東北電力女川原発2号機の再稼働について、宮城県の村井嘉浩知事は11日、再稼働の事実上の前提となる「地元同意」を表明しました。これについて河北新報は「生煮えの『地元同意』 拙速な知事判断、強引さも目立つ」とする手厳しい解説記事を載せました。
しんぶん赤旗の記事を併せて紹介します。
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女川原発再稼働、生煮えの「地元同意」 拙速な知事判断、強引さも目立つ
河北新報 2020年11月12日
【解説】東北電力女川原発2号機の再稼働を巡り、村井嘉浩宮城県知事が東日本大震災の月命日に表明した「地元同意」は、消極的な容認の積み重ねにすぎない。政府から3月に再稼働への同意を要請されて8カ月。過酷事故を起こした東京電力福島第1原発の隣県として、人命と財産を守るべき県政トップとして、あまりにも早計だ。
2号機は震災の揺れと津波で被災し、福島第1原発と同じ沸騰水型炉でもある。安全性について、より慎重な検証が求められるはずだが、原子力規制委員会の審査合格と、それを追認した県有識者検討会の報告を基に結論を急いだ。
重大事故時の広域避難計画の実効性も課題山積。立地2市町が求める避難道路の確保、原発30キロ圏の約20万人を受け入れる県内31市町村の不安など枚挙にいとまがない。
「原発がある限り事故の可能性がある」。村井知事は避難計画の改善を続ける必要性を繰り返すが、東北電の安全対策工事が2022年度まで続く中、なぜ生煮えのままゴーサインを出すのか。
村井知事が意見をまとめる際の強引な手法も目立った。9日の市町村長会議は反対派だけでなく、賛否に悩む首長もいたが、知事は会場の拍手をもって「総意」とし、わずか2日後に同意。単なるセレモニーにおとしめた。
再稼働を容認した女川町議会、石巻市議会、県議会も「もろ手を挙げて賛成の人は少ない」(ベテラン県議)。「原子力エネルギーは国策」を言い訳に「やむなし」との声が大勢を占めた。本音ではない、妥協の産物による拙速な決断は将来に禍根を残しかねない。
(報道部・布施谷吉一)
女川再稼働 知事「同意」 宮城 県民の意向触れず
しんぶん赤旗 2020年11月12日
東北電力女川(おながわ)原発2号機(宮城県女川町、石巻市)の再稼働について、宮城県の村井嘉浩知事は11日、再稼働の事実上の前提となる「地元同意」を表明しました。東日本大震災の被災地での原発再稼働への同意は初めて。
村井知事はこの日、石巻市で須田善明・女川町長、亀山紘・石巻市長と3者会談を行い、再稼動への「地元同意」を決定。県民への報告ともなる記者会見より先に、梶山弘志経産相へ電話で「地元同意」を連絡しました。
また、原発施設の変更(追加工事)に関する東北電力との「事前協議」も了承しました。
記者会見で村井知事は、「地元同意」の判断に至ったポイントを問われ、県議会と、立地自治体を含む市町村長の理解を得られたと説明。県民の意向については触れませんでした。「私自身、再稼働は必要だと考えています。事故があったから駄目なら、すべての乗り物、食べ物を否定することになる」などと強弁しました。
女川再稼働 知事「同意」 住民怒り「県民の総意でない」
しんぶん赤旗 2020年11月12日
11日午後、東北電力女川原発2号機の再稼働の「地元同意」の最終判断をする、村井嘉浩知事と須田善明・女川町長、亀山紘・石巻市長の会談会場となった県の石巻合同庁舎前。再稼働に反対する市民団体がスタンディングで「地元同意するな」とアピールしました。
周辺地域を宣伝カーも走らせながら、会場入り口付近では全県から駆け付けた県民が「女川原発再稼働NO」「子どもたちに原発のない世界を」などの横断幕を広げ、旗やプラスターを掲げてアピールしました。
会談が始まる1時間以上前から、寒風の中をスタンディング。道行く自動車から手を振り激励する市民の姿がありました。須田女川町長が到着すると「女川原発は再稼働するな」の大きな声が響き渡りました。
会談終了後、村井知事の「地元同意」表明を受けて、市民団体53団体を代表して「女川原発の再稼働を許さない!みやぎアクション」の多々良(たたら)哲世話人は怒りの抗議声明を発表。「再稼働同意は、断じて『県民の総意』ではなく、再稼働問題はこれで終わりではない。これからも真に『県民の総意』に基づく再稼働の是非が決められることを求めて、あらゆる運動を進めていこう」と力強く訴えました。