2019年9月20日金曜日

原発事故 東電旧経営陣に無罪判決「津波の予測可能性なし」

 東電福島原発事故を巡り、業務上過失致死傷罪で強制起訴された東電の勝俣恒久元会長ら旧経営陣3被告の判決で、東京地裁は19日、3人に無罪を言い渡しました。求刑はいずれも禁錮5でした。
 
 公判の争点は、海抜10mの原発敷地を超える高さの津波を予見し、対策を取ることで事故を防げたか」でしたが、判決は
(被告らは)津波が来る可能性を指摘する意見があることは認識していて、予測できる可能性が全くなかったとは言いがたい。しかし、原発の運転を停止する義務を課すほど巨大な津波が来ると予測できる可能性があったとは認められない」というものでした。
 
 検事役の指定弁護士らは、「国の原子力行政を忖度した判決だといわざるをえない。~ 原発には絶対的な安全性までは求められていないという今回の裁判所の判断はありえない」と述べ、判決の中で2002年に国の地震調査研究推進本部が公表した巨大地震の予測「長期評価」は信頼性に疑いが残ると指摘したことに対して、「裁判所が科学的な問題についてあのような踏み込んだ判断をしていいのか」と批判しました。
 
 告訴団の一員海渡雄一弁護士は、判決が政府機関の地震予測の信頼性を疑問視したことに触れ、「証人尋問の結果とは全く反する。都合の良い部分だけをつまみ食いした」批判し、「これほどひどい判決が出るとは予想していなかった。絶対に取り消されるべきだ」と語気を強めました
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原発事故 東電旧経営陣に無罪判決「津波の予測可能性なし」
NHK NEWS WEB 2019年9月19日 
福島第一原発の事故をめぐり東京電力の旧経営陣3人が強制的に起訴された裁判で、東京地方裁判所は、「旧経営陣3人が巨大な津波の発生を予測できる可能性があったとは認められない」として、3人全員に無罪を言い渡しました。
無罪を言い渡されたのは、東京電力の勝俣恒久元会長(79)、武黒一郎元副社長(73)、武藤栄元副社長(69)の旧経営陣3人です。3人は福島第一原発の事故をめぐって検察審査会の議決によって業務上過失致死傷の罪で強制的に起訴され、いずれも無罪を主張していました。
判決で、東京地方裁判所の永渕健一裁判長は、裁判の大きな争点となった原発事故を引き起こすような巨大津波を予測できたかについて「津波が来る可能性を指摘する意見があることは認識していて、予測できる可能性が全くなかったとは言いがたい。しかし、原発の運転を停止する義務を課すほど巨大な津波が来ると予測できる可能性があったとは認められない」と指摘しました。
そのうえで、「原発事故の結果は重大で取り返しがつかないことは言うまでもなく、何よりも安全性を最優先し、事故発生の可能性がゼロか限りなくゼロに近くなるように必要な措置を直ちに取ることも社会の選択肢として考えられないわけではない。しかし、当時の法令上の規制や国の審査は、絶対的な安全性の確保までを前提としておらず、3人が東京電力の取締役という責任を伴う立場にあったからといって刑事責任を負うことにはならない」として無罪を言い渡しました。
 
判決 法廷内では
     (中 略)
 
指定弁護士「原子力行政そんたくした判決」
検察官役の指定弁護士5人は判決のあと会見を開き、控訴するかどうかについては、これから検討する意向を示しました。
会見で、石田省三郎弁護士は「国の原子力行政をそんたくした判決だといわざるをえない。原子力発電所というもし事故が起きれば取り返しがつかない施設を管理・運営している会社の最高経営者層の義務とはこの程度でいいのか。原発には絶対的な安全性までは求められていないという今回の裁判所の判断はありえないと思う」と述べました。
また、判決の中で、平成14年に国の地震調査研究推進本部が公表した巨大地震の予測=長期評価は信頼性に疑いが残ると指摘したことに対して、「裁判所が科学的な問題についてあのような踏み込んだ判断をしていいのかと感じた。今後、さまざまな人たちが検討の対象にすると思う」と話しました。
 
そのうえで、控訴するかどうかについては、判決の内容を精査したうえで被害者として裁判に参加している人たちとも相談するなどして判断する意向を示しました。
また、神山啓史弁護士は「われわれは十分な立証をしたと思うので、判決の内容には納得していない」と述べました。
  (後 略)
 
 
「証拠あったのに」と憤り 原発告訴団、控訴求める 東電旧経営陣裁判
時事通信 / 2019年9月19日
 東京電力の原発事故で旧経営陣3人に無罪判決が言い渡されたことを受け、事故の被害者でつくる福島原発告訴団も19日に記者会見した。団長の武藤類子さん(66)は「あれだけ証拠がありながら罪に問えないのか。裁判官は福島の被害に真摯(しんし)に向き合ったのか」と憤り、検察官役の指定弁護士に控訴するよう求めた。
 
 告訴団の一員で、被害者参加代理人として裁判を見届けた海渡雄一弁護士は、判決が政府機関の地震予測「長期評価」の信頼性を疑問視したことに触れ、「証人尋問の結果とは全く反する。都合の良い部分だけをつまみ食いした」と批判。「これほどひどい判決が出るとは予想していなかった。絶対に取り消されるべきだ」と語気を強めた。
 
 今回の裁判は、告訴団が検察審査会に申し立てたことで実現した。河合弘之弁護士は「不起訴のまま終わっていたら、すべての証拠が歴史の闇に葬られていた。白日のもとにさらされただけでも歴史的価値がある」と意義を強調した。 
 
 
指定弁護士「原子力行政を忖度」 無罪判決に憤り 東電旧経営陣裁判
時事通信 2019年09月19日
 検察官役の指定弁護士を務めた石田省三郎弁護士らは判決後に東京都内で記者会見し、「国の原子力行政を忖度(そんたく)した判決と言わざるを得ない」と批判した。控訴については「これから検討する」と述べた。
 石田弁護士は「裁判所は原発に絶対的な安全性が求められているわけではないと言った。被告3人の義務は本当に判決の言ったようなことでいいのか」と憤り、政府機関の地震予測の信頼性に合理的疑いがあると判断したことについても、「科学的な問題に介入していいのか」と疑問を呈した。
 原発事故を回避するには運転を停止するしかなかったと判断されたことについては「違和感があった」と語った。
 長期にわたった公判を振り返り、「刑事責任を科すには、合理的疑いを越えて立証しないといけない難しさはある。できるだけの論証はした」と悔しさをにじませた。神山啓史弁護士も「十分な立証をしたと思っている。個人としては納得していない」と不満をあらわにした。