新潟日報は20日、東電管内の1都8県の知事9人に対して行った、柏崎原発の再稼働の是非についてのアンケート結果を明らかにしました。
「再稼働を必要」と考えているのは埼玉県知事1人にとどまり、同知事が「再稼働に当たっては立地自治体における住民理解が不可欠」とコメントしたことを含めて、全ての知事が地元住民や自治体の意向が重要と考えていることが分かりました。
アンケートは各知事に対し書面で実施し、3月中旬までに全知事から回答を得ました。
全文を文字起こししましたので紹介します。
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東電管内9知事 本社アンケート 柏崎原発再稼働必要 埼玉のみ 他は明確意思示さず
新潟日報 2025年3月21日
東電電力柏崎刈羽原発の再稼働の是非について、東電管内の1都8県の知事9人のうち、「再稼働は必要」と考えているのは埼玉県知事1人にとどまることが20日、新潟日報社のアンケートで分かった。柏崎刈羽原発は、政府が県に対し再稼働への同意を要請しているが、県議会内には「電力消費地の意向が伝わってこない」との意見がある。だが、埼玉県以外の8都県の知事は再稼働の是非について明確な意思を示さなかった。
アンケートは政府の再稼働要請が21日で1年となるのに合わせ、東電の営業エリアに該当する東京、神奈川、埼玉、千葉、静岡、茨城、群馬、栃休、山梨の1都8県の知事に書面で実施。3月中旬までに、全知事から回答を得た。
柏騎刈羽原発再稼働の是非について、再稼働が「必要」と回答した埼玉県知事は「再稼働に当たっては立地自治体における住民理解が不可欠」とコメントした。
意思を示さなかった8都県の知事のうち、東京と栃木は「地元の理解を得ることが重要」などとし、神奈川は「地元住民や自治体の意向が重要」と答えた。千葉は国に対応を求めた。
原発の必要性に関する問いでは、群馬だけが「必要」と答え、「エネルギーは経済、国民生活の生命線」などと説明した。東京、千葉、静岡、茨城、栃木、山梨は「国が責任を持って決定していくべきだ」「国のエネルギー政策に関わる問題」などと回答した。
原発立地自治体と電力消費地の関係を巡る自由記述では、群馬が「新潟県議会言の議論について意見を述べる立場にない」、栃木は「エネルギー政策は国が責任を持って計画、施行していくもので、電力消費地から再稼働を求めるものではない」などと答えた。
東京は「原子力政策は国レベルで議論、検討されるもの。回答を差し控える」とした。
柏崎刈羽原発再稼働の是非
再稼働は必要 | 埼玉県 |
再稼働は必要ない | ー |
その他 | 神奈川県、千葉県、静岡県、茨城県、群馬県、栃木県、山梨県 |
選択肢を選ばず | 東京都 |
原発 の 必要性
必要 | 群馬県 |
必要ない | ー |
その他 | 神奈川県、埼玉県、千葉県、静岡県、茨城県、栃木県、山梨県 |
選択肢を選ばず | 東京都 |
「原発は国策」回答乏しく 電力供給不安は半数以下
東京電力管内の1都8県の知事に新潟日報社が行ったアンケートでは、柏崎刈羽原発が停止で東電の電力供給体制に[不安を感じる」と答えた知事は半数以下の4人だった。電気料金の値上げによる都・県民生活への影響については8人が「ある」と回答したが、柏崎刈羽原発の再稼働に対する消費地としての要望や意見は、「国策」などを理由に、具体的な回答は乏しかった。
「東日本は東京湾岸の火力発電に依存し、バランスと分散という意味で脆弱性が高い。日本海側にある柏崎刈羽原発の再稼働は極めて重要だ」―。14日、同原発再稼働問題の集中審議を行った県議会の連合委員会。参考人出席した経済産業省資源エネルギー庁の村瀬佳史長官は再稼働の意義をこう主張した。
× ×
だが、アンケートの回答からは、必ずしも東電管内の知事が電力供給に不安を抱いているわけではないことが分かった。
「ある程度不安を感じる」と答えたのは埼玉、千葉、群馬、栃木の4県知事。「大いに不安を感じる」と回答した知事はいなかった。
一方「あまり不安を感じない」を選んだのは神奈川と山梨の両県知事。茨城、静岡両県知事は「その他」、東京都知事は選択肢を選ばなかった。
