2025年12月29日月曜日

県民の賛否は二分…柏崎刈羽原発“再稼働”へ 地元同意への1年

 FNNプライム28日、柏崎刈羽原発の再稼働が新潟県議会で承認され、知事が再稼働を正式に容認したことに関連し、この1年を振り返るやや長い記事を出しましたので紹介します。

 東電ホールディングスの小早川智明社長は25日までに産経新聞のインタビューに応じ、柏崎刈羽原発の再稼働に関し「原子力事業の信頼を回復するため、安全に運転できることを行動と実績で示す」と強調しまし

 毎日新聞が20、21日に実施した世論調査で、原発の再稼働について尋ねたところ、「賛成」が48%で、「反対」(21%)を大きく上回りました。3月に調査した際の「賛成」(41%)よりも7ポイント上昇しました。有権者の中で再稼働の容認が広がっているのでしょうか。
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新潟県民の賛否は二分…柏崎刈羽原発“再稼働”へ動いた1年 地元同意議論に終止符 国へ“承認”伝達「判断難しい課題だった」
                         FNNプライム 2025/12/28
新潟にとって大きな判断が下された2025年。東京電力・柏崎刈羽原発の再稼働への理解を求める国に対し、花角知事は12月23日、正式に再稼働を容認する意向を伝達した。2012年から止まっていた原発が再び動きだそうとしている。

国の再稼働の理解要請に花角知事が“承認”を正式に伝達
「今、出力がゼロになり、6号機が発電を停止した」
2012年に柏崎刈羽原発6号機が定期検査に入り、全ての原子炉が停止して13年。
2025年12月23日に赤澤経産大臣と面会した花角知事は「再稼働の理解要請に対して、了承することと致したい」と、国から理解要請を受けていた柏崎刈羽原発の再稼働を正式に了承した。
止まっていた柏崎刈羽原発の時計の針が動き出そうとしているが、この結論に至っては県民の意見が一つにまとまったわけではなかった。

市民団体が求めた県民投票条例案は否決も県民の意見を集約
2018年に知事に就任した花角知事。
賛否の別れる再稼働についての判断は、2018年に知事選に初めて挑んだときから「県民に信を問う」と繰り返してきた。
しかし、自身が示した再稼働是非の判断に対して、市民団体が求めた“県民投票”の実施に向けた条例の制定には「住民投票については課題がある。二者択一で得られる情報というのは限られてくる」と否定的な意見を出していた。
14万3000筆あまりの署名をもって直接請求された県民投票条例案は、その後、最大会派・自民党などの反対により県議会で否決される。
県民投票条例案が否決されたあと、報道陣から改めて“信を問う”方法について追及を受けた花角知事は「“信を問う”という言葉は想像できるものがあるよねと何度も申し上げている」と、これまでと同様に信を問う方法や時期について明言を避け続けていた。
こうした状況の中、25年6月に当時の石破首相は、柏崎刈羽原発で重大事故が発生した際の緊急時対応策を了承。これにより再稼働に向けた残る必要な手続きは“地元同意”のみとなった。
国からのプレッシャーを受ける中、花角知事は“県民の意見の集約”を目的に県民から直接賛否の声を聞く公聴会や県内30市町村長との意見交換を実施。
再稼働に対する県民の賛否の理由や不安の声、自治体の要望などに細かく耳を傾ける一方で、原発再稼働を急ぐ国に対しては、「柏崎刈羽原発で発電される電力が首都圏に送られているだけで、地元の地域にはメリットがない」と立地地域の“メリット”を求める活動を強めた。

再稼働時の“地元メリット”要望に国や東電も対応
「地元の要望も踏まえながら、特別措置法について対象地域を拡大するなど地域振興の取り組みを着実に強化してください」と当時の石破首相は、原発立地地域の振興に関する特措法の対象範囲を半径10kmから半径30kmに拡大することを決定した。
また、東京電力も地域貢献策として再稼働後、1000億円規模の資金を新潟県に拠出するなど県の要望に応える姿勢を示した。
しかし、この東電の表明に県議からは「新潟県民のほほを札束でたたいているようなもんじゃないですか」「金さえ出せば黙るだろうと思っておられるのでしょうか」と反発する声も。
25年11月に公表された県民意識調査でも約6割の県民が再稼働の条件は整っていないと回答する結果となった。

県民の意見集約を経て花角知事が下した結論は“再稼働容認”
公聴会や首長懇談会、県民意識調査を経て、県民の意見を集約する取り組みにメドをつけた花角知事。
「自分の肌で感じたい」と柏崎刈羽原発と福島第一原発の現状を視察した。
原発が停止して13年…再稼働への理解要請から、約1年半。
再稼働の是非に関する自身の判断を示すとして、11月21日午後に臨時会見を開いた花角知事は「7つの項目について国の対応を確認・確約をいただいた上で、新潟県としては了解することとする」と再稼働“容認”の判断を下した。

