2022年9月5日月曜日

原発の再稼働や新設では日本のエネルギー危機は解決しない 独研究者が警鐘

 日本のエネルギー政策を研究するドイツ人研究者が、原発の再稼働や新設では日本の電力不足は解消されないばかりか、新たな事故発生のリスクを高めると指摘しました。

 そもそも原発の改修には膨大な時間と費用を要するものの、新基準でもサイバーセキュリティや気候変動といった新しい脅威には対応していません。
 地球規模の気候変動によって海面が上昇しつつあるので、新規の基準値をさらに上回る波高の津波が原発に被害を与える可能性が高まっているということです。
 また今回の指摘には含まれていませんが、日本では原発が市街地に接近して立地しているため実効性のある避難計画が立てられません。また海外からの攻撃に対しても無力で、これらは致命的な欠陥です。
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「原発の再稼働」や「新設」では日本のエネルギー危機は解決しないこれだけの理由─ドイツの研究者が警鐘
                        クーリエ・ジャポン 2022/9/4
世界的なエネルギー価格の高騰を受け、日本政府は原発を積極的に活用する方針を表明した。しかしながら、日本のエネルギー政策を研究するフロレンティン・クロッペンボルグは、原発の再稼働や新設では日本の電力不足は解消されないばかりか、新たな事故発生のリスクを高めると指摘する。

高まる「新しいリスク」
ロシアによるウクライナ侵攻は、世界のエネルギー市場に深刻な影響を及ぼし、燃料価格の高騰を引き起こしている。
こうした世界情勢を受け、日本の岸田文雄首相は、原発の再稼働を推進する意向を発表した。世論調査によれば、日本国内でも原発の再運転を支持する人が過半数を超えた。これは2011年に東京電力福島第一原発で事故が起きてから、初めてのことだ。
事故の発生後、日本は安全面に配慮して国内の全原発を停止した。それから日本のエネルギー自給率は急降下し、世界市場の価格変動に大きな影響を受けている。

だが原発を再稼働しても、昨今のエネルギー危機を解決することはできない。
原発を再稼働するには、そのリスクを最小限に抑えるために導入された新規制基準を満たし、原子力規制委員会(NRA)の安全審査に通過するための改修工事が必要だ。つまり、電力事業者は膨大な時間とコストという負担を抱えることになる。
また、2013年に施行された新基準の主たる目的は福島で起きたような原発事故の再発防止だ。それゆえ、サイバーセキュリティや気候変動といった新しい脅威には配慮していない。たとえば、新たに設置が義務付けられた防潮堤は、過去最大の津波の波高より高く建設するよう規定されている。しかしながら、地球規模の気候変動によって海面が上昇しつつあるいま、過去の記録を超える波高の津波が日本沿岸の原発に被害を与える可能性が高まっている
2022年1月までにNRAは、国内の再稼働可能な35基の原子炉のうち、17基の再稼働申請を認可した。しかしながら、そのなかには改修およびメンテナンス中の原子炉もあるため、全基が発電できるわけではない。日本の原発による発電の割合は2018年には6%だったが、2020年には4%に落ち込み、日本政府の戦略的エネルギー計画で目標とされる20~22%に達するにはほど遠いのが現状だ。
原発の新設も最低10年はかかるため、エネルギー供給危機の即時解消には結びつかない。