大手電力会社の送配電部門を本体から切り離し別会社が運営する「発送電分離」が義務化されたことに伴い、東北電力は1日、東北6県と新潟県で送配電事業を行う「東北電力ネットワーク」を発足させました。
これまでは電力会社が送配電を行っていたので、新規参入する他の再生エネなどの事業者の電線利用を制限したり、利用料を高く設定したりする懸念がありました。
送配電の中立性が確保されれば、電気料金の低下や再生可能エネルギーの普及につながると期待できるというのが本来の趣旨ですが、東北電力の例を見ても分かるように、送配電事業を100%子会社に行わせるだけではとてもそうした目的は達成できません。
送配電会社を地区割りごとに作るのもおかしな話で、欧米のように送配電網の運用を電力会社から切り離し、独立した統一的な運用機関に任せるべきです。現状は有名無実のシステムと言えます。
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東北電、送配電分離で新体制スタート
河北新報 2020/4/2
大手電力会社に送配電部門の法的分離(分社化)を義務付けた「発送電分離」に伴い、東北電力は1日、新体制をスタートさせた。樋口康二郎社長が東北電本体の新たなトップに就くとともに、東北6県と新潟県で送配電事業を行う100%子会社「東北電力ネットワーク」(仙台市)が発足した。
両社は1日、東北電本店(青葉区)で商標を披露し、合同の新体制発足式を開催。新型コロナウイルスの感染拡大を考慮して規模を縮小し、役員や幹部ら約70人が出席した。
発電・小売り部門を担う東北電の樋口社長は「分社化は『第二の創業期』と言える。気持ちを新たに一歩を踏みだしたい」とあいさつ。今後10年間のグループ経営の方向性を示す中長期ビジョンの実現を目指し、女川原発2号機(宮城県女川町、石巻市)を早期に再稼働させる決意を示した。
ネットワークの坂本光弘社長は、引き続き電力の安定供給を果たし、災害時の迅速な復旧対応に努める考えを強調。「大変革である分社を成長のチャンスと捉え、新たな道を切り開いていこう」と呼び掛けた。
社員を代表して東北電の千坂幸子主任(36)とネットワークの吉川茂樹主査(40)が登壇。東北発のスマート社会実現に貢献し、社会の持続的発展とともに成長することを宣言した。
【社説】発送電分離 電力改革はまだ途上だ
東京新聞 2020年4月2日
昨日スタートした発送電分離。発電と送配電事業を切り分けて、大手電力による独占の壁を取り払う-。電力システム改革の“総仕上げ”とされているのだが、現状では劇的効果は期待できない。
日本の電力供給は長らく、大手十社がそれぞれの“縄張り”で、発電と送配電、小売りを一手に担う「地域独占」だった。
原発のような大規模集中型電源で大量の電気を一気につくり、決められた地域へ送り込むというやり方を続けてきた。
福島第一原発事故で、その弱点があらわになった。他地域からの電力融通が思うように進まず、大消費地の首都圏は、計画停電を余儀なくされた。
そんな地域独占の壁に風穴を開けるべく、政府による電力システム改革が加速した。大手電力会社を発電、送配電、小売りなどに分社化、つまり解体し、「新電力」と呼ばれる中小事業者の参入を図り、大規模集中から小規模分散に移行させる狙いがあった。
二〇一六年、家庭向けも含めた電力小売りが自由化された。改革の「総仕上げ」とされるのが、発送電分離である。
しかし、分離と言っても、送配電網の所有権を大手から切り離す「所有権分離」には踏み込めず、小売り同様、既存の大手が送配電会社を設立し、それぞれ子会社にするだけの「法的分離」にとどまった。送配電は従来通り、大手の支配下に残された。
これまでも、大手が持つ原発の電力が優先的に接続されてきたように、「新電力」からの接続が、理由を付けて抑制される懸念はぬぐえない。分離による効果は恐らく限定的だ。「新電力」には、風力や太陽光を扱う事業者が多い。政府がエネルギー基本計画にうたう、再生可能エネルギーの主力電源化にも支障を来す恐れは強い。
地域ごとに送配電子会社が残るのも非効率。欧米では、送配電網の運用そのものを電力会社から切り離し、「独立系統運用機関」(ISO)に委ねるシステムが主流という。そうなれば、全国規模での電力融通もスムーズになるだろう。接続の公平性が保たれて、再生エネの普及にとっても、強い追い風になるはずだ。
発電量が天候に左右されやすいという再生エネの弱点を、例えば日照が豊富な九州と、風力の適地が多い東北・北海道などが、補完し合えるようにもなるだろう。
送配電網の中立性が保証されるまで、電力改革は終われない。