福島原発事故が福島県民の健康や生活に与えた影響を調べる新潟県の「健康・生活委員会」の生活分科会は11日、検証結果の取りまとめ案を大筋で了承しました。年内にも正式な報告書としてまとめ、その後検証総括委員会に報告します。
生活分科会は、福島から本県への避難世帯や避難を経験した世帯を対象に聞き取り調査を行ったほか、有識者による各種調査の報告を基に、避難行動や避難生活の実態を検証しました。経済的な面だけでなく、避難者が差別や偏見、定住・帰還の決断などに苦しむという精神的に置かれた環境についても議論しました。
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避難者への長期支援が必要 県の原発検証・生活分科会 取りまとめ案了承
新潟日報 2020/11/12
東京電力福島第1原発事故が福島県民の健康や生活に与えた影響を調べる「健康・生活委員会」の生活分科会は11日、新潟市中央区で開いた会合で検証結果の取りまとめ案を示し、委員が大筋で了承した。避難者への聞き取りなどを基に、長期化する避難生活の状況や難しい生活再建の実情など、原発事故が人々に深刻な影響を与えている実態を示し、周囲の理解や長期の支援が必要だと指摘した。
健康・生活委は、原発に関して県が独自に行う「三つの検証」の一つで、生活分科会と健康分科会に分かれる。生活分科会の議論は今回で終了する見通し。松井克浩座長(新潟大学教授)は、年内にも正式な報告書としてまとめ、今後開かれる検証総括委員会に報告する考えを示した。
取りまとめ案では、現時点で指摘できることとして6点を挙げた。被害の長期化については「依然として生活再建や地域再建について見通しが立てられず、不安を感じている人たちが少なくない」とした。「さまざまな『喪失』や『分断』が生じ、社会生活や人間関係などを取り戻すことが容易でない」と、生活再建の困難さにも言及した。
生活分科会は、福島から本県への避難世帯や避難を経験した世帯を対象に聞き取り調査を行ったほか、有識者による各種調査の報告を基に、避難行動や避難生活の実態を検証した。世帯人数や収入、就業形態の変化といった経済的な面だけでなく、避難者が差別や偏見、定住・帰還の決断などに苦しむという精神的に置かれた環境についても議論した。
松井座長は会合の終了後「避難生活を送っている方の苦しみ、被害は厳しいもので回復は難しいことが明らかになった。県民のみなさんにお伝えし、検証結果を踏まえて考えてほしいと願っている」と話した。
取りまとめ案は、文言の修正などを経て正式な報告書となる。残る健康分科会は議論が続いている。