2019年10月17日木曜日

原発マネー還流問題 安倍政権、関電、原子力検察の関係は

 日刊ゲンダイに「金子勝の『天下の逆襲』」を連載している金子勝慶大教授が、「原発マネー」還流問題を調査する関電の調査委員会のメンバーは、いずれもかつて政権に協力したり、郵政不正事件で検察側の証拠改ざんに関わった検察関係者ばかりであることを明らかにしました。
 もともと検察は行政機関と見做されるほど政権寄りであり、また政権はいうまでもなく関電寄りです。野党が関電の関係者を参考人招致しようとしても与党が頑として認めないのが何よりの証拠です。
 そのうえ岩根茂樹社長がひとり居残ったのは、第三者委員会を仕切って隠蔽を図ろうとしたからとわれるので、第三者委員会で十分に解明される見通しは殆どなさそうです。
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金子勝の「天下の逆襲」
原発マネー還流問題 安倍政権、関電、原子力検察の関係は
日刊ゲンダイ 2019/10/16
 原発マネー還流問題で、関西電力の八木誠会長ら役員7人が辞任する事態に至った。しかし、バナナの叩き売りのようなやり方にだまされてはいけない。
 
 この問題で最も重要なのは、検察との距離感だ。目下、表舞台に出てきているのは、第1次安倍政権や麻生政権時代に東京電力の原発再稼働に協力姿勢を取ったり、村木厚子元厚労局長が巻き込まれた郵便不正事件で証拠改ざんに関わった検察関係者ばかり。岩根茂樹社長がひとり居残ったのは、“原子力検察”と癒着して第三者委員会を仕切り、隠蔽を図ろうとした疑いが強い。
 
 福井県高浜町元助役(故人)から関電幹部に巨額の金品が渡った問題が発覚したきっかけは、元助役が顧問に就いていた建設会社「吉田開発」(高浜町)に金沢国税局の査察が入り、昨年6月に元助役宅で金品受領に関するメモが見つかったことだった。
 事態の沈静化に動いたのが、社内調査委員会の委員長を務めた小林敬弁護士。彼は麻生政権時の最高検公安部長で、郵便不正事件当時は大阪地検検事正の立場にあり、証拠改ざんのモミ消しを黙認した結果、懲戒処分を受けて退官した人物だ。「報道特集」(TBS系)は小林氏が調査委でモミ消しを図っていたと報じている。
 
 こうした経緯で第三者委の委員長となったのが、但木敬一弁護士だ。但木氏は第1次安倍政権時の検事総長。当時、検察はGE技術者の暴露によって稼働中止になった福島原発を再稼働させるべく、慎重派だった福島県の佐藤栄佐久知事の実弟の不正を立件し、辞職に追い込んだ。その過程で政権の思惑通りに福島原発は再稼働。そして、安倍首相は06年末に「全電源喪失はあり得ない」と国会答弁し、地震対策を拒否して福島原発事故が起きた。
 佐藤氏が収賄額ゼロで有罪となった事件を捜査したのが東京地検特捜部。郵便不正事件で証拠を改ざんした前田恒彦検事(懲戒免職)や森本宏検事(現特捜部長)だった。
 
 特別背任が疑われる岩根社長が、原発と関わりがあったり、不正をはたらいた検察OBを集めた第三者委の「独立性」は極めて怪しい。関電に都合のいい調査が進められ、検察の忖度まで招きかねない。しかも、自民党の稲田朋美幹事長代行や前経産相の世耕弘成参院幹事長といった安倍側近が、元助役と関係が深い関電受注企業から献金を受けていた。証人喚問を含め、国会の場で徹底的に調査するほかない。 
 
 金子勝 慶応義塾大学経済学部教授
1952年6月、東京都生まれ。東京大学経済学部卒業。東京大学大学院 博士課程単位取得修了。 法政大学経済学部教授を経て。2000年10月より現職。TBS「サンデーモーニング」、文化放送「大竹まことゴールデンラジオ」などにレギュラー出演中。『資本主義の克服 「共有論」で社会を変える』集英社新書(2015年3月)など著書多数。新聞、雑誌にも多数寄稿している。