その後、運転停止の決定は高裁で取り消され、高浜原発3・4号機は再び運転を始めました。
また、愛媛県の伊方原発3号機では平成29年とおととし1月に広島高裁が2度、運転停止を命じる仮処分の決定を出しました。
2つの決定はその後、別の裁判官の判断で取り消され、伊方原発3号機は去年12月に運転を再開しています。
おととし12月には大阪地裁が、大飯原発3号機と4号機の国の設置許可を取り消す判決を言い渡しました。
設置許可に関して住民側の訴えを認めた判決は、平成15年の高速増殖炉「もんじゅ」をめぐる判決以来2件目で、福島第一原発の事故後、初めての判断でした。
国は控訴しています。
去年3月には、茨城県にある東海第二原発について、水戸地裁が原発事故が起きた際の避難計画の不備を理由に再稼働を認めない判決を言い渡し、住民側と事業者側の双方が控訴しています。


泊原発の運転差し止め命じる 廃炉は認めず 札幌地裁
                        産経新聞 2022/5/31 15:08
北海道電力泊原発1~3号機(泊村)で事故が起きれば生命や身体の安全が脅かされるとして、道内の住民ら約1200人が北海道電に廃炉や運転差し止めを求めた訴訟の判決が31日、札幌地裁であり、谷口哲也裁判長は北海道電に運転差し止めを命じた。廃炉については住民側の請求を退けた。
裁判では、原発の敷地内や周辺海域に活断層が存在するか ▽防潮堤で津波に対する安全性が確保されているか-などが主要な争点になった。
原告側は「北海道電が考慮していない活断層がある」とし、防潮堤の地盤の液状化など津波への備えも不十分だと主張。一方、北海道電は「地震や津波に対して十分な安全性が確保されている」として請求棄却を求めていた。
平成23年11月に住民ら約600人が提訴。24(⇒2012)年11月に、さらに約600人が追加提訴していた。

泊原発は全基が停止中。25(⇒2013)年7月、福島第1原発事故の教訓を踏まえて策定された原発の新規制基準が施行されるのと同時に、北海道電は原子力規制委員会に再稼働に向けた審査を申請し、現在も審査が続いている。
規制委は昨年7月、泊原発3号機の審査会合で、敷地内の断層は「活断層ではない」とする北海道電の主張を了承。北海道電はこれを踏まえて追加書面を提出する意向を示したが、谷口裁判長は審理を打ち切り、双方が最終準備書面を提出せずに結審していた。
静岡地裁でも弁護士らが中部電力浜岡原発3~5号機(静岡県御前崎市)の廃炉を求めて訴訟を起こしており、係争中。


「津波対策不十分」 泊原発の運転差し止め命じた札幌地裁
                            産経新聞 2022/5/31
北海道電力泊原発1~3号機(北海道泊村)を巡り、道内の住民ら約1200人が北海道電に廃炉や運転差し止めを求めた訴訟の判決で、札幌地裁(谷口哲也裁判長)は31日、津波対策が不十分だとして、現在定期検査中の3基の運転差し止めを命じた。平成23年3月の東京電力福島第1原発事故後、運転差し止めを命じる判決は3例目。初の司法判断となった廃炉の請求は棄却した。
谷口裁判長は、泊原発には福島第1原発事故の教訓を踏まえて25年に策定された、原発の新規制基準を満たす防護施設(防潮堤)が「存在していない」と指摘。原発敷地内や周辺海域に活断層が存在するかといった他の争点については「判断するまでもない」とし、半径30キロ以内に住む原告ら44人には「津波による事故で人格権を侵害される恐れがある」とした。
一方、原告側が求めた廃炉については「必要であるとする具体的な事情はない」として認めなかった。

訴訟は23(⇒2011)年11月に起こされた。泊原発は全基が停止中で、規制委が再稼働に向けた審査を続けている。判決は訴訟の審理を打ち切る形で出されたが、これについて地裁は「(北海道電が)主張、立証を終える時期の見通しが立たない」とした。
福島第1原発事故後の訴訟では、福井地裁が26(⇒2014)年5月に関西電力大飯原発3、4号機(福井県)、昨年3月には水戸地裁が日本原子力発電東海第2原発(茨城県)の運転をいずれも認めない判決を出した。

小出裕章氏が巨大利権を手放さない原子力マフィアの実態を語る

 29日、東京・星陵会館で小出裕章氏による講演会:「破たんしている原子力ーそれでもしがみつく理由」があり、全てがウソで破たんしている原発にもかかわらず、巨大利権を手放さない原子力マフィアの実態を語るとともに、自民党政権の原発推進の真の狙いは核兵器をもつことであるとして、いくつもの証拠を上げ、核に手をかけている保守政権の戦慄すべき実態を明らかにしました。

 話はウクライナ戦争等、幅広い問題に及んだということです。
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小出裕章さんが渾身の訴え!〜「この国が戦争に落ちていくことを防ぎたい」
                      レイバーネット日本 2022-05-30
  →小出講演録 動画(2時間)

 5月29日午後、東京・星陵会館で小出裕章さんの講演会があった。テーマは「破たんしている原子力ーそれでもしがみつく理由」であったが、話は原発問題をベースに、地球温暖化問題、ウクライナ情勢、憲法と日米安保、そして私たちの生き方、たたかい方にまで及んだ。わかりやすいスライドと熱弁で、聴衆はどっぷり「小出裕章ワールド」に浸った。

 原発問題では、全てがウソで破たんしている原子力にもかかわらず、巨大利権を手放さない原子力マフィアの実態を解明した。かれらは地球温暖化・CO2削減を原発推進の理由にしているが、それがいかに科学的根拠のないものであるかを明らかにした。しかし今回の講演はそこに止まらなかった。「自民党政権の原発推進の真の狙いは核兵器をもつことである」。小出さんはいくつもの証拠を上げて、核に手をかけている保守政権の戦慄すべき現実を明らかにした。
 また、ウクライナ問題の見方を提起した。ウクライナ危機に至る歴史的流れ・背景に迫るものだった。なかでも強調したのは、「戦争は悲惨で、常に庶民が犠牲になる。その一方で大儲けする軍需産業がある」ことである。その軍需産業のトップ5企業はすべて米国だった。

 「1952年のサンフランシスコ講和条約のときに日米安保条約(軍事同盟)が発効し、非戦の日本国憲法は空文化されてしまった。その後、日本は米国の属国である。いまウクライナをきっかけに軍備拡張が声高に叫ばれている。しかし本当に必要なのは戦争そのものをなくすことではないか。そのためには軍事同盟を廃止すること、戦争で儲ける軍需産業を廃絶することだ。私たちがウクライナから学ぶことはそれだと思う」。

 最後は厳しい現実の話になった。「しかし今や安保条約を解消しようという声は日本人全体の1%になってしまった。私もその1%の人間だが、会場のみなさんはどうですか?」と問うと、共感の拍手が起きた。「たいへん厳しい状況だ。でも夏に選挙があるし、なんとしても自民党を倒さなくてはいけない。踏ん張っていこうではないか。この国が戦争に落ちていくことを防ぎたいと思う」と結んだ。

 2時間以上にわたる小出裕章講演は、原発と戦争をなくすために考えるヒントが満載だった。いま状況を転換するうえでも一人でも多くの人に「アーカイブ動画」を視聴してほしい。(M)

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