9日に新潟県内で行われた原子力防災訓練について、新潟日報が問題点を指摘する辛口の記事を出しました。型通りに行うだけの防災訓練では甘く、実効性のある訓練にならないと述べています。
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甘い想定 実効性に疑問 柏崎原発 県原子力防災訓練
新潟日報 2019/11/10
東京電力柏崎刈羽原発の重大事故を想定し、9日に新潟県内で行われた原子力防災訓練は、大きな混乱もなく終了した。背景には、自家用車による避難を除外したり、地震との複合災害を前提としたにもかかわらず、道路状況の悪化を想定に盛り込んでいなかったりしたことがある。想定の“甘さ”が目立つ訓練で、課題がどれだけ浮き彫りになったかは不明。県には今後、より厳しい事態を想定した、実効性のある訓練が求められそうだ。
放射性物質の付着の有無を検査するスクリーニング場所の候補地である、燕市の大河津分水さくら公園。9日は長岡市や出雲崎町など原発から5~30キロ圏内の避難準備区域(UPZ)の住民約120人がバス5台で次々に訪れた。
住民たちは放射性物質で汚染された地域に一時とどまってから避難してきたという想定で、体が汚染されていないかの検査を受けた。1人当たり1~2分かけてのスクリーニングや、基準値を超えたとされた人の簡易除染はスムーズに進んだ。車両の除染を行ったのもバス3台だけだ。
だが、本当に事故が起きた際にもこれらを円滑に行えるかは不透明だ。県の広域避難計画では「自力で避難可能な住民は原則、自家用車により避難」と明記している。実際には、汚染された地域から大量のマイカーに乗った住民が詰め寄せる可能性がある。
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複合災害に伴う道路の通行止めなども十分に想定されていたとは言えない。
UPZの住民たちは北陸道や国道8号などを利用してさくら公園まで避難した。ただ、2007年の中越沖地震では、北陸道や国道8号、116号の一部が通行止めとなった。
また、11年の東日本大震災では津波が広範囲に甚大な被害をもたらしたが、今回の訓練は震源を内陸としたため津波による影響は考慮されなかった。
初めて行われたUPZの避難者への安定ヨウ素剤の配布訓練も課題を残した。
安定ヨウ素剤は放射性物質を体内に取り込む前に、予防的に服用することで効果があるとされている。今回の想定では、スクリーニング場所へ避難する間に既に放射性物質を取り込んでいる可能性がある。国の指針によると、被ばく後8時間で安定ヨウ素剤による抑制効果は40%まで低下し、16時間以降だと効果はほとんどないとされている。
UPZの住民に対するヨウ素剤の配布を巡っては、県の配布計画で「スクリーニングポイント及び避難経路上で行う」と定められている。住民の安全のためにはより早い服用が求められており、本来は避難中の住民にどう配るかが問われている。
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訓練を通じ、県は広域避難計画の課題を洗い出し、実効性を高めたいとしている。ただ、住民参加の訓練は5年ぶりということもあり、今回は基本的な手順の確認が優先された。花角英世知事は訓練を視察した後、報道陣に対し「状況が厳しいシナリオを作り能力を高める。訓練に際限はない」と述べ、繰り返し実施していく意向を示した。
柏崎刈羽原発の再稼働について、花角知事は原発の安全性を巡る県独自の「三つの検証」が終わらない限り議論しない姿勢だ。三つの検証の一つで、原子力災害時の避難方法に関する検証委員会委員長の関谷直也・東京大大学院准教授は視察後、「(職員が)手順を理解できたのは良かった」としたが、こうくぎも刺した。「今回できたからと言って、実効性があるという判断の材料にはならない」