2020年4月23日木曜日

巨大津波の新想定では現計画の防潮堤高さは不十分

 国の検討会新たな想定によると福島第一原発にも最大で14メートル近い津波が押し寄せるため、東電が建設を進めている高さ11メートルの防潮堤などを超える可能性があります。
 東電は、設備への影響を評価したうえで、今後の対応を検討するとしています。
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巨大津波の新想定 福島原発への影響を評価 対応検討へ 東電 
NHK NEWS WEB 2020年4月21日
国の検討会が示した日本海溝などで巨大地震が起きた場合の新たな想定では、福島第一原発にも最大で14メートル近い津波が押し寄せるとされ、東京電力が建設を進めている高さ11メートルの防潮堤などを超える可能性があります。東京電力では、設備への影響を評価したうえで、今後の対応を検討するとしています。
国の検討会の想定では福島県双葉町の南側で最大13.7メートルの津波が押し寄せるとされ、この場所は福島第一原発の敷地の北側に当たります。

現在東京電力は、原子炉建屋などに津波が浸入しないよう出入り口を塞ぐなどの工事を2021年度末の完了を目指して進めているほか、使用済み核燃料などの冷却を継続するため高台に電源車や消防車を配備するなど、大津波への対策を進めています。
一方で防潮堤については3年前に示された千島海溝での巨大地震の想定を踏まえて、敷地南側では地面をかさ上げした上に防潮堤をつくっていて、完成すると海面から11メートルの高さになります。
また北側はおよそ11メートルの高台になっていますが、今回の想定ではこれらを超える津波の可能性が示されました。
このため東京電力は、今後新しい想定を分析し設備への影響を評価したうえで、対応を検討するとしています。
また、汚染水やトリチウムなどを含む水をためているおよそ1000基のタンクは30メートル余りの高台にあるため、今回の想定でも浸水はないとしています。

専門家「想定津波の被害を評価し 冷静な対策判断を」 
日本原子力学会廃炉検討委員会の宮野廣委員長は、国の検討会が新たな津波想定を示したことについて「この高さまで津波が来るという覚悟が必要になる。廃炉作業中の福島第一原発の場合、運転中の発電所と比較すれば津波によって再び大量の放射性物質がまき散らされるリスクは低いが汚染水が流れ出たり、廃炉に使用する設備に被害が出たりする可能性がある」と指摘しました。
そのうえで「重要な問題には手を打つことが大切だというのは東日本大震災で学んだことで、今回の想定津波が来た場合にどんな被害が発生するのかを評価したうえで、投入される資源も考慮しながらポイントを絞って冷静に対策を判断していく必要がある」と話しています。


北海道、岩手に津波30メートル想定 日本海溝・千島海溝沿いM9
東京新聞 2020年4月21日
        

  最大クラスの津波発生が切迫
  東日本太平洋沿岸の広範囲で大きな津波
  津波の高さは北海道えりも町で30m弱、岩手県宮古市で30m近い
  地震・津波は自然現象で推計を超えうる

 東北から北海道の太平洋沖にある日本海溝・千島海溝沿いを震源とした地震の想定を二十一日、内閣府の有識者会議が公表した。最大規模はマグニチュード(M)9クラスとなり、太平洋沿岸の広範囲に津波が到達。北海道や岩手県の一部は高さ約三〇メートルになる。発生は「切迫した状況」とした。岩手を除く六道県の浸水図も示し、庁舎に被害が及ぶ自治体があった。

 防潮堤などハード整備による被害軽減には限界があり、有識者会議は「避難が基本」とした。内閣府は同日、作業部会を設置。人や建物、経済の被害を推計し、対策を検討する。二〇二〇年度中にも結論をまとめたい考えだ。
 想定の対象は北海道、青森、岩手、宮城、福島、茨城、千葉の七道県。津波の高さは、北海道えりも町が二七・九メートル。岩手県宮古市の二九・七メートルは全体で最も高い。同市以北では東日本大震災の津波を超える地点があった。
 宮城、福島両県沿岸は五~二〇メートル弱で、一部を除き震災より低い。東京電力福島第一原発の付近は浸水する。青森県は日本海側や陸奥湾内にも津波が押し寄せ、県庁や青森市役所が一メートル以上浸水する。
 各地の震度は、北海道厚岸町、浜中町で7。北海道、青森、岩手の太平洋側の広い範囲で6強を観測するとした。
 有識者会議は地震発生確率の割り出しは「困難」とした。一方、過去に巨大津波が三百~四百年の間隔で発生。直近の十七世紀の津波から時間が経過しているとして切迫状況と判断した。
 内閣府が岩手県分で公表したのは津波の高さだけで浸水図は見送った。地元自治体が「住民に不安を与える懸念がある」などと非公表を求めたと説明している。
 津波の高さや浸水域は、満潮時で堤防が壊れる「最悪のケース」で推計した。