伊方原発3号機の運転差し止め請求に対し松山地裁は18日、原子力規制委の審査判断は合理性があり「原告らの生命や身体を侵害する具体的危険があるとは認められない」というこのところの「型通りの理由」で請求を棄却しました。
また住民側が「避難計画に実効性がない」と訴えていた点については、「重大事故などが起きるおそれがあるとはいえない場合に、避難計画が不備であることのみによって、原告に具体的な危険が生じることはない」と否定しました。
「原発は安全だから住民に危険を生じさせない」という論理は「原発が安全」という証明がなければ成り立ちません。その証明を避ける一方で「危険性の立証」を住民側に求めるのは自らの無責任性を示すもので、「司法の役割を放棄」したと批判される所以です。
注 記事中に「科学の不確実性」という言葉が出てきますが、それは「〝生じる損害の大きさ″や〝結果発生の確率″について,科学的知見が欠けている」という意味です。
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原告らの生命に具体的危険ないと松山地裁
共同通信 2025/3/18
伊方原発3号機の運転差し止め請求を棄却した18日の松山地裁判決は、原子力規制委員会の審査判断は合理性があり「原告らの生命や身体を侵害する具体的危険があるとは認められない」と判断した。
伊方原発3号機 運転差し止め訴訟 訴え退ける判決 松山地裁
NHK NEWS WEB 2025年3月18日
愛媛県にある伊方原子力発電所3号機について、地元の住民などが運転の差し止めを求めた裁判で、松山地方裁判所は「原告の生命や身体を侵害する具体的な危険は認められない」として、訴えを退ける判決を言い渡しました。
伊方原発3号機について愛媛県の住民などは、2011年12月に四国電力に対して運転の差し止めを求める訴えを起こしました。
長期に及んだ審理で、原告の数は最大でおよそ1500人まで増え、裁判では地震や火山に対する安全性に加え、避難計画の実効性が主な争点になりました。
18日の判決で松山地方裁判所の菊池浩也裁判長は、「伊方原発が安全性を欠いているとは認められず、原告の生命や身体を侵害する具体的な危険があるとは認められない」として訴えを退けました。
住民側は、伊方原発の北の沖合にのびる「中央構造線断層帯」について、「四国電力は、より大きな地震動が到来するおそれがある場合を考慮していない」と主張しましたが、判決では「四国電力は横ずれ断層に関する知見や調査結果を踏まえて評価していて、不合理な点は見当たらない」と指摘しました。
また、住民側が「現状の避難計画に実効性がない」と訴えていた点について、判決では「重大事故などが起きるおそれがあるとはいえない場合に、避難計画が不備であることのみによって、原告に具体的な危険が生じることはない」と判断しました。
伊方原発3号機をめぐっては、広島と大分、山口でも運転の差し止めを求める集団訴訟が起こされていて、去年3月の大分地裁、今月5日の広島地裁の判決に続いて、住民側の敗訴となりました。
四国電力「主張認められた 運転に万全期す」
判決のあと、四国電力原子力本部の佐々木広行副部長は報道陣の取材に応じ「詳細は判決文を確認したいが、法廷で要旨を聞いた中では、基本的に私どものこれまでの主張を裁判所に認めていただけたと思っている」と述べました。
そのうえで、「安全性の向上に終わりはないということを肝に銘じ、最新の知見も取り入れつつ、今後も安全で安定した運転に万全を期していきたい」と話していました。
原告団の共同代表「判断 残念でならない」
判決の言い渡しのあと、裁判所の前で原告が「不当判決」と書かれた幕などを掲げると、集まった支援者からは落胆の声が聞かれました。
弁護士「願いを踏みにじる とんでもない判決」
判決のあと、原告と弁護団が会見を開き、判決を不服として控訴する方針を明らかにしました。
会見の中で、弁護団の事務局長を務める中川創太弁護士が声明を読み上げました。
