福島民報のシリーズ「【廃炉の現場】第1部デブリ取り出し」の(5)~(7)です。
読んでも詳細は分かりませんが、全体的にまだまだ五里霧中という感じです。
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【廃炉の現場】(5)第1部デブリ取り出し 3号機 絡み合う障壁 取水と注水の矛盾
福島民報 2020/11/13
日本原子力研究開発機構(JAEA)福島研究開発部門廃炉環境国際共同研究センター炉内状況把握ディビジョン長の倉田正輝さんは東京電力福島第一原発3号機をこう分析する。「デブリ(溶融核燃料)が非常に複雑な堆積の状態になっている」-。
いずれも炉心溶融(メルトダウン)が起きた1~3号機は、事故時の炉心の圧力などで、状態は違うとみられる。JAEAによると、3号機は圧力や冷却時間などの条件が複雑に重なり、二二〇〇度ほどに達した核燃料が格納容器底部に時間をかけて落下したとみられている。落ちる際、鋼鉄製の足場などを巻き込み、容器底部に大量にたまった。
これまでの調査結果から、構造物などを含めて格納容器底部に最高で三メートルに上る堆積物があり、内部は大きく様変わりしているのが明らかになった。絡み合った障害をいかに取り除くか。原子炉内の把握と分析が進む。
■2号機の次
東電は三月、今後十二年間の作業工程を示した最新の廃炉中長期実行プランを発表した。二〇二一(令和三)年に計画している2号機のデブリ取り出しの次に、3号機が初めて記された。3号機格納容器内の水位を低下する方針も示された。
3号機は、核燃料を冷却するために緊急的に注いだ海水や真水が、格納容器内に深さ約六メートル残り続けている。水位が原子炉建屋一階を上回り、1、2号機より水量が多い。
同じ構造の2号機のデブリ取り出しで導入される予定の「気中工法」を3号機で応用するには、水の抜き取りが前提になる。格納容器とつながる下部の圧力抑制室(サプレッションチェンバー)から水を抜く計画だが、圧力容器のデブリを冷却する注水の継続は必須となる。このため、取水と注水の調整が出てくる。
東電の関係者は「次から次に課題が出てくる」と明かす。
サプレッションチェンバー内が満水になっているため、計画以上の荷重がかかり、設備劣化の進行が早い状態にあるという。デブリ取り出しと並行し、耐震補強も急がれる。
さらに、デブリから出る放射線を遮る水がなくなれば、作業の難易度が上がるとみられる。格納容器内の放射線量の上昇、放射性物質を含むダストの飛散も懸念される。
■半溶融
JAEAの研究で、3号機のデブリは温度などの条件から推測すると、「半溶融」の状態で時間をかけて崩落し、化学的に反応が起こりやすいものが残っている可能性があるという。
原子力分野では、過去に海外で消火が難しい金属火災が起きた事例もある。再臨界以外のリスクも考え、取り扱い方法を検討する必要がある。物質はゆっくり冷え固まることで成分の偏りなどが起こる場合もあり、デブリのサンプル分析も重要になる。
倉田さんは「号機ごとに燃料デブリの特徴が大きく異なることが分かってきた。福島第一原発事故以前の典型的な事故状況にとらわれすぎず、現場の観測結果、サンプルの分析を一層重視して検討を進めることが重要だ」と指摘している。
【廃炉の現場】(6)第1部デブリ取り出し 1~3号機総量880トン 技術開発が急務
福島民報 2020/11/14
東京電力福島第一原発1~3号機に残る溶融核燃料(デブリ)の総量は推計八八〇トン-。二〇一五(平成二十七)年ごろ、デブリの解析結果が明らかになると、廃炉関係者に衝撃が広がった。
単純な比較はできないとされるが、一九七九(昭和五十四)年に炉心溶融(メルトダウン)が起きた米国のスリーマイルアイランド(TMI)原発で取り出されたデブリの重量は、この六分の一以下だった。取り出し完了に事故から十年余りの歳月を要した。
■新工法
福島第一原発はメルトダウンの際、核燃料と一緒に圧力容器のステンレス鋼や燃料棒のジルコニウム鋼などが混ざり合い、事故前の重さの最大で四倍ほどにまで増えたとみられている。3号機のように鋼鉄製の足場や構造物の落下が確認されている原子炉もあり、重量のある構造物の撤去ができる高出力の取り出し機器や効率的な搬出技術が不可欠となっている。
来年からの2号機のデブリ試験取り出しでは、重さ十キロほどまで持ち上げられるロボットアームが導入される。今後の取り出し量の拡大を見据え、IRIDなどは産学官連携の体制で、新工法の研究を進めている。
