2022年11月14日月曜日

浜岡原発の安全対策4000億円 それで再稼働できるのか?

  FNNプライムオンラインに「安全対策4000億円 浜岡原発は再稼働できるか?」という記事が載りました。タイトルの意味は、浜岡原発は防潮壁の構築と発電設備の補強に4000億円掛かると見込んでいますが、それだけ掛けて本当に稼働することが出来るのかという率直な疑問です。

 浜岡原発は再稼働に必要な安全工事に4000億円が掛かりますが、これは別に突出した額ではなく、電力各社の合計は19年の時点で4兆8千億円に達しています(下表参照)。
 問題はそれらの費用は原発の配管補強などのいわば周辺機器に関するものであって、原子炉本体や格納容器本体の補強は不可能なため、建設当初のものをそのまま使うしかありません。
 それだけでなく、既にテストピースを使い切っているので原子炉本体の強度(脆性遷移温度など)を正確に把握することが出来ないまま再稼働に踏み切っているのが現状です。
 そんな風に再稼働は危険であるのに加え、原発は海水暖め器であり且つ脱CO2でもないので、地球温暖化防止に逆行するものです。

 海外に比べて日本で再生エネの普及が遅れているのは、電力網を原発用に確保して再生エネ用に使うことを妨げていることと、日中しか発電しない太陽光発電については主力電源と見做していないからです。それは海外のように大規模の蓄電池システムを設置(直流⇒交流変換設備を含む)すれば解決できることで、原発の安全対策(補強)工事に使う費用をそれに回せば直ぐに解決したのでした。

← 日経新聞 2019-07-09


           ~~~~~~~~~~~~~~~~~~

安全対策4000億円 浜岡原発は再稼働できるか?【静岡発】
                    FNNプライムオンライン 2022/11/13
太平洋に面した静岡県の浜岡原発は南海トラフ地震で津波の襲来が予想される。東日本大震災の直後に政府の要請で運転を停止し、11年間とまったままだ。中部電力では高さ22mの防波壁を作るなど4000億円をかけて安全対策をしているが、果たして再稼働はできるのだろうか。
【画像】↓ 再稼働めざす静岡・浜岡原発の津波対策
https://www.fnn.jp/articles/gallery/441222?utm_source=headlines.yahoo.co.jp&utm_medium=referral&utm_campaign=partnerLink&image=2 

燃料費が高騰 政府の原発方針に変化
ウクライナ情勢などによる燃料費の高騰は、エネルギー自給率の低い日本にとって影響が大きい。経済産業省・資源エネルギー庁によると、2019年度の日本のエネルギー自給率は12.1%で、OECD(経済協力開発機構)に参加している36カ国のなかでも35位と低い。
岸田首相:「安全性の確保を大前提とした運転期間の延長など、既設原発の最大限の活用
2022年8月 政府は将来的な電力の安定供給に向けて、新たな原発の建設や原発の運転期間延長を検討する方針を打ち出した。2011年の東日本大震災の東京電力・福島第一原発の事故の後、「原則40年・最長60年」と定めた規定を見直し、60年を超えても運転できるようにする考えだ。

2基の再稼働めざすも… 
エネルギー政策の転換が示唆されるなか、静岡県内で注目されるのが「浜岡原発の再稼働」だ。
浜岡原発では5つの発電設備のうち1号機と2号機は運転を終了し、廃炉作業が進められている。3号機(1987年運転開始)・4号機(1993年運転開始)・5号機(2005年運転開始)は、福島第一原発の事故のあと政府の要請で運転を停止し、11年が経過している。
3号機と4号機は現在、再稼働に向け国の新しい規制基準による安全審査が進められている。
中部電力 浜岡地域事務所・榊原浩之 専門部長:「福島の事故のようなことは二度と起こさないという決意のもと、安全性対策工事や所員の力量向上に努めてきました

