2020年4月27日月曜日

福島汚染水 拙速な議論は戒めたい(北海道新聞)

 北海道新聞が、福島原発のトリチウム汚染水の処分に関して、政府が新型コロナウイルスの感染が拡大する中で意見の聴取を強行することに対してスケジュールありきでの拙速な議論は戒めたい」とする社説をだしました、 
 政府側が文字通り「地元の意見を聴く」だけの姿勢は疑問だとしました。
 特にこの問題において決定権は政府にあるという態度は大いに問題です。
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社説 福島汚染水 拙速な議論は戒めたい
北海道新聞 2020/04/26
 新型コロナウイルスの感染が拡大する中で、東京電力福島第1原発でたまり続ける汚染水をどう処分するかの議論が進んでいる。
 今月に入り、福島県内で2度、政府が地元首長や産業界に意見を聴く会が開かれた。
 政府が有力とする海または大気への放出案について出席者の意見は分かれたが、実行後の風評被害を懸念し、補償の必要性を訴える声が大勢を占めた。
 国民が新型コロナとの闘いに集中している時に、スケジュールありきで拙速に結論を出すようなことがあってはならない。政府は国民的議論の下で最善の解決策を導く努力をすべきだ。

 2011年に過酷事故を起こした福島第1原発では、原子炉に注がれる冷却水に地下水が混ざり、高濃度の放射性物質を含んだ汚染水が増え続けている。
 東電が浄化処理をしているが、放射性物質トリチウムを取り除けず、敷地内に設けたタンクで保管してきた。タンク数はすでに1千基に達し、東電によると22年夏ごろに用地がなくなるという。
 これを受けて経済産業省の有識者会議は2月、今後の処分方法について、薄めて海か大気に放出するのが「現実的」とし、技術的に海洋放出の優位性を強調する報告書をまとめた。

 今月6日と13日に開かれた意見を聴く会では、漁業や林業の団体が放射性物質の放出に反対した。
 旅館・ホテルの業界団体は海洋放出を容認しつつも「故意の加害行為だ」と断じ、放出が続く間の損失補償を求めた。
 これに対し、政府側が文字通り「意見を聴く」だけだったのは大いに疑問だ。
 政府が海か大気への放出が有力だと言うのならば、風評被害の防止策や補償の具体案をセットで示し、地元の不安に応えるのが最低限の責務ではなかったか。
 2度目の会合が、政府の緊急事態宣言が出た後に開かれたことも理解に苦しむ。
 この段階で福島県は対象地域ではなかったとはいえ、新型コロナ危機のどさくさに乗じて放出への手続きを急ごうとしていると受け取られても仕方あるまい
 出席した首長から「新型コロナの渦中で、どこまで国民的議論に発展するのか」と疑問の声が上がったのも当然だ。
 海や大気への放出は、終了まで30年がかりの作業になる。福島だけで終わる問題ではないことを国民全体で受け止める必要がある。