周囲を強い風が安定的に吹く海に囲まれている日本は洋上風力発電に適しています。日本は2030年には原発10基分(1000万kwh)に相当する洋上風力発電装置を設置する計画です。
全国トップクラスの風力発電地帯 秋田県の秋田港沿いには300を超える風車が並びます。秋田港・能代港などの洋上風力の導入によって生まれる雇用は、約3万7000人。経済波及効果は3800億円を超えるとしています。
その一方で三重県鳥羽市の答志島では7年前の2015年、洋上風力発電の計画が持ち上がりましたが漁師の反対で実現しませんでした。しかし2010年ごろから洋上風力を導入している長崎県の五島列島では、これまでのところ漁業への悪影響は確認されておらず、最近では風車の土台部分が漁礁となっている例も見つかっています。
そうしたプラス要素もあり、このところ再生エネが注目されて洋上風力発電の導入に向けた動きが活発化しているなかで、答志島の沖合も再び有力な候補地と見られているということです。東海テレビが報じました。
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8年後に“原発10基分”目標の風力発電…島国ニッポン『洋上風力発電』が切り札となるか 漁師たちには葛藤
東海テレビ 2022/11/19
太陽光発電など再生可能エネルギーの導入が進む中、海の上での風力発電「洋上風力発電」が注目を集めている。導入による経済効果に沸く地域がある一方、環境など電力以外の問題で導入に慎重な地域もある。
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■進む「洋上風力発電」全国トップクラスの“風力発電地帯”の秋田
全国トップクラスの風力発電地帯、秋田県。秋田港沿いには300を超える風車が並ぶ。発電量も理論上は県内の全世帯分をまかなえるという(最大64万8000kW発電)。
秋田洋上風力発電の岡垣啓司(おかがき・けいじ)社長:「今こちらにありますのが、能代港で設置済みの風車、風力発電所となります」
岡垣社長:「洋上風力のメリットとしては、やはり強い風が安定的に吹くこと」
風力発電のカギとなる、“安定した強い風”が得られる海の上。その条件にあう秋田港と能代港の沖合では、今はまだ稼働していないが、羽根の長さ50メートル、陸上と比べ1.5倍もの発電が可能な巨大な風車の建設が進んでいる。
2022年12月には、2か所合わせて33基の風車が並び、国内最大級の洋上風力発電所が運転を開始する予定だ。
■2030年に原発10基分の風力発電目指す 洋上風力発電は「切り札」
2020年度の、日本の再生可能エネルギーの発電比率は19%。政府は2030年には、これを36%から38%に引き上げ、主力電源とすることを目標としている。
中でも風力発電は0.9%から、5%(原発10基分に相当)に増やす方針だ。
岡垣社長:「再エネの主力電源化というのは、気候変動問題の解決のためには避けられないと考えていますので、その切り札が洋上風力。四方を海に囲まれていますので、日本で洋上風力が将来的には基幹電源となるように。」
安定した強い風が得られる、海に囲まれた“島国ニッポン”。洋上風力発電は、その切り札として期待がかかっている。
■秋田県の試算で経済波及効果は3800億円超に 水中ドローン教室始めた企業も
高橋秋和建設の斎藤弘樹常務:「潜っていって、水の中にある施設を異常・変状があるかどうかの点検ですね」
洋上風車の稼働で必須となる、海中の土台部分や海底に敷く送電ケーブルの保守・点検をしている。
この会社では、そこに「水中ドローン」を活用できると目をつけ、社員全員で操縦士の資格を取得しただけでなく、2022年4月には敷地にプールまで建設した。一般向けの「水中ドローンスクール」を開講するなど、飛び込んできた「ビジネスチャンス」に意気揚々だ。
斎藤常務:「(洋上風力運転開始に向けて)とにかく実績積みたいなと思っています。『地元』っていうところは外せないと思うので」
県の試算では、秋田港・能代港などの洋上風力の導入によって生まれる雇用は、約3万7000人。経済波及効果は3800億円を超えるとしている。
■「売電益で橋を架けようかと」…離島の計画はとん挫 反対した漁師たちの不安
洋上風力発電には、電力以外の魅力もある。7年前の2015年、計画が持ち上がるも、白紙となった三重県鳥羽市の答志島(とうしじま)。穏やかで美しい海に面した離島だ。
鳥羽磯部漁協の組合長 永富洋一さん:「この5000~6000メートル沖にこう並らんどったら『いい景色やな』って思わへん?風車が。私がいたときにやっとったら、ずらっと並らんどるわ、40基」
島の沖合に風車の建設が計画された当時、その中心にいた。
永富組合長:「将来また、そういうことがあったらあかんと思って、ちゃんと残してある。(建設予定地は)このあたりや。(沖から)だいたい3マイル」
人口2000人弱の答志島。主な産業の1つは漁業。
しかし離島のため、水揚げした魚は本土への輸送が必要だ。夜間の救急患者も本土への搬送が必要。
洋上風力発電を導入し、電気を売った利益で“本土との橋”を架けることで、長年の課題を一気に解決する計画だった。
しかし、島の一部の漁師は頑なに反対した。
永富さん:「島の中で反対する人間が、反対運動起こしてさ…。ほいで、おジャンになったっちゅうか、フタしたわけや。『磯場を、漁場を悪くする』って」
■漁師「子供のために橋はほしい」…島の未来と漁業への不安で葛藤する離島
懸念される海への影響…。2010年ごろから洋上風力を導入している長崎県の五島列島では、これまでのところ漁業への大きな悪影響は確認されていない。
最近では風車の土台部分が漁礁となっている例も見つかっている。秋田県での導入の際にも、漁師らへの説明には五島列島の事例が紹介されたという。
三重県は2022年度、洋上風力の実現が可能かを調査する事業者を募集。五島列島を職員が視察するなど、導入に向けた動きが活発化していて、答志島の沖合も有力な候補地とみられている。
この島の未来と漁業への不安との間で、漁師たちは葛藤している。
漁師の男性(30代):「魚も橋かかっとると、もっと売り場も増えたりするやろうけど…。賛否両論ありますけど、とりあえず子供らのために橋はほしいですね」
漁師の男性(50代):「風力の柱が建つとさ、漁礁的な感じになってまた魚が集まるかもわからん。(一方で)年配の漁師さんらはな、やっぱり抵抗あると思う。そんな洋上に、自分らの漁場に、大きな風力のあんなんが建てばさ、船で走るんも邪魔で漁場とられるって。どっちの気持ちもわかるしさ。もしやるとなったら、とことん答志島の漁師さん、答志島で話しあって決めんといかんけど…」
永富さん:「今の流れはな、今の世界情勢の中では自然な流れやと思う。当時は早かったけど。今、もし若いもんがまたやろうとしたなら、そういうアドバイスはしたいと思う」
2022年9月16日放送