2022年11月30日水曜日

政府の原発活用方針 急がれる「バッグエンド」の議論

  産経新聞が掲題の記事を出しました。岸田首相は原発再稼働の推進や次世代型原発の新増設の方針を打ち出しまし。それは大きな問題ですが、使用済み核燃料や、それを再処理した後に残る核のごみをどう処分するのかという、「バックエンド」と呼ばれる原発後処理の議論は、原発稼働後 既に半世紀に及んでいますが遅々として進んでいません。

 このまま処分地が決まらなければ、行き場を失った核のごみが積み上がり、いずれ原発運転できなくなります。原子力ムラはこの面で総力を上げるべきです。
 一方、処分地選定に向けた第1段階の文献調査が進む北海道寿都町では、調査の受け入れをめぐって賛成派と反対派の対立が深まり、ほぼ月に1度のペースで国や原子力発電環境整備機構(NUMO)の担当者を交え「対話の場」が開かれて、住民への理解を求める活動が続けられていますが、溝が埋まる気配はなく分断が進んでいるということです。
 これに対して、村議会で誘致請願を採択し神恵内村では、対照的村民の理解が進んでいるということです。
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政府の原発活用方針 急がれる「バッグエンド」の議論
                           産経新聞 2022/11/29
電力需給の逼迫(ひっぱく)を克服するため、岸田文雄首相は原発再稼働の推進や次世代型原発の新増設の方針を打ち出したが、原発で使い終えた使用済み核燃料や、それを再処理した後に残る高レベル放射性廃棄物(核のごみ)をどう処分するのか。「バックエンド」と呼ばれる原発後処理の議論は遅々として進んでいないのが現状だ。
再び原発が動き出せば、使用済み核燃料は確実に増える。国は原発活用に方針転換した以上、最終処分についても同時並行に議論を深める必要があるが、とりわけ核のごみについてはこれまでも議論が先送りにされてきた経緯がある。
資源エネルギー庁によると、日本には現在、約2500本の核のごみが青森県六ケ所村と茨城県東海村に一時保管され、全国の原発敷地内にも再処理前の使用済み核燃料が約1万9千トン保管されている。国の法律によって貯蔵期限は30年から50年と定められており、既に貯蔵能力の8割に達したという試算もある。
もし、このまま処分地が決まらなければ、行き場を失った核のごみが積み上がり、将来的に原発を運転できなくなる可能性もある。日本で商用原発の運転が始まってから半世紀余り。いまだ最終処分のメドさえつかない状況を「トイレのないマンション」と揶揄されるゆえんでもある。

一方、処分地選定に向けた第1段階の文献調査が進む北海道寿都町では、調査の受け入れをめぐって賛成派と反対派の対立が深まり、分断が進む。昨年10月には任期満了に伴う20年ぶりの町長選が行われ、受け入れを決断した片岡春雄町長が再選したが、村議会で誘致請願を採択し、村民の理解が進む神恵内村とは対照的だ。
寿都町ではほぼ月に1度のペースで国や原子力発電環境整備機構(NUMO)の担当者を交えた「対話の場」が開かれ、住民への理解を求める活動が続く。ただ、溝が埋まる気配はなく、片岡町長は調査終了後に住民投票を実施し、再び民意を問う意向を示している。
分断の溝を埋める手立てはないのか。この問題の技術的な部分に長年関わってきた北海道大大学院の佐藤努教授(廃棄物処分工学)は「文献調査は対話活動の一環であり、対話は双方にとってメリットがないと成り立たない」と指摘。「NUMO側のメリットだけではなく、今住んでいる土地の地下がどうなっているのか、どんな成り立ちで町ができたのか、わが町に鉱物資源はあるのかなど、多くの住民が知りたい情報を提示して関心を持ってもらうとともに、その情報を得るメリットを感じてもらえるように努めるべきだ」と提言する。