7日、九電玄海原発の重大事故を想定した原子力防災訓練が行われ、30キロ圏内にある長崎県松浦、佐世保、平戸、壱岐4市の住民や行政関係者など計915人が参加しました。
離島の大島支所を新型コロナウイルス感染者の自宅に見立て、原発事故下で島外に避難させる訓練も行われました。
西日本新聞の記者3人がエリアを分担して報じました。
関連記事
(11月7日)長崎県が11月7日に原子力防災訓練
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
コロナ禍での事故想定 長崎でも原子力防災訓練、915人参加
西日本新聞 2020/11/8
九州電力玄海原発(佐賀県玄海町)の重大事故を想定して7日に行われた原子力防災訓練には、原発30キロ圏内にある長崎県松浦、佐世保、平戸、壱岐4市の住民や行政関係者など計915人が参加した。新型コロナウイルスが収束しない中で今回は規模を縮小。一方、訓練ではコロナ禍での原発事故があり得ることを念頭に、感染者を避難所とは別に搬送したり、バス内では住民が間隔を空けて避難したりする備えが見られた。
巡視艇で島外に
平戸市では玄海原発から30キロ圏内の離島、的山大島の大島支所を新型コロナウイルス感染者の自宅に見立て、原発事故下で島外に避難させる訓練があった。
支所職員が扮(ふん)した感染者の男性は、1週間前に新型コロナの陽性が判明したと想定。他の多くの住民が大島中体育館に避難する中、男性はまず救急車で支所から近い神浦桟橋に運ばれ、救急隊員に付き添われつつ平戸海上保安署の巡視艇で平戸港へ向かった。
約30分後に平戸港に到着。待機する県北保健所長による頭痛や吐き気の有無などの質問に答え、救急車で目的地の佐世保市総合医療センターに搬送された。
放射能と新型コロナ感染症の両対策を兼ねた防護服に身を包んだ隊員は「自分も濃厚接触者であると意識しつつ、それ以上は絶対に感染を広げないとの強い覚悟で対応した」と話した。(福田章)
避難バス内でも座席の距離保つ
市内の一部が玄海原発から30キロ圏の壱岐市では、島北部の施設にバスで長距離避難する訓練が行われ、住民たちが参加した。
島南部の初山地区では住民らが地元小学校に集まり、市職員による検温を受けて手指を消毒した後、防護服を着てバスに乗車。57座席あったが新型コロナ感染を避ける対策も想定し、間隔を空けて座った。
原発から約40キロ離れた避難所の福祉施設に到着すると、住民らは玄関前で防護服を脱ぎ、再び検温や消毒で感染防止を徹底。ただ今回、毎年行われる放射性物質の付着を確認するスクリーニングや保健師による問診は、3密を避けるために省略された。
参加した初山地区の山川正毅さん(73)は「(今回は行われなかったが)スクリーニングをもっとスムーズにしてほしい。いつも1時間半~2時間かかっており、その分、コロナへの感染リスクも高まる」と指摘した。(田中辰也)
コロナ対策要請
県庁では同日午前9時ごろ県災害対策本部を設置。玄海原発が事故で炉心を冷却する機能が失われたとの通報に基づき、集まった県幹部が対応を協議。福岡、佐賀両県などともモニター会議で避難所の設置状況などを報告しあった。
対策本部会議では、原発30キロ圏の県内4市を中心とした住民の避難誘導状況などが報告された。事故の規模次第では、県として自衛隊に災害派遣要請することも確認し、その後、要請の手続きも取られた。中村法道知事は出席者に住民の安全確保に万全を期すよう訴え、「3密を避けるように」とコロナ対策にも取り組むよう求めた。
訓練後、県の荒木秀危機管理監は講評で「訓練にはシナリオがあるが、実際に事故があったときはもっと関係自治体と連携する必要がある」と述べた。(徳増瑛子)