2019年6月15日土曜日

東電 和解拒否後に被害者に「ADR個別に」のダイレクトメール

 東京電力福島第1原発事故の被害者が集団で申し立てたADRの和解案を東電が拒否し、手続きが打ち切られる事例が相次いでいる問題で、東電がADR和解を一度拒否した被害者2万人個別の再申し立てを促すダイレクトメール(DM)を送付していたことが分かりました。
 これは世耕弘成経済産業相3月、東電の小早川社長に「和解案に基づき誠実に対応することは当然の責務」と指導したことに対する反応と考えられます
 
 東電は各地の集団ADRで「一律での検討は公平さに欠ける」として、ADRの和解案を拒否し続けてきました。
 しかし、個別損害の立証はハードルが高く、弁護士費用も追加で発生するため、個別申し立てに移行できる被害者は少数と見られます。
 ふくしま原発損害賠償弁護団の鈴木雅貴弁護士は「個別申し立ては被害者の負担が重く、賠償格差を生むことにもつながる。東電は集団ADRで和解すべきだ」と強調しています
 
 そうした実情を知らない筈がないのに、東電が「個別の再申し立てを促した」ことで義務を果たしたかのように振る舞うのは卑怯です。
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東電「ADR個別に」和解拒否後、被害者にDM
河北新報 2019年6月11日
 東京電力福島第1原発事故の被害者が集団で申し立てた裁判外紛争解決手続き(ADR)の和解案を東電が拒否し、手続きが打ち切られる事例が相次いでいる問題で、東電が被害者に個別の再申し立てを促すダイレクトメール(DM)を送付していたことが10日、分かった。
 関係者によると、DMは4月、被害者宅に郵送された。「集団ADR打ち切り後、個別の手続きで和解に至ったケースもある」「個別申し立てで事情を丁寧に伺い、和解成立に向けて最大限努力する」などと記されていた。
 
 送付先は約2万人とみられ、対象者は福島県浪江町や福島市渡利地区などで集団ADRを申し立て、東電に和解を一度拒否された点で共通している。
 東電は各地の集団ADRで「一律での検討は公平さに欠ける」として、原子力損害賠償紛争解決センターが示した和解案を拒否し続けた経緯がある。世耕弘成経済産業相は3月、小早川智明社長に「和解案に基づき誠実に対応することは当然の責務」と指導した。
 
 被害者は改めてADRを申し立てるかどうか選択を迫られた形だが、個別損害の立証はハードルが高い。弁護士費用なども再び発生するため、個別申し立てに移行できる被害者は限られるとみられる。
 ふくしま原発損害賠償弁護団の鈴木雅貴弁護士は「個別申し立ては被害者の負担が重く、賠償格差を生むことにもつながる。東電は集団ADRで和解すべきだ」と強調。東電広報室は「集団だけでなく『個別』という選択肢もある。個別に申し立てをいただければ最大限努力する」と話した。
 センターによると、東電の和解拒否を理由に打ち切られたADR件数は2017年まで毎年1桁だったが、18年は49件に急増した。