声明では、「福島第一原発の事故の悲劇を二度と繰り返してはならないという願いを踏みにじるとんでもない判決で、司法の役割を放棄したものと言わなければならない。専門家の証言を無視するもので科学的に誤っているし、科学の不定性についても全く理解していない。事故が起きる具体的な危険が認められないから避難の必要性はないとして、避難計画の合理性の有無について検討さえしていない」と批判しています。
また、原告団の共同代表を務める松山市の須藤昭男さんは「残念でならず、涙も出ないほどあきれかえってがっかりした。私たちに必要なのは必ず勝つと信じていくことで、絶対に諦めず、長い闘いをしていかなければならない」と話していました。
専門家「不十分な想定に基づいた判決」
今回の裁判で原告側の証人として意見書を出した、地震地質学に詳しい高知大学の岡村眞名誉教授は「直近の地震や火山噴火など自然災害から得られた知見が取り入れられておらず、不十分な想定に基づいた判決だ」と述べました。
また、裁判の争点の1つとなっていた地震に対する安全性については、伊方原発で想定している地震の揺れが過小評価だとしたうえで「活断層の『中央構造線断層帯』が動けば地震で道路が通れなくなるだけでなく、津波にも襲われ、港が使えなくなり、半島に住んでいる住民が避難できなくなることは、能登半島地震の被災状況からも明らかだ。福島第一原発の事故を繰り返さないよう、最新の知見を取り入れてほしい」と話していました。
「具体的危険、認められず」 伊方原発3号機の安全対策 松山地裁
毎日新聞 2025/3/18
愛媛県西部の伊方町にある四国電力伊方原発3号機の安全対策に不備があるとして、地元住民ら約1500人が原発の運転差し止めを求めた訴訟の判決で、松山地裁は18日、請求を棄却した。菊池浩也裁判長は国の原子力規制委員会の審査が妥当だとし、「安全性を欠いているとは認められない」と判断した。
佐田岬半島の付け根にある伊方3号機は1994年に運転を開始。規制委は2015年、東京電力福島第1原発事故後の新規制基準に適合したと認めた。
住民側は訴訟で「運転中の事故で放射性物質が放出され、生命や身体への危険がある」と主張。12年半に及んだ審理では、原発施設の耐震性の目安となる基準地震動(650ガル)の妥当性や火山噴火対策、原発事故時の避難計画の有効性が主に争われた。
判決はまず、原発の沖合約8キロにある断層「中央構造線」による地震リスクを検討。調査に基づく四電の断層評価は適切なうえ、余裕を持たせて基準地震動を策定しているとし、不合理ではないと判断した。
火山噴火対策を巡っては、約130キロ離れた阿蘇山(熊本県)の地下浅い部分にマグマだまりは存在しないと言えることから、「巨大噴火は差し迫っていないとする四電の評価は合理的だ」と述べた。九州地方の別の火山による噴出物の想定も妥当だとし、安全性に問題はないとした。
住民側は事故時の避難計画に不備があると訴えたが、判決は事故が起きる恐れがないとして詳しく判断しなかった。そのうえで運転を認めた規制委の判断を追認し、「住民らに具体的な危険があるとは認められない」と結論付けた。
判決を受け、住民側は控訴する方針。四電は「安全性が確保されているとの主張が認められた。不断の努力を重ね、安全運転に万全を期したい」とコメントした。
3号機を巡っては、17年と20年に広島高裁が仮処分決定で運転を差し止めたが、いずれも四電側の異議申し立てで覆っている。24年以降では正式裁判による判決が大分、広島両地裁で出されているが、いずれも運転差し止めを認めなかった。【山中宏之】
◇原告側「諦めずに訴えたい」
「不当判決」。伊方原発3号機の差し止め請求を認めなかった判決を受け、住民側は松山地裁前で垂れ幕を掲げた。激しく雨が降る中、怒りの声が上がった。
松山市内であった記者会見には、原告や支援者ら100人超が集まった。住民側の共同代表で福島県出身の牧師、須藤昭男さん(83)=松山市=は「涙も出ないほどあきれる」と憤った。高裁で再び争っていくと述べ、「廃炉になる日が必ず来るので、諦めずに訴えたい」と話した。
住民側の代理人を務める中川創太弁護士は14年前の福島第1原発事故に触れ、「悲劇を二度と繰り返してはいけないという原告らの願いを踏みにじる判決だ」と批判した。弁護団と市民団体「伊方原発をとめる会」は共同で声明を発表し、「行政に追随し、司法の役割を放棄した。到底認めることはできない」と強調した。【鶴見泰寿、広瀬晃子】