福島民報のシリーズ「【廃炉の現場】第1部デブリ取り出し」の(4)です。
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【廃炉の現場】(4)第1部デブリ取り出し ベントの影響今も 1号機高線量続く
福島民報 2020/11/11
二〇一一(平成二十三)年三月十二日、東日本大震災の津波で「全電源喪失」となった1号機は危機的な状態にあった。
核燃料の冷却が停止し、高温になった燃料で格納容器内の圧力が上昇を続けた。緊張感の高まる中、作業員が弁を開き、放射性物質を含む蒸気を外に逃がす「ベント」を決行し、容器が大破する事態は免れた。しかし、影響は事故から九年八カ月が経過した今も続く。
1号機原子炉建屋の一階部分は場所によっては、放射線量が毎時六〇〇ミリシーベルトを超える。東電によると、冷却系の配管に放射性物質が入り込んだことに加え、圧力を調整する配管などがベントの際に汚染されたのが要因とみられる。高濃度の放射性物質が付着した設備は現在も依然として高い放射線量を保ち続けている。
原子炉格納容器内部の堆積物に加え、高線量という「見えない壁」が内部の調査や溶融核燃料(デブリ)取り出しに立ちはだかる。
■630ミリシーベルト
1号機のデブリ取り出しは、作業用に使われていた原子炉建屋一階南東部にある格納容器への貫通部の活用が重要とされている。
ただ、南東部は毎時六三〇ミリシーベルトと放射線量が特に高い。線量低減が不可欠だが、施設の除染だけでは限界がある。発生源とされる配管の表面は、毎時約一〇〇〇ミリシーベルトと極めて高い数値が推計されており、撤去が急がれる。人が近づけず、作業にどれだけの年数がかかるかは具体的に見通せていない。
廃炉の中長期実行プランで、ロボットなどの遠隔作業が検討されている。原子力関係の研究者によると、原子力施設の管理や解体などで使われている既存の技術や手法も導入できるとの見方がある。配管内部にある高濃度の放射性物質が外部に漏れないようにする対策も必要という。課題が山積する。
燃料取り出しなど具体的な動きが他の号機で進む中、1号機の環境改善にどれだけ力を割けるかは不透明だ。
■老朽化
2、3号機の後にデブリ取り出しが始まるとみられる1号機は、コンクリート部分の腐食の可能性など設備自体の強度を懸念する声がささやかれる。
運転開始自体が一九七一(昭和四十六)年と間もなく五十年となる上、福島第一原発で最も出力が小規模の炉で、2、3号機と設計などの違いがあり、2号機などの取り出しの手法が参考にならない可能性もある。
1号機の取り出し開始時期が示されず、長い期間がかかるとみられる中、角山茂章県原子力対策監は設備の劣化による放射性物質の漏えいなどのリスクの高まりを指摘する。その上で、「老朽化が想定される場所の作業を優先して進めるなど、柔軟な対応が必要。知見を集めるのも重要だが、ある程度見通しが立てば並行した作業を進めてもよいはずだ」と説明している。
事故から「三十~四十年」とされる着実な廃炉を進めるためには「原子力分野の人材が枯渇する中、人材の育成やノウハウの蓄積、地元企業の参入の仕組みづくりも重要になる」と強調した。