2022年9月30日金曜日

洋上風力の人材育成、秋田が一大拠点に 日本郵船が設置検討

 海運大手日本郵船が秋田県に大規模な人材育成拠点の設置を計画しています。
 洋上風力の管理に必要な技術者が非常に不足しているため、風力発電技術者養成所を24年に開所し、将来的に年間1000人規模の訓練を見込むということです。
 港~風力発電施設間の作業員輸送船運航のための海技士の養成も行います。
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洋上風力の人材育成、秋田が一大拠点に 日本郵船が設置検討
                            毎日新聞 2022/9/30
 国が大量導入を目指す洋上風力発電を巡り、海運大手・日本郵船(東京都)が秋田県に大規模な人材育成拠点の設置を計画していることが29日、関係者への取材で判明した。洋上風力は技術者不足が課題となっている。東北電力や秋田県、県立男鹿海洋高(男鹿市、船木和則校長)とも連携し、全国から訓練生を受け入れる一大拠点とする狙いだ。【猪森万里夏】

◇東北電、県、県立高と連携
 国は洋上風力を再生可能エネルギー普及の「切り札」と位置付け、2030年までに1000万キロワット(原発10基分)、40年までに3000万~4500万キロワット(原発30~45基分)の導入を掲げる。
 ただ、国内に本格的に稼働を開始した洋上風力発電所はまだなく、専門的な経験を積んだ人材は少ない。日立製作所など日本の風車メーカーも相次ぎ生産から撤退し、海外メーカーの機器に対応できる人材の確保も急務となっている。
 さらに、風車の保守管理などに当たる作業員は、米ゼネラル・エレクトリック(GE)などの海外勢からなる国際非営利組織「GWO」の認証を取得することが事実上求められている。だが国内でGWO認証に対応した訓練施設は現在、北九州市の1カ所しかない。
 こうした中、日本郵船などは新たな拠点の整備に乗り出す。関係者によると、24年の運用開始を目指す。将来的に年間1000人規模の訓練を見込む
 30日にも国の「洋上風力発電人材育成事業」の対象事業の一つに採択される見通しだ。同事業は、洋上工事の調査や開発に関わる技術者、保守管理の作業員などの育成を国が支援する制度で、国は6億5000万円の予算を計上している。
 一方、男鹿海洋高は実習船や水深10メートルのプールを備え、生徒が船の操縦や潜水技術を学べる県内唯一の水産高校だ。秋田県沖は計約200万キロワットと全国屈指の規模で洋上風力の導入計画が進む区域でもあり、同校は港と風車を往復する作業員輸送船(CTV)などの船員を輩出すべく、生徒らに「海技士」の国家資格取得を推奨するなど、これまでも人材育成に注力してきた。
 新たな拠点では、同校のプールや男鹿市の廃校なども活用し、「GWO」の認証取得に加え、船を操る乗組員の訓練カリキュラムなどを作成する予定だ。
 秋田県の洋上風力発電の人材育成プロジェクトチームのリーダーを務める東京大学先端科学技術研究センターの飯田誠特任准教授は「秋田に限らず洋上風力の人材は不足している。民間と教育機関が連携しながら拠点を作れば、地元の若者にとっても風車の仕事がより身近になるのでは」と評価している。
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 また、洋上風力発電の「有望な区域」に指定されている「秋田県男鹿市・潟上市・秋田市沖」は、30日にも「新潟県村上市・胎内市沖」「長崎県西海市江島沖」とともに国が優先的に発電施設を整備する「促進区域」に指定される見通し。秋田県の沿岸4区域は全て促進区域となる。