2019年6月5日水曜日

福島「がんと被ばく関連なし」子どもの甲状腺検査で報告案(詳報)

 福島児童の甲状腺がんは放射線被ばくと関係ないとする報告書案が3日、福島市で開かれた専門家による部会で示されました。
 3日付の下記の記事でもお伝えしましたが、何とも意外なものというしかありません。
 
 NHKと東京新聞の記事を詳報として紹介します。
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福島 「がんと被ばく関連なし」子どもの甲状腺検査で報告案
NHK NEWS WEB 2019年6月3日 20時36分
福島県が原発事故当時、18歳以下だった子どもたちを対象に行っている甲状腺検査をめぐり、検査の結果を評価している専門家の部会で、2巡目の検査で発見された甲状腺がんと被ばくの関連は認められないとする報告案が示されました。一方、部会長は、この報告案を受けて検査をやめるという答えは出せないとしています。
この報告案は3日、福島市で開かれた専門家による部会で示されました。
 
2巡目の検査で発見された甲状腺がんと被ばくの関連については、UNSCEAR=国連原子放射線影響科学委員会で公表された年齢別や市町村別の推計の線量を解析に使ったうえで、「甲状腺がんの発見率との関連の解析においては、線量の増加に応じて発見率が上昇するといった一貫した関係は認められない」とした報告案をまとめました。
 
また、県民健康調査の受診率が年々低くなっていることから、調査とは別に自治体が医療機関を通じてがん患者の情報を集める「地域がん登録」などを利用し、甲状腺がんの状況を把握することや、単発の検査だけではなく数回の検査の結果を蓄積して解析する必要があることも盛り込まれています。
 
この報告案は今後、県民健康調査検討委員会に提出されることになっています。甲状腺がんと原発事故による被ばくの影響をめぐり、県の県民健康調査検討委員会は3年前、被ばく線量が総じて小さいことなどを理由に「放射線の影響とは考えにくい」とし、検査を大規模に実施したことで、がんが多く見つかっている可能性が高いという見解を示しています。
 
甲状腺検査評価部会の鈴木元部会長は「放射線の影響を受けやすい事故当時1歳から5歳だった子どもたちの中で甲状腺がんが増えていない、と結果が出るまでは検査をやめるという答えは出せないと個人的には考えている。今後も検討を続ける必要がある」としています。
去年から4巡目に入っている甲状腺検査で、がんやがんの疑いと診断された人は212人となっています。
 
 
子の甲状腺がんと被ばくの関連否定 福島原発事故調査中間報告
東京新聞 2019年6月4日
 東京電力福島第一原発事故の健康への影響を調べる福島県の県民健康調査検討委員会の評価部会は三日、事故当時十八歳以下だった県内の全ての子どもを対象に二〇一四、一五年度に実施した二巡目の甲状腺検査の結果について「現時点では甲状腺がんと被ばくとの関連は認められない」とする中間報告を公表した。
 
 推計被ばく線量が高くなるとがん発見率が上がるといった相関関係が見られなかった。ただ年の小さい子どもほど被ばくの影響を受けやすいとされる。成長後の影響を分析するため検査継続の必要性には変わりはない。
 基礎データ収集を目的に事故の半年後から一三年度まで行われた一巡目の検査と違い、事故後三~五年目に実施した二巡目は「本格検査」と位置付けている。
 
 部会長の鈴木元・国際医療福祉大クリニック院長は記者会見で「(二巡目の)データだけで、未来永劫(えいごう)、放射線の影響がないと結論付けるものではない」として、検査継続の必要性を強調した。
 
 医療専門家八人が出席した三日の部会では、中間報告の内容に大きな異論はなかったが、「(がんが見つかった)個人の被ばく線量は考慮されていない。さまざまな制限があった上での分析だ」との指摘や、「『関連は認められない』との表現を弱められないか」といった意見も出た。今後文言を微調整した上で、検討委に提出する。
 中間報告を受け、患者側からは推計した被ばく線量を使っての判断に、早計ではないかとの疑問の声が上がった。