2022年9月24日土曜日

柏崎刈羽原発の超法規的再稼働 官邸(嶋田隆首相秘書官)が密かに計画

 元経産官僚の古賀茂明氏が日刊ゲンダイに驚くべき記事を「特別寄稿」しました。
 それによると政府は、電力が逼迫し停電のおそれがある場合には、規制委の承認なし国の責任で、柏崎刈羽原発を緊急に動かすようにすることを考えているということです。
 これでは曲がりなりにも10年以上続いてきた原子力規制委の認可制度が「単なるお飾り」に化してしまいます。国の責任と言いますが、それは言葉だけの話でその実態は〝ゼロ”であるのはご存知のとおりです。
 原子力ムラがひたすら原発を稼働させたがっているのはそれによって利得があるからで、首相が正しい判断力や信念を持っていればそんなことは絶対に認めない筈ですが、岸田氏にそんな見識や信念があるようには見えないので、それが実現する可能性はゼロとはいえません。
 夏の冷房は電力が100%ですが、冬の暖房はガスが主体なので冬場で逼迫することはありません。来夏までにいま休み状態にある火力発電を整備して稼働させたり、電力網の融通を合理化するなど尽くすべき手段はあります。
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【特別寄稿】古賀茂明
原発再稼働“影の主役”は嶋田隆首相秘書官 その狙いは「東電救済」だ
                     古賀茂明 日刊ゲンダイ 2022/9/23
 9月9日、私は某メディアの取材メモを入手した。岸田文雄総理の首席秘書官、嶋田隆氏を取材したものだ。そのポイントは、今冬、来冬の電力需給が厳しくなるので、東京電力柏崎刈羽原発を再稼働させる仕組みを作るということ。原子力規制委員会が認めない限り原発の稼働は法律上不可能だが、現時点では、東電の危機管理体制などに大きな問題があるため、柏崎刈羽原発には、安全審査通過後も規制委が事実上の運転停止命令をかけている。そこで、停電のおそれがある場合などには、規制委の承認なしで国の責任で緊急に動かすことにしようというのだ。
 ⇒ 原発への武力攻撃で「急性死1.8万人」の衝撃試算! 3.11から11年、日本は再稼働へ前のめり
 その際、東電に対して、国が柏崎刈羽の再稼働を保障することで、東電が狙う家庭向け電力料金値上げを止めることも併せて検討されている。
 規制委の権限を無視して原発を動かすためには、新たに法律が必要になるが、それも「一気に国会に議論してもらう」という
 これが本当なら大特ダネだが、まだ記事にはなっていない。私は半信半疑だったのだが、17日付日本経済新聞を見て、「やはりそうか」と思った。「東電、法人向け料金値上げ 柏崎刈羽の再稼働織り込む」という見出しの記事が伝えたのは、東京電力が2023年4月から法人向け標準料金を値上げすると発表したことだ。
 ただ、そこにはさらに重要なことが2つ書いてあった。第1に、この値上げは、電力の卸売市場での調達価格や自社発電所で使用する燃料費が上昇した分を販売価格に転嫁するためのものだが、なぜか、家庭向けの値上げはしない。第2に、東電は前提として柏崎刈羽原子力発電所7号機の来夏の再稼働を織り込んで「顧客の負担軽減」につなげると説明した。この2点を合わせると、柏崎刈羽を再稼働させることが家庭向け料金値上げ見送りの条件になっていることがわかる。

 ここから予想される今後のシナリオは、以下のようなものだ。
 東電と経済産業省は、今冬以降の「電力不足」をことさらに宣伝する。その上で、柏崎刈羽原発を緊急時に備えて試運転することを認めてもよいのではないかと国民に訴え、規制委が認めていない段階での「緊急運転命令」を政府が出せる法律を国会で通す。そして、冬や夏のピーク時直前に、「停電になる!」と称して、柏崎刈羽原発を再稼働させ、これにより「停電回避できた!」と宣伝する。国民は安堵し、反原発の勢いは一気に衰える。規制委も運転を認め、地元も同意する……
 そこまでして原発を動かすのは、何よりも、原発稼働を認めて東電の経営を楽にする「東電救済」が目的だ。嶋田秘書官は、元経産省次官。原子力損害賠償支援機構(当時)の理事や東電取締役も経験している。将来の東電会長という噂もあった「東電」側の人間だ。彼のシナリオが実現するのか? 原子力ムラの今後の動きに要注目だ。(古賀茂明/元経産官僚)