東電は30日、福島原発事故に伴う損害賠償について消滅時効が成立する10年が経過した後も時効を主張せず、被災者の損害賠償請求に対応する考えを初めて表明しました。
原発事故発生から10年となる2021年3月が近づくにつれ、被災した住民や自治体からの問い合わせが増えてきたとして、東電の考えを明らかにしました。
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東電、時効主張せず 事故10年控え方針公表 原発賠償
福島民報 2019/10/31
東京電力は三十日、福島第一原発事故に伴う損害賠償について消滅時効が成立する十年が経過した後も時効を主張せず、被災者の損害賠償請求に対応する考えを表明した。二〇一三(平成二十五)年十二月の原賠時効特例法の成立で消滅時効が三年から十年に延長されて以降、東電の正式な公表は初めて。
東電は二〇一三年二月、消滅時効について、時効完成で一律に賠償請求を断る考えはないとし「個別の事情を踏まえ、消滅時効に関して柔軟な対応を行う」との考え方を示していた。原発事故発生から十年となる二〇二一年三月が近づくにつれ、被災した住民や自治体からの問い合わせが増えてきたとして改めて時効を主張する考えがないことを強調した。
東電は消滅時効の起算点について、被災者が損害賠償請求をすることが事実上可能になった時点と捉え、原子力損害賠償紛争審査会の中間指針を踏まえて賠償請求の受け付けを開始した二〇一一年九月としている。東電が時効を主張しなければ、十年を過ぎても損害賠償を受けられる。
東電によると、原発事故の損害賠償は九月末時点で、個人から約二百四十一万一千件、法人・個人事業主などから約五十万一千件の請求があり、総額で約九兆二千百十七億円を支払っている。原発事故発生時に避難区域内にいた住民約十六万人のうち約八百人は賠償を請求していない。区域外を含めるとさらに増えるとみられる。