その一つは原子炉格納容器の新たな貫通部に伸縮するレールを差し込む「アクセスレール工法」だ。レール上を移動する大型ロボットアームがデブリの取り出し、運び出しを担い、デブリを効率的に搬出できる利点がある。
新たな「アクセストンネル工法」では床に接しない新たなトンネル通路を格納容器まで差し込み、ロボットが取り出したデブリの通路を通して搬出する計画だ。
二つの手法では、作業をするための専用の建屋の増設など大掛かりな作業が求められる。建屋付近に一定の面積が必要になり、高線量の排気筒の撤去などの作業も必要になる。そのためIRIDは、建屋の代わりにデブリ搬出を担う専用の輸送台車を使う手法も検討している。
■残り3年余
二〇一三年八月に設立されたIRIDは組織する電力会社、メーカー、研究機関など原子力事業に携わってきた「オールジャパン」の人材が集い、廃炉の技術研究の中枢を担っている。奥住直明開発計画部長は「デブリ取り出しは技術的に可能と考えている」と強調する。
ただ、経済産業省が技術研究組合法に基づき認可したIRIDの活動期限は定款で十年と定められており、残り三年余りと迫る。期限の延長も可能とみられるが、IRIDは「現時点でどうするかは決まっていない」としている。
県原子力安全対策課は「デブリ取り出しが進めば、作業の難度はさらに上がる。国内トップの知見を生かせる体制を存続してほしい」と求めている。
【廃炉の現場】(7)第1部デブリ取り出し 保管に最大6万平方メートル 国は早く処分地決定すべき
福島民報 2020/11/15
「燃料デブリ一時保管施設には最大約六万平方メートルが必要」-。
二〇一九(令和元)年八月、東京電力福島第一原発で発生し続ける放射性物質トリチウムを含んだ処理水の扱いを検討する政府の小委員会で、東電側の試算が初めて示された。
それから一年が経過し、溶融核燃料(デブリ)取り出しの開始が来年に迫る中、構内での受け入れ先となる一時保管施設ですら、具体的な建設場所は「未定」の状態だ。このため、デブリの取り出し作業そのものを「見切り発車では」と懸念する声は多い。
■乾式保管
初期の取り出し作業では、「グローブボックス」と呼ばれる密閉された専用の機器で重さ、放射線量を測定し、一時保管した後、一部を研究施設などで分析する。
取り出し量が増えてきた際には「セル」と呼ばれる金属やコンクリートで密閉された施設を設置し、保管する。複数設けたセルの中で測定するとともに、放射線や放射性物質が外に漏れないようにする。セル内でも燃料を閉じ込めるための金属性の収納缶に乾燥した状態で入れる「乾式保管」を採用する計画だ。
セル内には取り出した後のデブリの熱量や放射線量の変化、ダスト濃度の数値を常時監視する装置を取り付け、「多重防御」を徹底する方針だ。収納容器一つに付き使用済み核燃料一体の三十分の一ほどの熱量のデブリのみを入れるため、東電は発熱量を相当小さくできると説明する。
東電は二〇二〇年代後半の一時保管施設の建設を目指すが、具体的な場所は廃炉中長期プランにも盛り込まれていない。
使用済み核燃料の保管施設を含めれば約八万一千平方メートルの広大な敷地が必要で、タンク群が占める面積の四分の一に当たる。
■議論先送り
一時保管を終えた後のデブリの最終的な処理・処分の方法については、いまだ方向性さえも決まっていない。政府と東電による廃炉の中長期ロードマップでは、「性状の分析などを進め、第三期に決定する」との記載のみにとどまり、本格的な議論は先送りされている。
二〇一六(平成二十八)年七月に原子力損害賠償・廃炉等支援機構(NDF)が廃炉戦略プランで、デブリを建屋内に閉じ込める「石棺方式」に言及した際、県内から猛反発が起きた。「石棺」の文言は修正されたが、県と関係十三市町村が間髪入れずに国にデブリを含む放射性廃棄物を県外で処分するよう要望した経緯がある。
福島第一原発が立地する大熊町の吉田淳町長は「デブリの最終処分をどこで行うのか、今のうちから検討、協議すべき」と訴える。廃炉の第一段階とも言える処理水処分でさえ結論が出ていない状況を踏まえ、「デブリは廃炉の本丸。影響の大きさは処理水以上だろう」と先を見据える。
「原子力事業において、廃棄物処理は逃れられない宿命。原子力政策を進めてきた国の責任で早期に最終処分地を決めてほしい」。吉田町長は言葉に力を込めた。