福島第1原発事故に伴い一部が避難指示区域に指定された南相馬市原町区の住民45世帯144人が、東電に「ふるさと喪失」慰謝料や避難慰謝料約33億円を求めた集団訴訟の判決で、地裁いわき支部は18日、東電に対し、原告132人に約1億4600万円を支払うよう命じました。
東電の事故の責任については、東電が大津波の到来を予測できた可能性があり、対策を講じる余地があったとした一方、大津波の危険性を指摘した「長期評価」に関する見解が当時は決定的なものではなく、切迫したものではなかったなどとして、著しい義務違反には当たらないとしました。
原告側弁護団は「責任論や賠償額が過去の判例より後退している。敗訴ではないが不満は大きい」として控訴する方針です。
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1億4600万円賠償命令 地裁いわき、南相馬住民・原発事故訴訟
福島民友 2020年11月19日
東京電力福島第1原発事故に伴い一部が避難指示区域に指定された南相馬市原町区の住民45世帯144人が、東電に「ふるさと喪失」慰謝料や避難慰謝料約33億円を求めた集団訴訟の判決で、地裁いわき支部の名島亨卓裁判長は18日、東電に対し、原告132人に約1億4600万円を支払うよう命じた。一方、東電の事故の責任については一部を認めなかった。
判決で名島裁判長は、原発事故で生活が変わってしまった精神的苦痛に対する慰謝料について避難慰謝料とは別に支払いを命じ、避難指示解除準備区域の原告に150万円、緊急時避難準備区域の原告に70万円を上乗せした。
東電の事故の責任については、東電が大津波の到来を予測できた可能性があり、対策を講じる余地があったとした一方、具体的対策を取らなかった点については、大津波の危険性を指摘した「長期評価」に関する見解が当時は決定的なものではなく、切迫したものではなかったなどとして、著しい義務違反には当たらないとした。
判決を受け、原告側弁護団は「責任論や賠償額が過去の判例より後退している。敗訴ではないが不満は大きい」として控訴する方針を示した。原発から20~30キロ圏内に住む南相馬市の原告女性(78)は「古里は原発事故以前には戻らない。判決を受け入れられない」と話した。東電は「内容を精査して対応を検討する」とコメントした。
東電に慰謝料1・4億円命令 南相馬・古里喪失訴訟 「賠償不十分」原告控訴へ
河北新報 2020年11月19日
東京電力福島第1原発事故で地域コミュニティーが失われたなどとして、福島県南相馬市原町区の住民144人が東電に総額約33億1730万円の慰謝料を求めた訴訟の判決で、福島地裁いわき支部は18日、132人に対し総額約1億4610万円の支払いを命じた。原告側は賠償水準が不十分などとして控訴する方針。
名島亨卓裁判長は避難への慰謝料として月額10万円を支払うよう命じ、子どもや妊婦には1万~40万円を上積みした。地域コミュニティーで継続、安定的な生活を送ることは法的に保護される利益と認定。古里が変容したことへの慰謝料として、一部を除く旧避難指示解除準備区域で150万円、旧緊急時避難準備区域で70万円を一律に認めた。
2002年に国が公表した地震予測「長期評価」を巡っては、東電が津波対策を講じなければならない切迫状況があったとは認められないと指摘。注意義務違反があったとしても「慰謝料を増額するほどの悪質性はない」と判断した。
15年9月に提訴。原告側は避難期間に応じ月35万円の慰謝料に加え、古里が喪失、変容したとして第1原発の20キロ圏内で住民1人当たり2000万円、20~30キロ圏内で1000万円の慰謝料を求めた。
弁護団の米倉勉弁護士は取材に「古里変容の被害が認められた一方、賠償水準が後退するなど不当な判決だ」と述べた。
東電福島広報部は「判決を精査し、今後の対応を検討する」とコメントした。