2020年9月1日火曜日

女川原発の県民説明会終了 広域避難計画への懸念は消えず

 女川原発2号機の再稼働に関し、福島県は8月19をもって30キロ圏の7カ所で説明会を終了させました。しかし説明が終わっても懸念は拭えず、民意をくみ取る努力も十分とは言い難いと、河北新報が総括しました
 国や東北電が規制委の審査結果や安全対策について説明し、参加者の質疑に答えましが、 課題が噴出し特に広域避難計画の実効性について批判が集中しまし
 
 自治体は机上の計画をもって万全としたいようですが、それでは地域の実情を熟知している住民を納得させるのは無理です。特にバスを主体とする避難計画に対して、住民から「全住民の輸送に必要な機材と人員を確保できるとは思えない」との指摘が出るのは当然で、その保証がなければ計画は正に絵に画いた餅になります。
 河北新報が述べているように、説明会で表面化した疑問が解消されずに「再稼働ありき」で日程をこなすことあってはなりません
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女川原発の県民説明会/広域避難計画懸念消えず
河北新報 2020年08月31日
 説明が終わっても懸念は拭えず、民意をくみ取る努力も十分とは言い難い。
 東北電力女川原発2号機(宮城県女川町、石巻市)の再稼働に関し、(福島)県は8月1~19日、原発から30キロ圏の7カ所で説明会を開いた。2号機の新規制基準への適合を認めた原子力規制委員会の審査結果や安全対策について国や東北電が説明。参加者の質疑に答えた。
 説明会の内容は村井嘉浩知事が再稼働を認めるか否かを判断する「地元同意」の重要な材料となるが、課題が噴出した。特に参加者の批判が集中したのは重大事故を想定した広域避難計画の実効性だ。

 計画は政府が6月に了承した。説明会があった女川、石巻、東松島、南三陸各市町に登米市、涌谷町、美里町を加えた7市町の原発30キロ圏に住む計約20万人が対象。マイカーやバスなどを使って県内31市町村に避難する
 30キロ圏を (1)5キロ圏内の予防的防護措置区域(PAZ) (2)石巻市の牡鹿半島南部や石巻、女川両市町の離島に当たる「準PAZ」 (3)5~30キロ圏内の緊急防護措置区域(UPZ) -に区分。PAZと準PAZの住民をいち早く避難させる一方、UPZではいったん屋内退避を求めるなど段階的な避難を原則とする。

 説明会で出た問題点は多岐にわたる。PAZの住民の避難路にある国道398号は大雨や高潮で通れなくなることが多く、地元で別の避難道路整備を求める声が根強い。準PAZでは陸路と海路の位置関係で原発に近づく形での避難を強いられる。重大事故と台風などが重なる複合災害の発生時や交通渋滞への対応など、確実な避難の実現には疑問符が消えない。

 計画を策定した内閣府の担当者は「訓練を通じて実効性を高める」と述べたが、東日本大震災を経験した住民にとって「机上の考え」にしか映らない。「災害時に全住民の輸送に必要な機材と人員を確保できるとは思えない」との参加者の指摘は重い。
 説明会の出席状況は低調だった。新型コロナウイルス感染拡大に加え、お盆を挟む日程が影響したとみられる。県は定員を計2000人に設定したが、参加者は4割弱の計757人だった。県は動画配信もしており、追加開催の予定はないと言う。不参加の住民への伝達を含め、計画の周知という宿題は残されたままになっている。
 説明会最終日の19日には女川町議会の原発対策特別委員会が再稼働を求める陳情を採択した。9月は女川、石巻の市町議会と県議会の定例会があり、重大局面を迎える。
 東北電は安全対策工事を終える2022年度以降の再稼働を目指す。説明会で表面化した疑問が解消されずに「再稼働ありき」で日程をこなすことはあってはならない。県民の多くが納得するような進め方をなお探るべきだ。