繰り返してきた“県民に信を問う”手法は「県議会に信を問う」
再稼働容認の判断を示した花角知事はこの日、県民に信を問うとしてきたその手法について“県議会で諮る”とも明らかに。
これに未来にいがたの大渕健県議は「自ら表明してきた信を問う、このことについて公約違反であります」と主張。
再稼働を前提とした補正予算案と自身を信任する付帯決議案の採決で信を問うとしたこの手法に、再稼働に反対する市民や県議は猛反発した。
県民の意見が一つにまとまらないまま迎えた採決の結果は、付帯決議案を提出した最大会派・自民党などの賛成多数で可決した。
花角知事は、再稼働判断を示した自身の信任が得られたとして、採決翌日の12月23日、国に再稼働を容認する意向を伝えた。
急遽面会することとなった高市首相からは「難しい中で大変なご決断をいただき、ありがとうございます」とねぎらいの言葉がかけられた。
そして12月24日、原子力規制委員会に原子炉の起動に必要な申請を行った東京電力。これにより再稼働のスケジュールは26年1月20日となった。
花角知事は「県民の気持ちは再稼働について、賛否両論割れている状態だと思っているので、それだけなかなか判断が難しい課題であった」と強調する。
福島第一原発事故後、原発をめぐる対立が顕在化している中、下された再稼働容認の判断。
地元同意の議論に終止符を打った形となったが、安全対策や避難路の整備についての議論に終わりはない。


柏崎刈羽再稼働「原発の信頼回復、安全運転で示す」 東電HD・小早川社長インタビュー
                           産経新聞 2025/12/25
東京電力ホールディングスの小早川智明社長は25日までに産経新聞のインタビューに応じ、柏崎刈羽原発(新潟県)の再稼働に関し「原子力事業の信頼を回復するため、安全に運転できることを行動と実績で示す」と強調した。同県の花角英世知事が再稼働容認を表明した後、小早川氏が報道機関の単独インタビューに答えるのは初めて。経営改善へ成長投資を加速する考えも示した。
柏崎刈羽原発の再稼働は、6、7号機に関し地元同意の手続きが完了した。小早川氏は「厳粛に受け止める」と強調。福島第1原発事故の当事者として「反省と教訓を生かし、安全対策に謙虚に取り組む」と語った。
柏崎刈羽原発は設備の古い1、2号機を廃炉の方向で検討。小早川氏は、比較的新しく、残る耐用年数が長い3~5号機などを念頭に「電力の安定供給に資する意味で稼働時間の長いものを選ぶことも重要」と活用を模索する考えを示した。
2051年の完了を目指す福島第1原発の廃炉作業は「目標達成のため無理するより、一歩ずつ前進する」と説明した。その上で「量の問題は別にしてデブリ(溶融核燃料)が取り出せたのは貴重な一歩だ」と語った。
福島事故の対策費用を抱える東電の経営は厳しい。小早川氏は経営改善に向けデータセンター事業などに言及し「開発事業者などと最適な投資の在り方をつくるのも重要」との考えを示した。


原発の再稼働「賛成」が48%、「反対」を大きく上回る 世論調査
                           毎日新聞 2025/12/26
 毎日新聞が20、21日に実施した世論調査で、原発の再稼働について尋ねたところ、「賛成」が48%で、「反対」(21%)を大きく上回った。3月に同様の質問をした際の「賛成」(41%)よりも7ポイント上昇しており、有権者の中で再稼働の容認が広がっているとみられる
   【グラフで見る】原発再稼働の賛否 年代別では?
 原発を巡っては、新潟県の花角英世知事が11月、県内にある東京電力柏崎刈羽原発の再稼働の容認を表明。北海道の鈴木直道知事も今月、道内の北海道電力泊原発の再稼働に同意するなど再稼働の動きが広がっている。特に柏崎刈羽原発が再稼働すれば、東電ホールディングスにとって東日本大震災に伴う福島第1原発事故以来、初の再稼働となる。
 調査方法が異なるので直接比較はできないが、2023年3月の調査で原発再稼働を進めることに「賛成」は49%あったが、24年3月には36%に落ち込み、「反対」(45%)を下回っていた。同年1月に死者・行方不明者700人の人的被害をもたらした能登半島地震が発生し、原発事故のリスクが再認識された影響とみられる。その後、現在と同じ調査方法で行った今年3月は「賛成」が41%となり、「反対」(29%)を上回った。
 再稼働の動きやその容認の広がりは、電気代の高騰などが背景にあるとみられる。ただ、今月の調査を男女別にみると、男女ともに賛成が反対を上回っているものの、男性の「賛成」63%に対し、女性は36%にとどまった。年代別では、どの年代も50%前後が「賛成」だが、「反対」については、18~29歳が15%、30代が13%、40代が17%、50代が20%、60代が21%、70歳以上が31%と高齢層ほど高くなる傾向にある。女性や高齢層ほど安全面に不安を持っている様子がうかがえる。

 また、「わからない」と回答した人が全体の30%に上っており、再稼働の賛否に迷っている有権者も多い。原発の再稼働を進めるためには、多くの人が納得、安心できる安全対策が必要となる。【野原大輔】