南日本新聞の記者が青森県六ケ所村の「核燃料サイクル施設」(施工・運転管理は『原燃』)を訪ねました。
核燃料サイクルは使用済み核燃料からプルトニウムを抽出しMOX燃料として再利用することが主な目的ですが、日本には既に過去 海外において抽出した莫大な(=到底使い切れない)量のプルトニウムがあるので、そもそも無用な「もの」でした。
このことは かつて経産省の若手官僚が、建設費に十数兆円かけてもコスト上のメリットが全くないことを明らかにしたのですが、「核燃料サイクルは国策」であるとしてその反対運動は鎮圧されました。
当の「燃料サイクル施設」はとっくの昔に完成していなくてはならなかったのですが、完成延期が実に27回も繰り返されて いまだに完成していません。
現在の『原燃』には旧『原研』のメンバーが移籍したのですが、もともと研究が主体だったので工場建設の管理や運転には不適なメンバーでした。そのため以前に従事した高速増殖炉「もんじゅ」の運転管理では失態を度々繰り返したことで最終的に「廃炉」になりました。
ところでこの無用な施設の建設や運転管理に要する費用は 原発の「使用済み核燃料処分費」から回される筈なので、その無駄な出費は電気料の名目で結局国民が負担している訳です。
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回らない核燃料サイクルを受け入れ40年…青森県六ケ所村の再処理工場いまだ稼働せず 完成延期27回繰り返す
南日本新聞 2025/11/19
青森県下北半島の付け根に位置する六ケ所村(人口約9500人)の中心部に、周辺を森で囲まれた工場団地がある。原発燃料の生産から再処理、廃棄物の管理まで引き受ける「核燃料サイクル施設」だ。九州電力川内原発(薩摩川内市)はじめ全国で原発再稼働が進み、国は原発回帰を鮮明にするが、核燃料サイクルは行き詰まっている。10月下旬、地方新聞エネルギー研究会の一員として現地を訪ねた。
【写真】核燃料サイクルの仕組みを図解で学ぶ
「世界的に見てもこれだけの施設が1カ所に集まるのは珍しい」。事業者の日本原燃の岡村泰治地域・広報本部長兼安全・品質本部長(67)は説明する。
施設は主に(1)天然ウランを原発で使えるよう濃縮(2)放射能レベルが低い廃液など低レベル放射性廃棄物の埋設(3)使用済み燃料の再処理(4)再処理の過程で出る高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の一時管理(5)再処理後の新たな燃料生産-に分けられる。
県と村は1984年、電気事業連合会に施設(濃縮、埋設、再処理)立地の申し入れを受けた。翌85年に受け入れを決め、今年で40年たつ。5施設は88~2010年に順次着工したものの、稼働したのはウラン濃縮工場、低レベル廃棄物の埋設施設、核のごみの管理施設の三つにとどまり、サイクルは完成していない。
■厳重管理
敷地は鹿児島空港の4倍近い7.5平方キロに及ぶ。各施設は数カ所に分けられて整備され、バスで巡った。「核物質の管理上、建物に工場名は一切書いていない。外から見ても分からないようになっている」。岡村氏に説明を受けた。
低レベル放射性廃棄物を管理する施設は、稼働や点検で出た廃液や焼却灰、金属片をセメントやモルタルで固めたドラム缶(200リットル)を埋設する。最大300万本を埋められ、約38万本を受け入れた。放射能が安全上問題ないレベルに下がるまで、土をかぶせてから約300年間監視する。
核のごみの保管施設がある敷地は特に厳重な管理体制だった。指紋登録され、レコーダーの持ち込みは禁止された。
核のごみを地下深い岩盤に埋める「最終処分場」に送るまで30~50年間、冷却して貯蔵する。フランスとイギリスで再処理し、戻ってきたガラス固化体1830本を収める。今年4月に最初の持ち込みから30年を迎えたが、処分場は候補地の選定さえままならない。
■国の審査続く
核燃料サイクルの要となる再処理工場はいまだに稼働していない。試験運転や新規制基準の対応でこれまで完成延期を27回繰り返し、1993年の着工から32年が経過。現在も国の審査は続く。日本原燃は2026年度中の完成を目指している。
工場では使用済み燃料から、再利用できるウランとプルトニウムを取り出す。年間最大で、100万キロワット級の原発約40基分の使用済み燃料を処理する能力を持つという。
隣接地では、再処理で回収するプルトニウムとウランを混ぜた混合酸化物(MOX)燃料へ加工する工場の建設工事が進んでいた。10年に着工し、27年度の完成を見込むが、こちらも新基準対応などで完成延期を8回繰り返している。
全国の原発では、使用済み燃料が原発の敷地内や中間貯蔵施設にたまり続けている。竹内謙介地域・広報副本部長(57)は「燃料をここに持ち込み、サイクルを回す姿を描けるよう、しっかり完成させ操業していきたい」と話した。
■青森県・宮下知事「負担分け合うことが必要」
原発施設が集中する青森県の宮下宗一郎知事に、原発施策への考えを聞いた。
-原発施設が多い。昨年、国内初の使用済み燃料の中間貯蔵施設も操業した。
「青森県は昔出稼ぎ率が高く、地元に仕事をつくる必要があった。大規模工業団地の開発計画もあったが頓挫した。国のエネルギー政策は特別受け付けないという地域ではなかったから、今のような立地状況になった」
「中間貯蔵は、核燃料サイクルの進捗(しんちょく)状況を毎年度確認し、搬入量を調整することで最長50年の保管期限を達成したい。(出資した東京電力と日本原子力発電以外の)他社と共同利用する可能性は、現時点ではない」
-再処理工場は2026年度の完成を目指している。審査状況への認識は。
「スケジュールにとらわれるのではなく、安全性を確認した形でクリアしてほしい。仮に審査が1、2回増えても、今までみたいに工場の完成が1、2年延びることはないと思う」
-核のごみの最終処分場は候補地のめどが立たない。
「なぜ青森だけ再処理から廃棄物を含めて全部やる必要があるのかという議論は、施設を誘致した時からある。負担を分け合うことが必要で、電気だけ使ってその他は考えなくていいというのはおかしな話。大消費地も含め、みんなで考える問題だ。青森県が最終処分場を受け入れないという方針は、県内の市町村も理解している」