2025年6月23日月曜日

原子力災害指針で改定案 新たに屋内退避解除要件 規制委了承(詳報)

 しんぶん赤旗に掲題の記事が載りました。
 改定案については19日付記事()で紹介済みですが、「詳報」として紹介します。
   6月19日)規制委、原災対策指針の改正案を了承 屋内退避の実現は課題残す

 本記事は「複合災害の具体化なし」の中見出しを立て、「世界的に見ても地震、津波などが多い日本では原子力災害は自然災害を起因とする確率が高く、原子力災害時の計画の実効性を考える上では、自然災害との複合災害の想定は不可欠」と述べています。
 単に「自然災害対策との連携の強化が必要」と指摘するだけでは何の役にも立ちません。能登半島地震からもう1年半が経過しているのに、この体たらくです。規制委はもっとまじめに取り組むべきです。
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原子力災害指針で改定案 新たに屋内退避解除要件 規制委了承
                       しんぶん赤旗 2025年6月19日
 原子力規制委員会は18日、原子力事故時に被ばくを低減するために行う屋内退避の運用について、その解除要件などを新たに盛り込んだ原子力災害対策指針(原災指針)の改定案を了承し、30日間の意見募集を行うことにしました
 原災指針では、近隣住民へ放射線の影響が及ぶ可能性が高い状態と判断された場合、原発から5キロ圏内の住民はすぐに避難となります。5~30キロ圏内の住民は被ばくを低減するため屋内退避し、その後、空間の放射線量などに応じて避難等に移行することになっています。
 規制委が設置した屋内退避の運用に間する検討チームは、約1年間の検討結果を報告書にまとめ、4月に規制委に報告しました。規制委は、それを受けて原災指針の改定を原子力規制庁に指示していました。
 改定案は、屋内退避について、
 ▽継続可否の判断は屋内退避実施後3日目を目安に、それ以降、日々行う
 ▽生活の維持が困難と判断される場合など、避難へ切り替える考え方
 ▽新たなプルーム(放射能雲)、が到来する可能性がなく、かつ、既に放出されたプ
  ルームが滞留していないことが確認できれば解除が可能
 ▽一時的な外出が実施できること
-などを盛り込んでいます。実効性が懸念されている、事故と自然災害が重なる複合災害に関しては改定の対象にしていません
 規制庁は原災指針改定後に自治体向けの関連資料を作成するとしています。

複合災害の具体化なし
 原子力規制委員会は、原発事故の際の屋内退避に関して、検討チームの報告を反映した原子力災害対策指針(原災指針)の改定案を了承しました。しかし、同改定案は、避難計画などの実効性が特に懸念されている原発事故と自然災害が同時発生する複合災害について具体化はありません
 昨年1月に発生した石川県の能登半島地震では、断水や家屋の倒壊、避難路の寸断、さらに一部の放射線施設が損傷し利用できない事態となり、同県に立地する志賀原発で事故が起きていれば、多くの住民が屋内退避も避難も困難でした。
 世界的に見ても地震、津波などが多い日本では原子力災害は自然災害を起因とする確率が高いとされています。原子力災害時の計画の実効性を考える上では、自然災害との複合
災害の想定は不可欠です。
 今回の改定の元となった報告書をまとめた検討チームの会合でも、複合災害時の災害対策の実効性についての懸念や具体的対策の検討の必要性について言及がありました。しかし、報告書では自然災害対策との連携の強化」が必要といった指摘にとどまりました

 規制庁の担当者は、複合災害に関して関係省庁との意見交換を始めたとしていますが、「自然災害でどういうことができているのか聞く、まだ第1段階」と説明しており、具体的な連携自体は始まっていません。   (松沼環)