2022年3月16日水曜日

原発への攻撃 「想定外」で片付けられぬ

 日本の原発は2011年の福島原発事故を踏まえた新規制基準で、航空機の衝突などを想定したテロ対策義務付けられましたが、ミサイル等による攻撃に対しては「想定外」となっています。しかしミサイルで攻撃され、格納容器が破壊され、さらに圧力容器(原子炉)が破壊されればその被害は想像を絶するものになります。
  ⇒(3月10日)日本の原発は戦争を「想定していない」 更田委員長
  ⇒(3月13日)周辺住民1万8千人が急性死亡! 原発攻撃時の被害想定報告書を隠蔽
 外務省が(財)日本国際問題研究所に委託した被害想定に対して1984年、100万kwクラスの原発で格納容器が破壊された場合、緊急避難しなければ最大1万8000人が急性被ばくで死亡し、住めなくなる地域は最大で87キロ圏内に及び、原子炉自体が破壊された場合にはさらに過酷な事態になるという報告書が出されました。
 外務省はあまりに甚大な被害なので当時、首相官邸にも原子力委員会にもその報告書を提出しませんでした。しかし「原発の推進に都合が悪いからそうしたものは秘匿する」で済まされてよい筈がありません。
 信濃毎日新聞が、「 ~ 『想定外』で片付けられぬ」とする社説を出しました。
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〈社説〉原発への攻撃 「想定外」で片付けられぬ
                         信濃毎日新聞 2022/03/15
 原発という施設が抱える危険性について、改めて考えるべき事態が起きている。
 ロシア軍によるウクライナの原発への攻撃である。侵攻直後にチェルノブイリ原発を占拠。稼働中の南部サポロジエ原発にも攻撃をかけ、支配下に置いた。東部ハリコフでは核物質を扱う研究施設も攻撃している。
 運転や核物質の管理に問題が起きれば、放射性物質が飛散し、大惨事を引き起こす恐れがある。
 万が一、日本国内の原発が他国から攻撃を受けた場合、どうなるのだろうか。そうした疑問から、有事の際の政府対応への関心が高まっている。
 2011年の福島第1原発事故を踏まえた新規制基準で、津波や地震への対策は強化された。航空機の衝突などを想定したテロ対策も義務付けられた。
 だが、軍事的な武力攻撃への対応については事実上、「想定外」となってきた。高性能ミサイルで狙われたらひとたまりもない。そう指摘する専門家もいる。
 岸田文雄首相は国会答弁で、国内の原発に警察の警備専門部隊を設置する議論を、政府内で始めると説明している。十分に対応できるものではない
 国民保護法には、日本が武力攻撃を受けた場合の手順が定められている。原子力規制委員会が運転停止を命じることができる。
 問題は、原子炉が止まれば安全が確保できるわけではない点にある。原発の核燃料は停止後も熱を発するため、注水などを行って冷却し続ける必要がある。
 冷却のための全電源を失い、メルトダウン(炉心溶融)を起こしたのが福島の事故だった。
 事故が誘発される可能性に限らない。そもそも、そこに放射性物質があること自体が危険で、ミサイルの直撃によって施設が爆発すれば飛散は防ぎようがない
 突き詰めると、行き着くのはリスクの想定をどこまで広げるべきか、という問いになろう。
 武力攻撃が事実上の想定外である状態を続けるなら、有事になれば放射能汚染から国民を守り切ることができない現実を、政府は率直に語るべきではないか。
 ごくまれに起きうる事態への対応としてはこれまで、火山の大規模噴火が問われてきた。1万年に1回の確率の噴火でも備えるべきだとの司法判断も出ている。
 ひとたび何かあれば取り返しの付かない結果を招くのが原発だ。福島事故を思い起こし、在り方を見直していかねばならない。