2022年3月5日土曜日

原発攻撃に非難が殺到 ロシアはウクライナの演出と否定

 ウクライナ南東部にある欧州最大級のザポロジエ原発ロシア軍に攻撃され、制圧されたと報じられました。原発が攻撃されるとはあまりにも無謀というほかはありませんが、米エネルギー省当局者は4日、同原発ロシア軍が攻撃した証拠を確認していないと述べました。

 ロシア側は「ロシア軍による攻撃だというのは、全くのうそだ」と否定し、4日の国連安保理ネベンジャ・ロシア国連大使はウクライナ当局による「ヒステリー」を作り出すための試みと反論しました。
 ロシア国防省は4日、ロシア軍は2月28日から同原発を「管理下」に置いており、火災ウクライナの「破壊工作集団」が放火したと強調し、4日未明にウクライナ側から襲撃を受け交戦したと主張しました。
 実際に火災を起こしたのは原発本体ではなく「訓練室」と呼ばれるところで原発は4日現在も正常に運転されているので、ロシアの主張も筋が通っています。
 関連する4つの記事を紹介します。
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原発攻撃に非難殺到 ロシアは「うそ」と否定 安保理
                           時事通信 2022-03-05
 【ニューヨーク時事】国連安全保障理事会は4日(日本時間5日)、ロシア軍がウクライナ南東部のザポロジエ原子力発電所を攻撃し制圧したことを受け、米英仏などの要請で緊急の公開会合を開いた。甚大な放射能汚染を引き起こしかねない行為に「極めて無責任。国際法に反する」(ディカルロ国連事務次長)などと非難が殺到。ロシア側は「ロシア軍による攻撃だというのは、全くのうそだ」と否定した。
 トーマスグリーンフィールド米国連大使は「信じられないほど無謀で危険な行為だった」と強調。負傷者の治療や原発の安全な運転継続を確保するため、ロシア軍に施設からの撤退を要求した。
 ウッドワード英国連大使も「稼働中の原発を国家が攻撃するのは史上初だ」と糾弾。原発やダムなどが紛争時の攻撃保護対象となると定めたジュネーブ条約に反すると訴えた。アラブ首長国連邦(UAE)のヌセイベ国連大使は、東京電力福島第1原発やチェルノブイリ原発の事故に言及し、「人類への影響は計り知れず、そのような事故を二度と起こしてはならない」と主張した。
 これに対し、ロシアのネベンジャ国連大使は「今回の会合は、人工的ヒステリーをたきつけようとするウクライナ政府の新たな試みだ」と反発。原発制圧は「ウクライナのテロリストが核で挑発しないようにするためだ」と正当化した。 


米、ロシアによる原子炉攻撃の証拠確認せず ウクライナ原発
                             ロイター 2022/3/5
[ワシントン 4日 ロイター] - 米エネルギー省当局者は4日、ウクライナ南東部にある欧州最大級のザポロジエ原子力発電所で起きた攻撃で、ロシアが原子炉を攻撃した証拠を確認していないと述べた。さらに、発電所の攻撃には小型の武器が使用されたもようという認識を示した。
ロシア軍は4日未明、ザポロジエ原発の一帯を攻撃し、原発の近くにある訓練用建物で火災が発生。その後、原発はロシア軍に占拠された。
エネルギー省の核エネルギー担当のフルビー次官はMSNBCに対し、米政府はザポロジエ原発で放射能漏れや原子力事故につながるような損傷は確認してないと強調。放射線量は「正常な水準」と報告されているとした上で、米政権はいかなるシナリオに対しても十分な用意が整っていると感じていると語った。


ロシア、ウクライナ「核開発」へ疑念も…全面降伏狙い原発制圧
                          読売新聞 2022年3月5日
 【モスクワ=工藤武人、ロンドン=池田慶太】ロシア軍がウクライナ南東部ザポリージャ原子力発電所を4日に制圧したのは、国内最大の発電施設を掌握して社会不安を増幅させ、ウォロディミル・ゼレンスキー大統領を全面降伏させるためだ。原発を巡って戦闘が激化すれば、周辺国を巻き込む大惨事につながる恐れがある。
 露国防省は4日の発表で、ザポリージャ原発の火災について、ウクライナの「破壊工作集団」が放火したと強調し、ロシア軍の関与を否定した。露軍は2月28日から同原発を「管理下」に置いており、4日未明にウクライナ側から襲撃を受け交戦したとも主張した。
 ザポリージャ原発は国内の電力の約4分の1を供給しているとされ、ロシア軍に奪われたことはゼレンスキー政権にとって大きな打撃だ。ウクライナの電源構成は原子力が総発電量の約5割を占める。ハンガリーなどに電力を輸出しており経済面でも痛手となる。

 露軍が制圧地域を拡大している南部には南ウクライナ原発もある。
 英国のジョンソン首相は4日、ゼレンスキー氏と電話会談し、ザポリージャ原発の状況について話し合った。ジョンソン氏は「プーチン露大統領の無謀な行動は欧州全体の安全を直接脅かしている」と非難した。そして国連安全保障理事会に緊急会合を早期に開くよう求め、ロシア軍による原発攻撃の問題を提起する意向を伝えた。
 ウクライナの原発を制圧するロシア軍にはもう一つの意図があるとの見方も出ている。
 ロシアはウクライナが核兵器を秘密裏に開発しているとの疑念を一方的に強めている。セルゲイ・ラブロフ外相は今月、「ウクライナに核兵器の保有を許してはならない」と述べた
 露軍は侵攻の開始直後、キエフ北方にあるチェルノブイリ原発を制圧した。ソ連時代の1986年に史上最悪の放射能汚染事故を起こした同原発は閉鎖されているが、職員は制圧後も解放されていない。ロシアがウクライナによる核兵器開発の「証拠」を作りだし、侵攻を正当化しようとしているとの見方も出ている。


国連緊急会合、ロシア原発攻撃を非難 チェルノブイリ事故の再発を警告
                             ロイター 2022/3/5
[ワシントン 4日 ロイター] - 国連安全保障理事会は4日、ロシアによるウクライナの原子力発電所への攻撃を受け緊急会合を開いた。米仏を含む多くが攻撃を厳しく非難したのに対し、ロシア国連大使はウクライナ当局による「ヒステリー」を作り出すための試みと反論するなど、亀裂は深まっている。
ウクライナ当局は4日、ロシア軍が南東部にある欧州最大級のザポロジエ原発を占拠したと表明。これについて安保理15カ国の多くが「深い懸念」を表明した上で、1986年のチェルノブイリ原発の爆発事故のような重大な事故が起きる恐れがあると警告。こうした攻撃は国際的な人道法に違反するとし、ロシアに対し核関連施設に対するいかなる軍事行動も行わないよう要請すると共に、ウクライナの原発職員が職務を継続するために立ち入りを許可するよう求めた。