「ある程度不安を感じる」を選んだ理由として、栃木の福田富一知事は老朽化した火力発電所の存在を指摘。2024年度は夏、冬ともに電力需要に対する供給の余力を示す「予備率」が最低限必要とされる3%を上回ったものの、「発電所のトラブルなどのリスクを踏まえると、逼迫が懸念される」とした。
これに対し「あまり不安を感じない」とした山梨の長崎幸太郎知事は「国が再生エネルギー導入と電力の地域間連系線整備に取り組んでいるため」と説明した。
茨城の大井川和彦知事は「22年6月を最後に東電管内で電力逼迫注意報の発令はないが、デジタルトランスフォーーメーション(DX)などの進展で電力需要増が見込まれる」とし、「どちらとも言えない」を結論とした。
東京都の小池百合子知事は「国や東電に電力価格の高騰抑制や需給の安定化を要望している」とした。
電気料金値上げによる住民への影響については、選択肢を選ばなかった東京都を除く8県が「大いにある」か「ある程度ある」と回答。多くの知事が、電力のほか物価全般の高騰を指摘し、静岡の鈴木康友知事は「企業活動にも影響を及ぼしている」とした。
× ×
14日の県議会連合委では自民県議が村瀬長官に対し、「1都8県の住民や知事らが柏崎刈羽原発の再稼働を本当に求めているのかが聞こえてこないのが現状だ」とぶつけた。県議会から根強く聞かれる声だ。
アンケートでは、こうした意見をどう考えるかも自由記述形式で問うた。
だが原発をどうするかは「国策」などとし、具体的な言及を避ける答えが目立った。
「エネルギー政策は安全性を前提とした上で安定供給や経済性などを勘案し、国が総合的に取り組むべき」(千葉・熊谷俊人知事)、「地元住民や自治体の意向が重要であり、回答は差し控える」(神奈川・黒岩祐治知事)といった内容だった。
東京電力の電力供給体制に不安を感じるか
大いに不安を感じる | ー |
ある程度不安を感じる | 埼玉県、千葉県、群馬県、栃木県 |
全く不安を感じない` | 神奈川県、山梨県 |
全く不安を感じない | ー |
その他 | 静岡県、茨城県 |
選択肢を選ばす | 東京都 |
電気料金の値上げによる都民・県民生活への影響
大いに不安を感じる | 神奈川県、静岡県、茨城県、山梨県 |
ある程度不安を感じる | 埼玉県、千葉県、群馬県、栃木県 |
全く不安を感じない | ー |
全く不安を感じない | ー |
その他 | ー |
選択肢を選ばず | 東京都 |
再稼働の賛否世論調査分析 東電管内では桔抗
本社加盟の日本世論調査会がこのほどまとめた原発に関する全国郵送世論調査の結果によると、東京電力柏崎刈羽原発の再稼働の賛否について、東電管内とほぼ重なる衆院比例ブロックのエリア(静岡県を除く)でみると、「どちらかといえば」を含めた「反対」が49・9%、「賛成」が48・9%で拮抗した。
設問では、東電が経営再建計画の柱として柏崎刈羽原発を再稼働させる方針で、昨年4月には7号機の原子炉に核燃料を装填し終えたとし、東電が原発を再稼働させることの賛否を聞いた。
衆院比例ブロックのうち、東電管内に入る「東京」「北関東」(茨城、栃木、群馬、埼玉4県)「南関東」(千葉、神奈川、山梨3県)の回答でみると、柏崎刈羽原発再稼働に「賛成」は13・8%、「どちらかといえば賛成」は35・1%、「どちらかといえば反対」は34・7%、「反対」は14・7%だった。
東京、北関東、南関東ブロックを個別でみても賛否は桔抗していた。
全国では、どちらかといえばを含め「反対」が計54・1%、「賛成」が計43・6%。本県を含む北陸信越ブロックでは「反対」が計63・2%で、「賛成」の計31・I%の倍たった。
調査はI~3月、全国の18歳以上の男女3千人を対象に実施した。
東京電力柏崎刈羽原発の再稼働への賛否
| 全 国 | 東電管内 |
再稼働に賛成 | 11.0 % | 13.8 % |
再稼働にどちらかと言えば賛成 | 32.6 % | 35.1 % |
再稼働にどちらかと言えば反対 | 39.4 % | 34.7 % |
再稼働に反対 | 14.7 % | 14.7 % |
無回答 | 2.3 % | 1.8 % |
注 四捨五入のため合計が100%にならない