22m防波壁など安全対策に4000億円
中部電力が総額4000億円をかけ行っている安全対策。その1つが「防波壁の設置」だ。
中部電力 浜岡地域事務所・榊原浩之 専門部長:「浜岡原発には内閣府のモデルで19mの津波が来るという評価があります。それをもとに評価したところ、(最大)21mくらいの津波が来るということで、その津波を食い止めるため、敷地の中に入れないため、22mの防波壁を設置しています
防波壁は高さ22m・総延長1.6km。津波の衝撃に耐えられるよう地下10mから30mの硬い岩盤に打ち込まれ、特殊な鋼材で補強されている。
しかし中部電力は、2022年7月 国に対して巨大地震で発生する最大の津波の高さの想定を、現在の防波壁より高い22.7mと報告した。
中部電力 浜岡地域事務所・榊原浩之 専門部長:「前提条件を厳しくして、1000通り以上解析して出てきた数字です。22.7mという数字は規制委員会に提示して、現在審査を受けている状況です

福島事故の原因“電源喪失”を防ぐために
福島の事故では地震や津波により複数の電源が喪失して、大規模な事故に繋がった。
こうした事故に備えるため浜岡原発では、津波の影響が心配されない海抜40mの高台に、緊急時に使える発電機を設置している。
中部電力 浜岡地域事務所・榊原浩之 専門部長:「外部電源が喪失した場合、まずは原子炉建屋の中にある非常用ディーゼル発電機で電源を供給することになりますが、非常用ディーゼル発電機が万一使えなくなった場合、(高台の)ガスタービン発電機が自動起動して非常用機器に電源を供給することになります
ガスタービン発電機は全部で6台あり、最低7日間は発電可能だ。緊急時でも原子炉に注水する為のポンプを起動させ大事故を防ぐ。
原子力規制委が視察 7割の項目が未審査
こうした安全対策について、2022年8月 審査を行っている国の原子力規制委員会の委員による視察が行われた。
原子力規制委員会・山中伸介 委員:「(防波壁の)構造そのものは見た感じですが、非常に堅牢な構造をとらえている。鉄筋の太さも太く安定的な構造だという印象は持ちました。新しい取り組みについてよく把握できました
ただ、審査は長期化している。審査開始から8年半がたったが審査が進んだのは、10項目中3項目にとどまっている

周辺市民の意識は変化
そして審査に通った場合にも、再稼働には地元の同意が必要だ。
再稼働の是非について、原発がある御前崎市周辺の掛川市・菊川市・牧之原市が、市民を対象に調査している。「安全が確認できれば稼働」か「廃炉または停止」かを尋ねた結果を、東日本大震災直後の2011年~2013年と2022年で比較した。
3市とも「安全が確認できれば稼働」と答えた人の割合が過去の調査時より増え、菊川市では「廃炉または停止」と同率で並び、牧之原市では「安全が確認できれば稼働」が「廃炉または停止」を逆転した。
一方、浜岡原発が立地する御前崎市は「浜岡原発は意識調査にそぐわない」として、調査項目に加えていない。御前崎市民に聞いた。
御前崎市民::「(再稼働に)賛成ですね。津波対策をすれば、なんとかできると思う
別の市民:「何とも言えないね。電気もほしいし、怖い部分(不安)もある
別の市民:「反対です、海が汚れたりするので。福島のこともあるので

全国では6カ所の発電所の10基が再稼働
中部電力は、今後も国の審査に真摯に対応していくとともに、安全対策などの取り組みを地域や社会に積極的に発信し、再稼働について理解を求めたいとしている。
中部電力 浜岡地域事務所・榊原浩之 専門部長:「原子力発電所の再稼働を含めて、中長期的に原子力が社会に貢献できるように、緊張感をもって取り組んでいきたい」
資源エネルギー庁によると、2022年9月現在、再稼働している原子炉は10基、原子力規制委員会から設置変更許可が出た原子炉が7基、浜岡原発3・4号機のように審査中は10基だ。
国のエネルギー政策の転換で重要度を増す浜岡原発の今後。私たちが将来にわたり安心して生活できるよう、迅速な審査と丁寧な説明が求められている。(テレビ静岡)