2022年3月8日火曜日

「デブリ取り出しは不可能」と小出裕章氏 石棺で封じ込めるしかないと

 福島原発事故からまもなく11年になるなかで、廃炉は本当に可能なのか。AERA小出裕章・元京大原子炉実験所助教に聞きました

 小出氏はデブリの取り出しは100年たっても不可能であることを分かりやすく説明し、東電は一刻も早く福島県に「廃炉は不可能」と説明し、謝罪するべきであると述べました
 そしてできうることは、1986年のチェルノブイリ原発事故の時に実施したように、原子炉建屋全体をコンクリート製の構造物「石棺」で封じ込めるしかないと述べました
 石棺方式は小出氏が当初から主張していた方法で、やはりそれしかないように思われます。
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福島第一原発「デブリ取り出しは不可能」と専門家 廃炉できないなら「『石棺』で封じ込めるしかない」
                           AERA dot. 2022/3/7
                         ※AERA 2022年3月7日号
 東京電力福島第一原発事故からまもなく11年。国と東電は30~40年後の廃炉完了を目指すロードマップに基づき、作業を進めている。だが、相次ぐトラブルから廃炉作業の計画は大幅に遅れている。廃炉は本当に可能なのか。AERA 2022年3月7日号は、小出裕章・元京大原子炉実験所助教に聞いた。
   小出裕章 こいで・ひろあき/1949年生まれ。原発の危険性を世に問い続け、
       2015年に定年退職。著書に『原発事故は終わっていない』(毎日新聞
       出版)など
【ロードマップ】使用済燃料の取り出し開始~廃止措置終了までの道のりはこちら
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 国と東電が策定したロードマップは「幻想」です。
 国と東電がいう「廃炉」とは、燃料デブリを格納容器から取り出し、専用の容器に封入し、福島県外に搬出するということです。
 当初、国と東電は、デブリは圧力容器直下の「ペデスタル」と呼ばれるコンクリート製の台座に、饅頭(まんじゅう)のような塊になって堆積(たいせき)していると期待していました。そうすれば、格納容器と圧力容器のふたを開け、上方向からつかみ出すことができます。
 しかし、デブリはペデスタルの外部に流れ出て飛び散っていることが分かりました。デブリを上部から取り出すことができないことが分かったのです。
 そこで国と東電はロードマップを書き換え、格納容器の土手っぱらに穴を開け横方向に取り出すと言い出しました。しかしそんなことをすれば遮蔽(しゃへい)のための水も使えず、作業員の被曝(ひばく)が膨大になってしまいます。それどころか、穴を開けた方向にあるデブリは取り出せたとしても、格納容器の反対側にあるデブリはペデスタルの壁が邪魔になり、見ることも取り出すこともできません。
 つまり、デブリの取り出しは100年たっても不可能です。

 東電は「国内外の技術や英知を活用すれば廃炉はロードマップ通りに達成できる」などと繰り返し言っているようです。本気で考えているとすれば、相当なバカだと思います。ロードマップは彼らの願望の上に書かれたもので、その願望はすでに崩れています。
 廃炉できなければどうすればいいか。できうることは、1986年のチェルノブイリ原発事故の時に実施したように、原子炉建屋全体をコンクリート製の構造物「石棺」で封じ込めるしかありません
 人間に対して脅威となる放射性物質のセシウム137とストロンチウム90の半減期は、それぞれ30年と28年です。100年待てば放射能は10分の1に、200年待てば100分の1に減ってくれます
 100年か200年か経てば、その間に、ロボット技術や放射線の遮蔽技術の開発も進むはずです。そして、いつかの時点でデブリを取り出すこと以外ないと思います。
 国と東電は、それくらい長期にわたる闘いをしているんだと覚悟しなければいけません。
 そのためにも、一刻も早く福島県に「廃炉は不可能」と説明し、謝罪するべきです。悲しいことですが、事実を直視しなければ前に進めません。