2023年3月12日日曜日

国が原発回帰に舵 “再稼働”見据えた東電の取り組み・地元の思いは…

 福島原発事故の発生から3月11日で12年です。国が原発回帰に舵を切る中、柏崎刈羽原発再稼働を見据えた東電の取り組みと地元に住む人たちの思いをNST新潟総合テレビ取材しました。

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国が原発回帰に舵 “再稼働”見据えた東電の取り組み・地元の思いは… 福島原発事故から12
                       NST新潟総合テレビ 2023/3/10
東日本大震災と福島原発事故の発生から3月11日で12年です。国が原発回帰に舵を切る中、再稼働を見据えた東京電力の取り組みと地元に住む人たちの思いを取材しました。
2月22日、柏崎刈羽原発の構内にある協力企業の事務所を訪れたのは、稲垣武之所長です。
【柏崎刈羽原発 稲垣武之 所長
「会社を挙げて正門で元気な挨拶をしていただいているということで、まだお渡しできていなかった3名の方にお渡しさせていただきたい」
協力企業の社員に感謝を伝えるカードを手渡し、表彰しました。
これは去年、新たに導入した「褒める仕組み」。協力企業と円滑なコミュニケーションを図ることを目的としていて、これまで約500人を表彰してきました。
協力企業の社
「一日の始まりとしての挨拶。僕も気持ちいいですし、みんな気持ちよくなると思うので、大きな声を心がけている」
おととし、IDカードの不正使用など、テロ対策の不備が相次いで発覚し、事実上の運転禁止命令が出されている柏崎刈羽原発。
生体認証装置の導入などハード面の改善のほか、発電所の一体感を生むため、ソフト面の取り組みも進められています。
【柏崎刈羽原発 稲垣武之 所長】
「おはようございます。ご安全に」
朝6時半、原発の正門前で出勤してきた協力企業の車に声をかける稲垣所長。去年4月からほぼ毎日行っている「挨拶運動」です。
稲垣所長は毎朝30分、正門前に立ち協力企業とコミュニケーションを取ろうとしています。
【柏崎刈羽原発 稲垣武之 所長
「(テロ対策の不備では)特にリーダー層が現場の実態を把握していなかったという大きな反省があるので、私は皆さんととにかくコミュニケーションを取りたい。そして、皆さんの気持ちを理解したい」

発電所の改革、その先に見すえているのは再稼働です。
岸田首相
設置許可済みの原発再稼働に向け国が前面に立って、あらゆる対応を取って参ります」
岸田首相は去年、今年夏以降に柏崎刈羽原発6・7号機を含む7基の原発の再稼働を目指すと表明。
また、岸田内閣は2月28日、これまで最長60年としてきた原発の運転期間を、実質的に延長することを可能とする法律などをまとめた改正案を閣議決定しました。
福島第一原発の事故以降、進めてきた原発への依存を減らす政策を推進へと転換。脱炭素社会の実現などに向け、原発回帰に舵を切った国ですが、再稼働には「地元の同意」が必要です。

柏崎刈羽地域の住民が意見を交わす「地域の会」の委員に今の思いを聞きました。柏崎市で会社の経営に携わる、再稼働に賛成の立場の三井田達毅さん。
三井田達毅さん】
「現実を考えたとき、ノーリスクでハイリターンなエネルギー源はどこにもない。(原発は)ベストエネルギーとは思わないが、ベターエネルギーだとは思っている。改善しようと思う意思が独りよがりであってはいけないと思うので、『傾聴力』を東京電力には持ってほしい」

一方、反原発団体の代表を務め、再稼働に反対の立場の竹内英子さんは…
竹内英子さん】
『福島事故の教訓を(忘れない)』と枕詞のように、すべてのものに経済産業省も規制委員会もつけながら、原発推進に舵を切っているということが私は腹立たしい去年12月19日のような大雪が降れば、避難はほぼ不可能だと思う。原発を動かすことは、今は危険だろうなと思う」

稲垣所長は、地元の信頼回復は「道半ば」と感じています。
【柏崎刈羽原発 稲垣武之 所長
「発電所を極めて安全に運営し、そして地元の皆様にご迷惑をおかけしないという状況に私自身が納得しない限りは、再稼働をいくら急げと言われても、軽々に『政府の方針だから再稼働』というものではないと思っている。これは、ずっと変わっていない」

そして3月8日、事実上の運転禁止命令の解除は見通せない状況になりました。
【原子力規制委員会 伴信彦 委員】
「(不要警報の改善について)東電は暫定目標ですら達成できていない。今後、劇的な現象はおそらく見込めない」
原子力規制委員会は追加検査の進捗について、27ある検査項目のうち、ハード面だけでなく、稲垣所長がこだわってきた協力企業などとのコミュニケーションを含む6つの項目で改善が不十分だと判断しました。
【原子力規制委員会 山中伸介 委員長】
「きょう上がってきた様々な課題が(短期間で)解決されるというのはなかなか難しいところがある。(運転禁止)命令を解除することがかなり難しいだろう」

地元の信頼回復、そして追加検査への対応。再稼働を急ぐ国の動きとは裏腹に、その先行きは不透明さを増しています。