2022年11月21日月曜日

避難検証委員会456の問題点を指摘 被爆量の試算が抜けたまま閉じられた

 柏崎刈羽原発を巡る新潟県独自の3つの検証の一つ、避難検証委員会はおよそ5年をかけて456の論点(問題点)をまとめました。
 原発を再稼働することが許されるかどうかは、避難時に住民が最大どれだけの被曝をするかによって判断されます。避難時の被曝量がいくらまでなら許されるかについてはそれなりの議論が必要ですが、少なくとも放射能の放出状況・その時の風速及び風向・避難所要時間等に応じた被爆量が試算されていなければ判断のしようがありません。
 検証委委員の一人 大河陽子弁護士は、現在は避難に伴う問題点が456点リストアップされた段階であって、まだ「一番大事な要素」は抜け落ちていると指摘しています。
 住民がどんなに被ばくしても構わないというのであればそもそも迅速な避難自体が不要ということになるので当然の指摘です。被爆量を含めて県には456点の問題点を一つひとつ解決していく責任があります。
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論点456の検証「一番大事な要素が抜けたまま委員会を閉じてしまった」原発避難検証委員からの指摘
                         BSN新潟放送 2022/11/16
東京電力柏崎刈羽原発を巡っては新潟県独自の3つの検証の一つ、『事故が起きた際の避難』について検証委員会がおよそ5年をかけて議論し、456の論点を取りまとめました。避難検証委員会の委員から話を聞き、残された課題などをシリーズでお伝えします。今回話を聞いた弁護士は委員会の検証について「一番大事な要素が抜け落ちた」と指摘しています。
今回話を聞いたのは、弁護士の大河陽子委員です。
【写真を見る】論点456の検証「一番大事な要素が抜けたまま委員会を閉じてしまった」原発避難検証委員からの指摘

大河陽子委員】:「県が第三者委員会というか、県外の委員を呼んで避難計画を検証したところは初めての取り組みだと思うので、その点は意義があると思います。いろんな委員の立場から意見を言いましたので外部のそれぞれの知見を持つ委員の観点、目から批判できたとは思います。ただ、不十分な点もまだまだたくさんあるとは思っています。」

大河委員は避難のときに被ばくを避けられるのか検証ができていないと課題を指摘します。今回の検証委員会では放射性物質がどのように拡散し、どの程度被ばくをする可能性があるのかというシミュレーションが行われていません
これに対し、大河委員は「一番大事な要素が抜け落ちたまま委員会を閉じてしまった」と話しました。そのうえで、今後、放射性物質拡散シミュレーションの専門家を集めた新たな委員会の設置などが必要だとしています。

大河陽子委員】:「放射性物質の拡散状況と住民の方の避難の動きを複合したシミュレーションも何もできていないというところがあって、じゃあこの避難計画で被爆せずに避難できるのかというところは何ら検証できていません。福島第一原発事故で放出された放出量、放出核種が放出された場合に新潟ではどういった放射性物質の拡散状況になって住民の方々の避難の行動がどのようになるのか。そういった場合の被ばく量、被ばく低減量を算定するというところが一つ必要なんじゃないかという風には思います。」

また、柏崎刈羽原発の再稼働のハードルについても聞きました。大河委員は検証報告書の提出だけでは再稼働はできないのではと話します。

大河陽子委員】:「この避難計画については検証報告書を出しただけでは、全然再稼働できる状態ではありません。この検証報告書は避難計画の欠陥みたいなところをあげているものにすぎないし、さらに被ばくのシミュレーションも抜け落ちているという、重要なところがすっぽり抜けている検証報告書になっています。これはまだまだ序盤の段階の検証報告書であって、これから県が専門家を集めて、住民を集めて、委員会を開いて被ばく量について十分な議論とかをして納得を得て、県民の皆さんからの意見を踏まえてさらに改定して、というような段階を経て、安全に避難をできる、あとは住民の皆さんが納得できる避難計画ができてからの再稼働になると思うので、まだまだ時間がかかるものだという風に思っています。」

去年、茨城県の東海第二原発に対する運転差し止め訴訟では避難計画の不備などを理由に水戸地裁は運転を認めない判決を下しています。仮に再稼働するのであれば『実効性ある避難計画』の策定が求められるとしています。

大河陽子委員】:「普通原発の安全と言ったら、敷地内の建物の安全かと思われがちですけれども、原発事故を起こしたら敷地外に多大な被害をもたらすから、敷地外の避難計画まできちんと安全であることが確認されないといけないと。そうじゃないと原発が安全だとは言えない、というような判断を裁判所はされているので、安全な原発を再稼働するのであれば、避難計画で住民の方が被ばくをしないような計画が立っていることを確認できなければ、再稼働できないという風になると思います。」