2023年3月17日金曜日

「巨大な蓄電池」役割増す揚水式、九電・佐賀の天山発電所公開

 電気をあまり使わない夜間や太陽光発電の稼働が多い時間帯に水をくみ上げてダムに戻し、必要時にそこから放水して水力発電する「揚水発電」は、余剰電力を利用してダムに貯水する「巨大な蓄電池」の役割を持っています。

 元々は大型発電所のトラブル時対応のために設置されましたが、近年は太陽光発電の発電量増加に伴い電気が余る昼間などに揚水がさかんに行われるようになり、発電の頻度は2年前に比べ4・5~5倍に増加しました。大活躍という訳です
 九電佐賀の天山揚水発電所をメディアに公開しました。
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「巨大な蓄電池」役割増す揚水式、九電・佐賀の天山発電所公開
                            産経新聞 2023/3/13
再生可能エネルギーの普及が広がる中、太陽光の発電量が増す一方で電気の使用量が減少する春は電力の需給調整が難しい季節となった。その際、需給バランスの調整役として揚水発電所の役割が増している。余剰電力で水をくみ上げることで「巨大な蓄電池」の役割を果たしており、九州電力管内では3カ所8基が稼働。九電はこのうち佐賀県唐津市の天山発電所を報道関係者に公開。運転回数は約10年前の5倍近くに増えており、九電は設備点検に力を入れている。
佐賀県のほぼ中央に位置する天山の地下には、12階建てビルに相当する天山発電所があり、標高760メートルの天山ダムから地下約500メートルにある発電電動機に水を流して発電する。電気をあまり使わない夜間や太陽光発電の稼働が多い時間帯に水をくみ上げてダムに戻し、再び発電に使用する

施設公開は定期点検に伴う稼働停止時に行われ、水量を調節する弁の周辺などを作業員が入念に点検していた。水車の内部は発電時には毎秒70トンの水が流れ、発電や揚水に使う電動機は運転回数が増えると摩耗したり亀裂が入ったりすることがあり、点検や修繕が欠かせない。
天山発電所は昭和61年に運転を開始し、2基で計60万キロワットの出力を持つ。揚水発電所は、かつて電力需要がピークになったときや大型発電所のトラブル時に対応してきたが、近年は太陽光発電の発電量増加に伴い、電気が余る昼間などに揚水がさかんに行われるようになった。
電気は需要と供給のバランスが崩れると大規模停電につながる恐れがあり、常に需給を安定させる必要がある。しかし、冷暖房の使用が減ったり、工場が稼働しない休日などは、晴天になると太陽光発電の発電量が電気の使用量を上回る場合がある。揚水発電所はこの余剰電力対策として活躍する。原子力や火力発電所に比べ規模は小さいが、調整電源として存在感を増し、「巨大な蓄電池」と言われるようになった。
天山発電所の運転実績は再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度(FIT)開始翌年の平成25年度は発電が125回、揚水が110回だったが、令和3年度はいずれも562回と4・5~5倍に増加した。起動時間が5分程度と、火力発電所(2~4時間程度)に比べ短いことも、緊急時に活用される要因となっている。九電佐賀水力事業所の川端一伸所長は「設計当初の考えをはるかに超えた範囲で運転されている。トラブルを起こさないよう、機械の状態の確認やデータの分析で異常やその兆候がないかを調べている」と語った。
九電は天山発電所のほか熊本県や宮崎県に揚水発電所を保有し、今後の開発の可能性についても検討している。(一居真由子)