2022年9月6日火曜日

放射性廃棄物処分と原発事故の後始末 高校生 地域が抱える課題を知った夏

 福島県と北海道寿都町の高校生たちは夏休みに相互の現場を訪れて、遠い場所の問題でも自分に関係していることを知って考えた今回の研修でした。高校生たちは研修を踏まえた今後の街づくりや課題の解決に向けた提言10報告会の形で発表するのに向けて準備中です。福島テレビが伝えました。

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放射性廃棄物と原発事故 地域が抱える課題を知る夏 北海道と福島の高校生が原子力を考える【福島発】
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<担当者の説明に熱心に耳を傾けるのは、福島県と北海道寿都町の高校生>
「最終的にアルプスで浄化された水っていうのは、このように無色透明になって出てきます」
海への放出が計画されている福島第一原発の処理水について説明する、東京電力の担当者。
北海道 寿都高校・中山凌空さん:「印象が全く変わりました。飲めるって聞いて、驚きから」
北海道寿都町は、原子力発電に関わる高レベル放射性廃棄物の最終処分場選定について文献調査が行われている場所だが、福島第一原発事故と処理水の海洋放出は遠い世界の話だった。それは、福島県の高校生にとっても同じこと
共通して原発に関わる課題を抱える2つの土地の高校生に、自分の事としてとらえて将来の街づくりを考えてもらおうと、福島県広野町のNPO法人が互いの場所を訪れて学ぶ機会を作った。
寿都高校・蛯名翔大さん:「想定していたよりも、事故の痕跡がまだ残っていたというか。そういう所を見れて、いい経験になったと思います」
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<改めて目の当たりにする現状…難しい判断を下した町長の思いに触れる>
参加したのは、東日本大震災当時4歳から6歳だった高校1年生と2年生。
福島県大熊町出身で安積高校(福島県郡山市)に通う坂本卓海さんは、改めて目の当たりにした被害に衝撃を受けていた
福島県 安積高校・坂本卓海さん:「僕も大熊から避難して郡山に来たという経緯があるんですけど。やっぱり、自分より辛い人もいるんだなって」

福島第一原発と周辺を視察した翌日。
第一原発が立地する双葉町と大熊町の町長から、震災後の復興について話を聞く機会が設けられた。
大熊町・吉田 淳町長:「私達の時代で世代で処理っていうんですかね。判断して処理していく事が必要じゃないか。先延ばしすれば全ていいって訳ではない」
吉田町長が『次の世代には先延ばししない』と話したのは、第一原発で増え続ける処理水の海洋放出。漁業関係者が強く反対し、新たな風評も心配される中で下した吉田町長の決断への思いに触れた。

そして、続けて訪れた北海道寿都町でも重い決断について話を聞いた。
寿都町・片岡春雄町長:「勇気を持って一石を投じる。今が最高のチャンスなんじゃないか、そういう思いで2年前に文献調査に応募した。これは最終的に、ずっと先送りしたらきょう研修会に参加している皆さんの方にのしかかってくる話。誰かの時に解決しなきゃならない
片岡町長も大熊町・吉田町長と同じく『先送りできない』という考えを口にした。
文献調査に応募した理由を『全国的な議論となるよう一石を投じたかった』と説明した片岡町長。
町の人口は、この20年で3割・約1200人減少し、いまは2700人余り。
風力発電で1年間に7億円から8億円の収入を得てきたが、電力会社の買い取り価格が下がる見通しで、今後収入は減少する。
過疎化が進み財政が厳しくなるなか、文献調査に伴う最大20億円の交付金も大きな存在で、寿都町は存続できるかという危機感も背中を押したという。

しかし、結果として寿都町は二つに割れた。
寿都町で会社を経営する吉野さんは、一貫して反対してきた。
吉野寿彦さん:「寿都町って検索したら『核のゴミ』と出てきますよ。受け入れる・受け入れないよりも、反対に『交付金を貰ってやめる』っていう考え方も段々皆さん分かってきているから。最初は「核のゴミ」問題を争点にして戦ったけど、争点はそこじゃないんですよ。倫理的なものが争点になっている」
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<寿都町長が高校生に語る…理解したうえで議論する重要性>
寿都町を二分した自らの決断。片岡町長はこれまでの経緯も踏まえて、理解した上で広く議論することが重要だと生徒たちに話しかけた。
寿都町・片岡春雄町長:「まだ何も理解していない中で、感情的に賛成・反対ということは、私は無責任な行動じゃないかと思うので。とにかく学ぶという。こことどう整理していくかっていうのが一番の課題だと思っています

福島と寿都の現状と課題、そしてトップの決断に触れた生徒たち。
参加した生徒:「一部だけにとらわれちゃって、賛成・反対って言っているかもしれない。そこも理解できるような講習会が必要」
研修を踏まえた今後の街づくりや課題の解決に向けた提言は、10月の報告会で発表するが、途中の段階でも考えをまとめて共有する。
参加した生徒:「(問題に対して)学ぶきっかけを作らなければならないという意見が出て、学べば人に押し付け合うばかりではなくて、日本全体で協力出来るような体制になるんじゃないかと考えました」
参加した生徒:「例えば、原発を作る時に一緒に処理場を作ろうというのが良い思うという意見が出ました」
福島と寿都…互いの場所を訪れ、遠い場所の問題でも自分に関係していることを知って考えた今回の研修。学びも刺激も多い1週間となった。
寿都高校・中山凌空さん:「福島の原発は福島だけでじゃなくて。寿都だけでなくて、日本全体が関係してるんじゃないのかなというのはありましたね」
ふたば未来学園・石上琴乃さん:「自分の意見よりも、ただ伝えるだけよりも、そういう自分が知らない世界・自分が知らない意見を知る事の重要性っていうものをまず意識していきたい」
原発事故と避難地域の復興、そして高レベル放射性廃棄物の最終処分場の行方。
将来を担う生徒たちはどう向き合っていくのか、オンラインで勉強会や意見交換を続け10月の報告会までに考えをまとめることにしている。