2022年9月29日木曜日

福島第1原発廃炉 規制委員会前委員長が言及

 原子力規制委員会の前委員長の更田豊志さんが日本テレビのインタビューに応じました。
 更田さんは審査加速の圧力に対しては、「日本は断層あっちこっちにあるので、それだけ審査も難しくなる私たちは要求する安全のレベルを引き下げるつもりは毛頭ない」と語りました。
 福島第一原発の廃炉については、デブリのすべて取り除くことはできず、原子炉建屋の底部についてはその場でいったん固めるのが現実的だ」と述べました。固める素材としては特殊セメントくらいしか思い浮かびませんが具体的な言及はなかったようです。
           ~~~~~~~~~~~~~~~~~~
福島第一原発「廃炉の現実」 規制委員会トップが異例の言及
                          日テレNEWS 2022/9/28
原発の安全性を審査する原子力規制委員会が発足して、今月で10年を迎えます。国が原子力政策を積極利用に転換する中、委員会のトップを務めた更田豊志さんが日本テレビのインタビューに応じました。更田さんが語った、福島第一原発の「廃炉の現実」とは?
     ◇
日本テレビのインタビューに答えたのは、「原子力規制委員会」発足当時からのメンバーで、委員長を務めた更田豊志さんです。
原子力規制委・前委員長 更田豊志さん「いろんな意味で、変化に富んだ10年だったかなと」
更田さんは28日、5年の任期を終えて、職員を前に退任の挨拶をしていました。
     ◇
原子力規制委員会が発足したのは、10年前の2012年でした。東京電力福島第一原発で原子炉がメルトダウンし、水素爆発に至った事故の翌年でした。
田中俊一初代委員長(2012年9月)「原子力規制行政の信頼が完全に失墜している中で発足する、原子力規制委員会と規制庁でございます」
原発の安全性の審査などが役割ですが、国民の不信感が押し寄せていました。
2014年、川内原子力発電所の再稼働審査に反対するデモが行われ、川内原発の設置変更許可の決定を発表した際にも、「やめろ!」と声が上がっていました。
     ◇
しかし、今、状況は一変しつつあります。今月22日、経済産業省・原子力小委員会のリモート会議では、次のような発言がありました。
資源エネルギー庁「将来に向けた次世代革新(原子)炉のリプレイス・新増設は、避けて通れない道」
ウクライナ情勢もあり、電力が不足する中、国は積極的な原子力利用へとかじを切ったのです。
 「安全性が確認された原子力発電所の再稼働というのは、早めに進めていくことが求められると思います」
今や規制委員会は、審査をもっと急ぐよう求められる状況です。この状況に対して、更田さんは語気を強めました。
原子力規制委・前委員長 更田豊志さん日本は断層あっちこっちにありますから、厳しい条件にあるのは事実だし、それだけ審査も難しくなると思います。私たちは、要求する安全のレベルを引き下げるつもりは毛頭ありません
     ◇
さらに、更田さんが在任中、特に取り組んだのが、福島第一原発の廃炉でした。
国は廃炉を40年で終わらせるとしていますが、「最難関」と言われる溶け落ちた核燃料・燃料デブリの本格的な取り出しは、まだ先が見えない状況です。この状況について、更田さんは次のように述べました。
原子力規制委・前委員長 更田豊志さん「すべての放射性物質を取り出すとか、ゼロにするということは、技術的にはなかなか考えにくくて。できるだけ量を減らす努力はするけど、あとは現場をいったん固めてしまう、安定化させてしまうということは、現実的な選択肢なんだと思います
溶け落ちた核燃料・燃料デブリは、原子炉圧力容器や格納容器の底にたまり、こびりついています。
更田さんは「これらをすべて取り除くことはできず、原子炉建屋の底部については、その場でいったん固めるのが現実的だ」との考えを示しました。
原子力規制委・前委員長 更田豊志さん「(原子炉建屋)底部はかなりの幅で、固めてしまわないと難しいかなと」
取り除けないで残る燃料デブリの存在と、その扱いについて、規制委員会トップとして踏み込んで述べるのは異例のことです。

国が原発の積極利用に舵を切る中、福島を忘れず、その独立性を保(たも)てるか。原子力規制委員会の“次の10年”が問われています。