2022年9月7日水曜日

むつ市中間貯蔵施設 市の新税に国が同意/核燃料の搬入 めど立たず

 青森県むつ市に建設中の使用済み核燃料中間貯蔵施設に関し、寺田稔総務相は6日、市独自の「核燃料税」の新設に同意しました。これは市議会が20年3月に可決した条例が、事業者のRFSにとって負担が大きく事業が立ち行かなくなるとして市と減免協議を続けてきたものです。核燃料税は法定外普通税で、搬入時の課税は免除し使用済み核燃料1キロ当たり年間620円を課税するというものです

 中間貯蔵施設はおととし原子力規制委の審査に合格し、先月追加の安全対策工事の認可も受けました。操業開始は暫定的に「来年度」としていますが、いつから燃料が搬入されるのか、まだめどはたたず、税の徴収までには課題が残っています。
河北新報青森放送の記事を紹介します。
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青森・むつの中間貯蔵施設 市独自の核燃税新設に同意 総務相「理解得る努力を」
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 青森県むつ市に建設中の使用済み核燃料中間貯蔵施設に関し、寺田稔総務相は6日、市独自の「核燃料税」の新設に同意した。事業者のリサイクル燃料貯蔵(RFS、むつ市)に対し、燃料の貯蔵量に応じて課税する。
 RFSが課税に難色を示しているのを踏まえ、寺田総務相は市への技術的助言として、「納税義務者の理解を得る努力を続けるようお願いする」と求める通知を発表した。
 核燃料税は法定外普通税で、使用済み核燃料1キロ当たり年間620円を課税する。市は貯蔵開始から5年間で、税収5億8400万円を見込む。中間貯蔵施設は2023年度の操業開始を目指している。
 同意を受け、宮下宗一郎市長は6日の市議会9月定例会で「長年にわたる市政の重大案件について、完全な形で決着がついた」と報告した。

 新税を巡っては、市議会が20年3月に関連条例を可決。RFSは「負担が大きく事業が立ち行かなくなる」と主張し、市と減免協議を続けた経緯がある。市は今年に入り、搬入時の課税は免除し、貯蔵に対する税額も大幅減額する譲歩案をまとめ、条例を改正。総務省に協議を申請した。
 総務相の諮問機関である地方財政審議会が4月から協議を重ね、新税に「同意すべきだ」との意見を8月に出していた。
 中間貯蔵施設は、RFSに出資する東京電力、日本原子力発電の原発から出た使用済み核燃料を最長50年保管する。原子力規制委員会から8月、詳細設計の認可(設工認)を受け、本格的な安全対策工事に入る。
 ただ、操業に向け手続きが進む一方で、燃料の搬出先となる再処理事業など核燃料サイクル事業全体は先行きが見通せない。同意を受け、RFSは「収支計画を立てられず、新税が経営に与える影響を見極められない。まず事業開始に向けて安全対策工事に注力したい」とコメントを出した。

■宮下市長「市民に責任果たせた」50年で1000億円以上の財源確保を試算
 むつ市の「核燃料税」について、寺田稔総務相が同意した6日、宮下宗一郎市長が記者会見し「地方自治の夜明け」と喜んだ。新税の創設に「市民への責任を果たせた」と話した。
 核燃料税は自主財源の確保が狙い。宮下市長は今後50年で1000億円以上の財源確保を試算する。「産業の複線化や新産業創出の予算として、市の自律的発展につなげたい」と説明。子育て、教育分野への投資にも触れ「子どもたちが伸びやかに育つ環境をつくる」と述べた。
 新税を巡っては、市は当初、使用済み核燃料の搬入時に1キロ当たり1万9400円、貯蔵1年ごとに同1300円を課税する計画だった。しかし、中間貯蔵事業を運営するリサイクル燃料貯蔵(RFS)との協議が難航した。
 結局、市が設定した貯蔵する燃料1キロ当たり年620円の税額は、東京電力柏崎刈羽原発が立地する新潟県柏崎市が2020年に決めた独自課税と同額となった。大幅な譲歩となったが、宮下市長は「柏崎原発から使用済み核燃料を搬入する。同額なのには整合性がある」と説明した。
 ただ、中間貯蔵施設に使用済み核燃料が搬入されるめどは立っていない。「いつ始まるかは関係ない。財源を獲得できたことが大きい」と強調。RFSに対して「安全に事業を開始できる環境をいち早く整えてほしい」と求めた。


核燃料の搬入 めど立たず 新税導入への課題 (青森県)
                             青森放送 2022/9/6
 中間貯蔵施設は核燃料サイクルを支える施設の1つですが、いつから燃料が搬入されるのか、まだめどはたっていません。
 税の徴収までには課題が残っています
 中間貯蔵施設はおととし原子力規制委員会の審査に合格し、先月追加の安全対策工事の認可も受けました。
 操業開始は暫定的に「来年度」としています。
 この施設には親会社の東京電力と日本原子力発電の原発から出る使用済み核燃料が運ばれることになっています。
 しかし両社の原発は福島第一原発の事故のあと再稼働しておらず燃料搬入時期のメドはたっていません。
 また中間貯蔵の前提となる核燃料サイクルは、六ヶ所再処理工場の完成時期の延期が再び検討されていて、第二再処理工場の議論も棚上げされたままで先行きは不透明です。
 新税導入決定を受けリサイクル燃料貯蔵は「電力会社から具体的な搬入計画が示されていないことから弊社の収支計画を立てられない。
 従って本税が経営に与える影響を見極められない。
 まずは事業開始に向け安全対策工事に注力する」とコメントしています。