河北新報が自社が実施した女川原発再稼働に関するアンケート結果を分析する社説を出しました。
原発の問題点が住民の視線からどのように見られているかを分かりやすく指摘しています。
住民が抱いている「不安」の対象は避難計画であり、6割が不十分と感じています。
風向き次第で立地自治体外の市町村が重大な被害を受けることは飯館村の被害で証明されていることです。
この事例から見ても原発の再稼働を県と立地自治体に限定している現行の規定は極めて不十分であって、住民の8割近くが「住民投票に拠るべきだ」としているのは当然です。
県と立地自治体が同意すれば再稼働が出来るとしている規定は改められるべきです。
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社説 女川原発アンケート/不安解消へ議論が足りない
河北新報 2020年04月17日
賛否もさることながら、不安に思う理由が明確になったのでないか。国の基準はクリアしたものの、懸念は解消されていない。原発を再び動かすかどうかの議論は成熟しているとは言えまい。
東北電力女川原発2号機(宮城県女川町、石巻市)の再稼働問題だ。2号機は2月、原子力規制委員会の新規制基準適合性審査に合格した。
河北新報社は東京電力福島第1原発事故から10年目に入った先月、宮城県内でアンケートを実施した。結果は女川原発2号機の再稼働について「反対」61%、「賛成」36%。2017年の前回調査に続き反対が6割を超えた。
反対の理由は「安全性に疑問がある」が35%で最多だったが、他にも不安が鮮明になった。第一に原発事故を想定した避難計画だ。
福島第1原発事故に伴い、外部電源や冷却機能の喪失など重大な事故が発生した際、避難や屋内退避を要する区域が原発から半径30キロ圏に拡大された。女川原発の対象は7市町の約19万9000人。
避難先は全て県内で確保する計画が先月まとまったが、「どちらかといえば不十分」「不十分」は計59%に上った。「十分」はわずか4%。「どちらかといえば十分」を合わせても24%にすぎない。
「不十分」の理由は「放射性物質汚染の広がり方の想定」が42%と最多だ。原発が立地する女川町の16%、石巻市の25%に比べ、30キロ圏外が45%と高い。広域汚染に対する警戒感が強いことが顕著だ。
第二に再稼働の前提となる「地元同意」のあり方だ。村井嘉浩知事が主張する「県と立地自治体」は1割未満で、6割以上が「県と県内全ての自治体」の同意が必要と回答した。その半数近くが「風向き次第で周辺自治体も被害」を理由に挙げた。
福島県では今なお3万人超が県外に避難している。非情な現実が隣の県で続いているのである。ひとたび原子力災害が起きたら古里を追われる。原発から離れた地域でも「地元」意識が色濃く出るのは、古里喪失への危機感が大きいからだ。
同意の判断で重視すべき点は、最多の55%が「住民の意向確認や住民投票の結果」を挙げ、住民投票の実施に8割近くが賛成した。
県議会は2度、住民投票条例案を否決しており、住民自治を追求する動きと議会の認識に乖離(かいり)が大きいことが明らかになった。
福島第1原発事故後、国の審査を通過するのは東北の原発で初めてだ。リスクに対し住民は極めて敏感で、当事者意識は全県に広がっている。村井知事と県議会は住民の不安を直視し、議論を深める責務を全うしてほしい。
コロナ禍が底なし沼の様相を見せている。地域は疲弊し、出口が一向に見えない中、地元同意の手続きを進めるのは無論、早計である。